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弟の自死 - 12. 遺体引き渡し

解剖結果の説明を受けた後、警察署へ来ていた葬儀社の担当者と打合せをする事になった。

式のプランなど、説明を受けた。
母が望むように進めようと思っていたが、母は葬式・告別式は行わない、簡単な火葬式にしたいと言った。
式に呼ぶような親戚がおらず、参加者は母と私だけの為、それでも良いかと思い火葬式を選択した。
火葬の日時は3日後の10:00~ に決定した。

遺影は大きいサイズしか作成出来ないらしく、別途準備する事になった。
写真が無い為、先程受け取った遺品の中から、免許証かマイナンバーカードから遺影を作成するしかない。
全ての費用は私が支払うのだが、母が
「せめて一部だけでも私が準備したい」
と言い、尊重する事にした。

葬儀社の担当者から、
「火葬の前に、最後お会いになられますか?」
と聞かれた。
私は母に弟の姿を見て欲しくなかった。
「(私が)ちゃんと最後のお別れをするから、母さんは見ないで欲しい」
と伝え、母は黙って頷いてくれた。
母は弟の遺体を少し見た程度だったが、私は母よりもはっきりと長い時間、弟の遺体を目にしている。
結果、私は毎日弟の遺体が頭に浮かぶ状態になっている。
母にそのような思いをさせたくない為、「見ないで欲しい」と伝えたのだが、母が了承してくれて安心した。

その後、警察から葬儀社への遺体引き渡しが行われた。
通常、遺族はこの作業に立ち会うらしいが、酷く損傷した遺体である為、立ち合いは止めておいた方が良いと言われ、従う事にした。

暫く待機した後、警察署前に停車している車の前に促された。
車の前には、鑑識の方も居た。
車の中には白い棺桶が乗っている。
この棺桶の中に弟が居ると思うと、途端に悲しい気持ちになった。
葬儀社の担当者が、
「ご遺体を預からせていただきます」
と丁寧に言ってくれた。

途端に、母が号泣した。
私も涙が止まらなかった。
何となく、母の気持ちが分かる気がした。
式に呼ぶ親戚もおらず、弟の関係者は母と私だけだ。
そんな寂しい状況の中、弟に配慮してくれ、丁寧に対応してくれる事は、とても有難い気持ちになる。
感謝の気持ちが湧くと、少し気持ちが楽になり、心に余裕が生まれる。
だが、すぐに悲しい感情が心の余裕を埋めてしまう。
結果、急に涙が出てしまう。

運転手の方、葬儀社の方、鑑識の方は終始丁寧に対応してくれた。
車が出発する時も、葬儀社の方と鑑識の方は車が見えなくなるまで丁重に見送って下さった。
車を見送った後は、葬儀社の方と鑑識の方にお礼を言い、深くおじぎをするが、私は我慢しても涙が止まらず、涙が地面に落ちた。

特に、終始ずっと丁寧に、母にも配慮してくれた鑑識の方には、感謝の気持ちで一杯だった。

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