ソフィア(ᚨ・アンスール)言葉で伝えることの大切さ、伝えられないもどかしさ


ソフィア ©︎puchitto.uranai.ch

「いらっしゃいませ♪」
フェオニャンが明るく迎えた先に黙ったままのちょっと雰囲気のある猫がいました。
「ソフィア。どうしたの?」
ライスにソフィアと呼ばれた猫は静かに席に座りました。

「また美味しいハーブティーをもらおうと思って来たんだ」
席に座ると本を開いて読み始めました。
「ソフィア?」
フェオニャンは少し戸惑っています。

「ソフィアはお得意様なんだよ」
ライスがにこやかに話しました。
「そうだね。フェオニャンはソフィアと会うのは初めてだよね。」


言にゃん(ことにゃん)

言にゃん(ことにゃん)©︎puchitto.uranai.ch

ー 二年前 ー


小さな猫が公園で震えていました。
「どうしたの?」
ライスが近づいていきます。
「。。。。」
子猫はただ震えて縮こまっています。
「一緒に来る?」
その子猫は小さくうなずきました。

ライスの店にはいるとほのかにハーブの香りがしました。
「。。いい匂い」
子猫はやっと口を開きました。
「ちょっと待ってて」
ライスは奥に入っていきました。

「さあ、あったかいうちに飲んで」
ライスは温かいシナモンミルクティーを出しました。

シナモンミルクティー♡

「あったかい。。。」
そう言って子猫は泣き出しました。
「迷子?」
ライスが優しく聞きました。
子猫は悲しげな表情で話し始めました。
「うん。私の飼い主さん。。病気で。。病院に行きたいんだけど、どこかわからなくて。。。探したんだけど。。。」

ライスは同情の目を向けながら尋ねました。
「君の名前は?」

「言にゃん(ことにゃん)。言葉を話しそうだからって飼い主さんが付けてくれたの」と言にゃんは答えました。

ライスはにっこり笑って言いました。
「素敵な名前だね、言にゃん。」
言にゃんの顔にほんのりとした笑みが浮かびました。

「私が人間の言葉を本当に話せたら。。。病院の場所もわかるのに。。」

「言にゃん、家はどこかわかる?今家には誰もいないの?」
とライスが心配そうに尋ねました。
「うん。飼い主さんの兄弟が面倒を見てくれてる。だけど、猫アレルギーみたいで新しい飼い主さんが明日来るんだって。その前に飼い主さんとおしゃべりしたかったの」
と言にゃんが答えました。

「飼い主さんのことが大好きなんだね」
「うん。だからおしゃべりしたかった。たくさんたくさん。。。」
言にゃんはそのまままた泣き出しました。
ライスはそっと頭を撫でていました。

「ありがとう。ライス君。。。また来てもいいかな?」
と言にゃんがライスに問いかけました。

「もちろん。またおいで。あ、そうそう、言にゃん」
とライスが応えました。
「言にゃんのおでこの印。ᚨ(アンスール)っていうルーン文字と同じ。言葉を伝えるっていう意味なんだよ。きっといつか言にゃんの言いたいことを言葉にして伝えることができるんじゃないかな?」
とライスがにっこり笑いながら言いました。

言にゃんはライスの言葉に希望を感じ、微笑みながらうなずきました。
「だといいな。。。」

言にゃんはライスのお店を後にしました。


ことにゃんからソフィアへ

ー 一年前 ー


「こんにちは」
一人の猫がライスのお店を訪れました。
「あれ?。。言にゃん?」
「ライス君こんにちは。お久しぶりです」
少し大人になった言にゃんがいました。
「またあのシナモンティーを飲みたくて」
「ちょっと待っててね」
ライスは店の奥に行きました。

「うん。シナモンミルクティー、ほんとに美味しいね」
と言にゃんは微笑んで言いました。
「今日はどうしたの?言にゃん」
とライスが言にゃんの席の前に座って聞きました。

言にゃんは深いため息をついてから言いました。
「うん、私の名前が変わったの。」

「え?名前が変わったの?」ライスが驚いて尋ねました。

「うん、新しい飼い主さんが私の顔を見てすぐに『ソフィア』って名前が浮かんだみたいで…」

「あぁ、じゃぁ今はソフィアなんだね」
とライスがうなずきながら話しました。
「うん、知恵っていう意味なんだって」
とソフィアは答えました。

「そっか。やっぱり君はᚨ(アンスール)なんだね」
とライスが優しく微笑みました。

「ᚨ(アンスール)?」
ソフィアが興味深そうに尋ねました。

「そう。君のおでこの印だよ。言葉にして伝えるっていう意味もあるけど、『知恵』っていう意味もあるんだよ。」
ライスが優しく語りかけました。

「ふぅん。。そうなんだ。。ね、私本当に言葉を話せると思う?」
ソフィアが静かに尋ねました。

「どうしたのいきなり?」
ライスが驚きながらも興味深そうに尋ねました。

ソフィアは恥ずかしそうにうつむいて話し出しました。
「飼い主さんともっと仲良くなりたいし、飼い主さんと仲良くなりたいって思っている他の猫たちの役に立ちたいの」

ライスは微笑みながら言いました。
「素敵なことだね」
「ね、できると思う?私に」
とソフィアが尋ねました。
「できるよ。そのためにたくさんの本を読んでるじゃないか。」
とライスが励ましました。
「うん。本を読むのは好き。おしゃべりするのも好きだけど」
とソフィアが微笑んで答えました。

「きっと君はいつかアンスール様になるんだね。。」
ライスがボソッと言いました。
「アンスール様?何それ?」
ソフィアは首を傾げながら言いました。

「なんでもない。今はソフィアのやりたいことを一生懸命やるといいよ」

「ありがとう。ライス君。また来てもいいかな?」
「ソフィア。いつでもどうぞ。大歓迎だよ。」


ー現在ー

「。。というわけで私はここの常連になったの」
ソフィアはライスとの経緯を一気に話しました。
「そうなんだ。ライス君って本当に色んなところで色んな猫を助けているのね」
フェオニャンは感心しながら話しました。

当のライスは何食わぬ顔でハーブを整理していました。
「ライス君のおかげで自信が持てたし、他の猫にも話し方を教えたりできているの」
にっこり笑いながらソフィアは大好きなシナモンミルクティーを飲みます。
「ソフィアの才能もあるんじゃないかな?そして飼い主さんもきっとソフィアの才能が見えたのね」
フェオニャンは興奮した様子で話しました。
「ありがとうフェオニャン。何か私で役に立つことがあったら言ってね」
ソフィアはにっこりと笑いながら、シナモンミルクティーを飲み干しました。

「ライス君、今日はもう一杯飲んでから帰ろうかな?」
そう言い終わるか言い終わらないうちにもう一杯のシナモンミルクティーをライスは持って来ました。
「さすが。わかってる♡」

「そういえば言にゃんって名付けてくれた飼い主さんとは話せたの?」
フェオニャンが我慢できないという感じで聞きました。
「話せたの。本当に話せるようになったねって喜んでくれた。名前が変わった事も知っててくれて、言にゃんがその名前気に入ったならいいと思うよって言ってくれたの。」
嬉しそうにソフィアが話しました。

ソフィアがライスのお店にいる時はとっても賑やかです。
「おしゃべりって本当に楽しいわね」
ソフィアが笑顔で話します。
「本当。ソフィアまたゆっくりお話ししましょ」
フェオニャンも本当に楽しそうです。

その日は夕方遅くまでライスのお店に笑い声が響いていました。


言葉を伝えたかった言にゃんから知恵を手に入れたソフィア
次はどんな進化を遂げるのでしょう。

それはまたのお話で♡

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