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弟の自死 - 22. 火葬式後

火葬を終えて、母の家に到着した。
ずっと私が抱えていた骨壺を部屋に置き、ひとまずゆっくりする事にした。

時計を見ると11:20。
葬儀場に着いたのは9:30だった。
とてつもないスピードで終わったのだと思った。
改めて、葬式や告別式を省略した事を悔やんだ。

母は、ひとまず落ち着いている様子だ。
とはいえ、何となく母の事が心配で、暫く母の家に居て様子を見ようと思った。
特に何をする事も無く、2人でテレビを見ながら雑談していたが、母は私に、
「あなたとこんなにゆっくり話をするのは久しぶりだね」
と言った。

思えば4年ほど、私と母は関係性が良く無かった。
弟が起こす数々の問題に対する対処方針に、母と私には考え方があまりにも違いがあった為だ。
私は、高齢な母に手間と心配をかけ続ける弟に対して本当に腹が立っていた。
一方で母は、弟を過剰に構ってしまい、常に甘やかしてしまっていた。
この点は、病院の担当医からも度々指摘されていた事ではあったが、それでも母のスタンスが変わる事は無かった。

母は弟に構い過ぎて、精神状態が不安定になるような状態でもあった。
「(弟)を殺して私も一緒に死ぬ」
と言ってしまう事も度々あった。

そんな母に対して、私はもどかしさを感じ、怒ってしまう事も度々有った。
ただでさえ弟の対処に疲弊している中、母と私が口論する事もお互いのストレスになってしまう為、いつしか私は母と距離を置くようになっていた。

母と会ったり会話するのは、母の誕生日か、弟が何か問題を起こした時くらいというのが、4年間の日常になっていた。

弟の火葬の日、私と母は久しぶりに穏やかに過ごした。

母の家で6時間ほど過ごした後、私は帰宅した。
火葬が終われば気持ちが一段落するかと思っていたが、全くそんな事は無かった。
弟の遺体に対面し、
"弟は死の直前に何を考えていたのだろうか"
という疑問は、より強くなった。

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