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弟の自死 - 14. 負債把握

スマートフォンのロックを解除出来た為、中身を調べる事にした。
正直に言えば、見たくないものを見てしまうかもしれない・・・
と、怖い気持ちが有った。
だが、負債を把握する為には必要と思い、恐る恐る調べた。

SNSは、ほとんど使用していなかった。
日常やり取りしているような相手は居ない事が分かった。

メールを調べていると、消費者金融へ審査を依頼していた履歴が見つかった。
だが、4年前に自己破産手続きをしている為、おそらく審査には通らなかっただろうとは思うが、結果がどうなのかは分からなかった。

遺書のような文書が無いかという事も気にして見ていたが、そのようなモノは見つからなかった。

調べていると、負債に係わる手掛かりが色々と見つかった。

・スマートフォン料金は2ヶ月分未払いである(約18万円)
・次回請求されるスマートフォン料金も8万円程度
・電気料金とガス料金が2ヶ月未納
・後払いのサービスを結構利用している
・家賃が1ヶ月未納(少なくともあと+2ヶ月分は支払う必要あり)

等、負債がある程度は把握出来た。
ざっと約45万円になる。

スマートフォン料金が多額な理由は、キャッシュレス決済へのチャージを電話料金払いとしていた為だ。
自己破産した弟でも可能な借金の手段だった。
この方法は過去何度も有った手口で、利用制限を設定して対策していたのだが、それでも弟は制限を解除して利用したようだ。

大きな出費はゲームの購入とパチンコへの使用で、それ以外は1回あたり\1,000程度の食料品の決済であった。

自死の2ヶ月半程前から利用料金が急増している履歴が読み取れる。
それまでは平均1万円程度の支払いで、生活保護費の範囲で生活していた形跡が読み取れるが、自死までの3ヶ月は連続で8万円以上超過している。
2ヶ月半くらい前から、精神状態(?)が悪くなった事がよく分かる。
母から聞いていた、スマートフォン料金の引落が出来なかった時期とも合致する。

とはいえ、1ヶ月あたり約8万円は致命的な金額では無いと思う。
だが、生活保護受給者の弟にとっては、解決出来ない大きな金額だ。
このような金銭問題は、今まで何十回と繰り返された事で、言ってしまえば何も特別なことは無く、私も慣れてしまっている。

弟は度々、自身の支払い能力を超えるお金を使用する事があった。
衝動的なのか、ヤケになってなのか、理由は分からないが、弟曰く
「記憶が無い」
の一点張りで、医者も私も呆れていたのが正直なところだ。
その度、母は弟の金銭問題を庇い続けた。

理由が何にせよ、お金の管理が出来ないという事は、社会生活が出来ないという事になる。
何とか弟が自立出来ないか、医者や福祉事務所、訪問看護の方などが支援してくれていたが、結果的に弟は変わる事が出来なかった。
私はそんな弟にずっと怒りを感じていたが、たったこれだけの金額の為に死んだのか?と思うと、心が苦しくなる・・・

結局最後まで、弟は金銭問題を解決できなかった。
経緯や使途など、全貌が語られる事は一度も無いまま、最後は自死を選んだ。
金銭問題は今まで何度も有った事だが、今回は何らか自死に至らしめる思いがあったのだろう。

2時間ほど弟のスマートフォンを操作していたが、手には強く臭いが移ってしまっていた。
今後の事を考えると、スマートフォンは保管しておくべきだと思い、ジップロックに密封して保管する事にした。

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