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漫才最強の技術は「フリ」と「オチ」 笑いの考察#1

 おはようございます。ぷかおです。

 今回は、初めてお笑いの仕組みやテクニックについて考察を深めていきたいと思います。題して「笑いの考察」(そのまま)
 数々のお笑いネタを見てきた私が、脳の隅にたくわえてきた斬新な分析をお見せします。

 お笑いをもっと楽しみたい人や、お笑い芸人の夢を目指す人に是非見ていってもらいたいです。

 本日のテーマは「漫才の最強テクニック」で、
タイトルにもある通り、ずばり「フリ」と「オチ」についてです!

それでは、深堀っていきましょう!


「フリ」と「オチ」

 ここで、「フリ」と「オチ」という言葉を使っているのには理由があります。

私が意味する「フリ」の定義とは、

おかしな状況が起こっていることを見ている人に気づかせて、次のボケやツッコミにつなげる段階のこと。

簡単に言えば、笑わせるポイントまでの流れ。
大事なオチを召喚する役割のことを指します。

 私が意味する「オチ」の定義は

一連のお笑いの展開を締めるフレーズのこと。


 このフリ/オチの関係が最強だと言える理由は
①誰にでも使いやすく
②爆発的な笑いを生み出せる
点です。

 フリとオチ自体は非常に古典的で、古くから使い古されていますよね。
私は川柳すら、フリとオチに分かれているように感じるときがありますよ。

 それでもなお今も使われ続けられるのは、それだけ便利で飽きない魅力があるからです。追求すれば、まだまだ斬新な切り口へ拡げることができます。

 たとえば、フリ/オチの中にはいわゆる「お決まり」があって、

フリ:「押すなよ!押すなよ!絶対に押すなよ!!」
DON!
オチ:「バシャーン!(熱湯風呂の音~♪)」

みたいに、お笑いでは「やるなよ」が「やれ」を意味するフリだというのが、特に有名です。

(この記事を書き始めた直後に上島竜平さんがお亡くなりになりました。フリ・オチを定着させた男の中の男、今も大好きです。ご冥福をお祈りします。)

 実は、このシステムを漫才に取り入れたのが、マヂカルラブリーです。
 「フレンチ」のネタに当てはめてみると

フリ:不安だから間違ってるとこあったら言ってね?

オチ:バリーン!!「ちがうよ!ちがう!」

という風になり、「お決まり」の流れとずいぶん似ていることがわかると思います。このボケの展開が面白いのには、あと1つスパイスがありまして・・・

フリ:不安だから間違ってるとこあったら言ってね?

観客:(間違えるんだろうなあ)

オチ:バリーン!!「ちがうよ!ちがう!」

観客(そう来たか!!)大爆笑

 このように、フリの時点で観客にある程度の予測をさせておいて、その予想以上のオチが登場することで、思いもよらない大爆笑を起こすことができるのです。

point①
フリの段階で、オチを先に予測させろ!

 丁寧なフリで「オチが来るぞ!」とあえてわかりやすく見せることによって、観客が笑う準備段階に踏み込みます。その後のオチで、観客の想像を飛び越える、あるいはわざと想像通りの言動をすることで、よっぽどの笑いを回収できます。

 失敗するパターンとしては、
フリ→長すぎた・雑すぎた
オチ→弱すぎた・難しすぎた などありますが、
これらについても、あとから全てを調整可能なところが最強ポイントの秘訣です。

 たしかに、フリを設置せずに、ボケとツッコミを淡々と掛けあう芸風ももちろん面白いのですが、その場合オリジナルのトークスタイルやいくつかのキラーフレーズを思いつかない限り、ありふれたものになってしまいがちです。

 ここで爆笑させたいなと思う地点にこそ、綺麗にフリを撒いておくべし。


 ここから、漫才師のレジェンドたちのネタから、フリとオチの最高の使い方、最高峰の技術について振り返ってみましょう。技術としての使いやすさごとにレベル分けをしています。


Lv. 1 三段オチ

 まずは、霜降り明星の三段オチの傑作をご覧ください。

せいや「頭の中に走馬灯が駆け巡る…!」
粗品「いや死にかけとんがなお前」
せいや「まめでかぁ」
粗品「走馬灯」
せいや「関節鳴らへんなぁ」
粗品「色んな思い出」
せいや「この道に出てくんねンなぁ」
粗品「しょうもない人生!!」

 三段オチとは、ボケを2回ツッコまずにスルーして、3回目のボケで勢いよくツッコむ手法です。最後までのわずかな間に、ボケを理解したり次のツッコミを予測したりする時間が生まれるからこそ、わかりやすく笑える展開を作ることができます。
 見取り図おいでやすこがかまいたちなど、数多くのコンビが使ってきた基本的なテクニックです。定番のフリ/オチですね!実は「べっぴんさん、べっぴんさん、1つ飛ばしてべっぴんさん」ってやつもこれの元祖らしいです。

point②
大事なオチまでツッコむのは我慢だ!

 この場合、1回目と2回目のボケはフリという扱いになるので、全くツッコまずに、ただ相槌を打ちます。相槌も大変重要なフリ要素なので、ツッコミの人は忘れないように!

 そして、3つのボケそれぞれにも、きちんと役割があります。

point③
フリの間にボケのシステムをわからせて、オチでスッキリさせろ!

 最初のボケが始まった後、観客は瞬時にこう考えます。

1回目→どういうボケ?
2回目→なんだかわかってきた!どうツッコむ?
3回目→それだ!なるほど!

 たとえば、「しょうもない人生!!」の場合、1回目の「まめでかぁ」と2回目「関節鳴らない」という2つのボケの共通点を、観客は探していくので、脳内がもやもやしていきます。3回目のツッコミが、そのもやもやをはっきりわからせるので、観客はスッキリして笑うのです。
 その点「しょうもない人生!!」ってすげぇよな、3つのボケをすべて包括したうえでふわっとまとめてるんだもん。この3つのボケだけで「人生」というワードを付ける粗品に脱帽です。ボケ1つに対するツッコミだと絶対出ないワードですよ。さらに、せいやがボケが1つ終わるごとに1周高速ターンするのですが、場面が変わったと刹那に判るので、これは本当に完成度が高すぎます。

 ほかにも、金属バットの三段オチでは

「ジャングルマンXか」
「ミラクルボディVか」
「ライフガードなんやけど」

に対して、「全部パワージュースやんけ」という独自の単語でツッコむという、なかなかすごいことやってます。どのようにして3つまとめてツッコむのがいいか、色々と考えるのは楽しいですね。三段オチのツッコミを予想するクイズがあったら、皆さんはやってみたいですか?


Lv. 2 時間差

 これは、フリをあえて放置して、時間をおいてから回収するというもの。
伏線回収の1つとしても知られていますが、観客にとって「これは絶対伏線になるだろう」と先に予測させている点で、完全にフリです。忘れたかけたころに、とっかえし拾ってくるので、見ていて脳が気持ちよくなっちゃうテクニックです。見取り図がよく使っている印象があります。

「あと、マルコ牧師って誰ェ!?」

 馬鹿よ貴方はの「おにぎり屋」のネタが私好きなんですが、めずらしい時間差ボケがあるんですよね。それすなわち、ボケの予告です。

平井「顔を菱形にしてやろうか」
新道「何回言うんだよ!」
平井「3回だよ」
新道「あと1回言うのかよ!」
平井「…………お楽しみに」

これがフリになるので、観客は「いつ”あと1回”が来るのかな」とワクワクして待つわけです。そして、予想もしないところで再登場すればそりゃ笑いますよね。

 先述した三段ボケとも非常に相性が良いので、組み合わせて使われることもしばしば。ちょっと違和感に引っかかるフレーズを使って、2回目まではスカすんだけど、終盤の3回目で「あとさっきからそれは何!?」とツッコむみたいな。

point④
テクニックはどんどん組み合わせていけ!

東京ホテイソンだと、

ショーゴ「こんなんはいかがかな?」(3回目)
たける「あとそれは何だー!」
たける「ありゃ死んだ言葉だ!使うでない!」


Lv. 3 焦らし

 焦らしとは、一連の長いボケをツッコまずに見届け、頃合いを見てツッコむもの。私の造語です。ひたすら長いボケがあると、観客はクスクス笑いが続くのですが、それが続けば続くほど焦らされて、大笑いするポイントを欲しがるようになってきます。焦らされて勝手に込み上げて笑ってしまう直前に、オチを迎えることでドカンと爆発します。焦らされて溜まった欲求が解放されるからです。

 とろサーモンのお2人は、オトす頃合いを見極める達人といってもいいでしょう。久保田の長めのボケで焦らして、村田のツッコミ一発でキメるという必殺コンビ。M-1王者になるべくしてなったコンビだと思います。
 「旅館」のネタでは、風呂から猿を追い出せと言われて、女将役の久保田が謎の呻き声をあげます。

久保田「カッッ, ア~~~~~~~~~~~ア~~~~~~~~~ア~~~~~ア~~~~~~~~~ア~~~~ア~~~アア~~~~~ア~~ア~~~~~~~~~ア~~~~~~~ア~~~ア~ア~~~~~~~~ア~~~~~~~~~~~~……」
久保田「七匹増えました」
村田「どういう能力やねん!」

呻き声と表情だけでもう面白いのに、ポロッと「7匹増えました」と告げるところで完全にオチてますね!

 ところが、長ボケが上手だと、オトさなくてもよいという意見もあるかと思います。ランジャタイとか、国崎がずっと動きまわっているだけで面白くて、ツッコミいりませんからね笑。

 一つだけ注意したいのは、焦らす長ボケが多すぎると見ている人は疲れてしまうんです!4分ネタだったら、焦らしは3回までにしておきましょう!

point⑤
焦らすのは、一ネタにつき3回まで!

テンポよくすすむ部分と、焦らしたい部分とはっきりさせると、どちらもお互いに際立ってメリハリがつきます。焦らしを入れるとしたら中盤以降ですかね、前半はとにかテンポを優先させた方がいいかもしれませんね。


今回はここまで!
最後まで読んでくれてありがとう!



以上、笑いの考察#1 漫才最強の技術は「フリ」と「オチ」
でした!

今後、漫才のネタを見る際、作る際に少しでも参考にしてもらえれば幸いです。

次回予告、笑いの考察#2「コント漫才と漫才コント」


これからも大好きなお笑いについて書いていくので、よろしくお願いします。


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