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弟の自死 - 11. 死体検案書

弟の遺体発見から2日後
予定通り午前中に解剖が終わり、午後には遺体の引き渡しが可能であると、警察より連絡があった。

13:00に警察署へ行く事にした。
遺体引取の為、葬儀社にも連絡した。
私はまだ37.5℃の微熱状態であったが、解熱剤を飲んで外出する事にした。

母と共に警察署へ到着すると、鑑識の方が個室に案内してくれた。
鑑識の方は、弔意を述べてくれた後に、死体検案書を手渡された。

死因は ”不詳” となっていた。

鑑識の方は、母に配慮してくれたのか、
「解剖の結果を説明させていただきますが、お母様も一緒に聞かれますか?それともお兄様だけにお話しした方が良いでしょうか?」
と聞いてくれた。

私は母に、
「聞く?それとも聞かないでおく?」
と聞いたが、母は涙を拭いながら鑑識の方に、
「聞かせてください・・・お願いします」
と答えた。

鑑識の方は、解剖の結果を優しく丁寧に話してくれた。
解剖の結果、直接死因は断定出来なかったとの事だった。
「検視と解剖の結果、おそらくこのような状況であったという事はお話出来るので、お伝えさせていただきます」
と前置きの後で、弟が死に至った経緯を伝えてくれた。

弟は、床に座った状態で、HDMIケーブルを何重にも首に巻き付け、両手で強く引っ張り首を絞めた。
意識が無くなり、目、鼻、耳から出血した。
座っている状態から仰向けの体勢になった。
やがて脳に酸素が届かなくなり、心臓が止まった。
腿部に血液が付着している状況から、このような経緯でほぼ間違いないであろうとの見解だった。

「弟は何故あんなに黒くなっていたのでしょうか?」
と、母が尋ねる。
心臓が止まると、血液が循環しなくなり、全身が変色する
死後2日程で、循環しない血液が背中に溜まっていく
体内にガスが充満し、腹部が割れて体液が流れ出る
という説明を受けた。

更に、弟の部屋は電気が止められていた為、夏場の暑い時期で傷むのが早かったとも推測されるとの事だった。
遺体から体液や水分が抜けて、弟の体重は30kgだったらしい。

母は涙が止まらない。
私も、我慢しても涙が零れてしまう。

私は、弟の死因は処方薬(睡眠薬)の過剰摂取だと思っていた。
その事について質問すると、解剖で胃の中から薬は検出されなかったとの事だった。

弟は死の直前、どんな事を考えていたのだろうか・・・
絶望感?
諦め?
申し訳ない気持ち?
虚ろな状態だったのか?
それとも冷静だったのか?
決意が固かったのか?
母の事は頭に過らなかったのか?
苦しかったのか?
または、今まで何度も繰り返した、死には至らない自殺未遂
のつもりが、不幸にも完遂出来てしまったのか・・・

死体検案書
鑑識の方の説明
私の脳裏に焼き付いている弟の遺体

いずれからも、弟の感情は読み取れない。
考えたところで、今後も永遠に事実は分からない。

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