なんとかムーンの夜に

昨晩は満月だった

母が、なんちゃらムーンらしいよと教えてくれて、夜空を見上げてみたけれど雲から薄く光が覗く程度しか見えなかった


それから少し読書をして

最近出た韓国の短編集「その猫の名前は長い」イ・ジュヘ

その中の「夏風邪」という話を読んだ

その主人公があまりにも、勝手な男で、なんじゃこいつという人物だったので、落ち着かなくなり、自然とあたまが冴えいろんな想いが浮上した

最終的には祈るしかない心境になってしまい

なんとかムーンを見上げた

先ほどとは打って変わって、満月が煌々と光って部屋まで射し込んでいる

お月さまとわたしは一直線につながっているようで

くっきりと部屋にわたしの影をつくっていた

しばらく目を瞑って手を合わせ

眠りかけの母を、ほら、満月が出てるよ、雲から出たよ、すごい月光がほら、部屋まで射し込んでるよ、と起こした

すんなり起きてくれた母は、ほんまや〜と言って

ほら、お祈りして、と言うと

家族の健康をお祈りした

お母さん、自分たちだけじゃなくて、みんなのことをお祈りしよう、とわたしが言うと

母は、眠そうにふにゃふにゃと、そのまま家族のことをお祈りしながら布団に戻り眠ってしまった


自分のことを最優先にして、自分のことを守りながら生きていい

そう思うようになっていたけれど

この夜は、ほんとにそれでいいのかな…という気がした

みんながまんべんなく苦しむことで、世界は平等になるのかもしれない…

わたしの生活は世界の不平等の上に成り立っているのだから

じぶんのなかに平和が、安堵があるから、人に尽くすことができるのかもしれない

けれど不平等の上に成り立った平和と安堵なら、それはニセモノなのかもしれない

わからなくなった

どうすればいいのか

じぶんの安堵を守りたいわたしは、先ほど読んだ短編集の、主人公の勝手な男と、さほど変わらないのではないか

なにも心に落とし込めない

心を平坦にしようと、お経を頭の中で唱えながら眠った



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