次なる夢を探す旅に出ようと思う。

そんなの綺麗事だ。ずっとそう思っていた。

なんのことかって?みなさんも一度は耳にしたことがあるであろう。

それは 

「もし今日が人生最後の日だとしたら、私は今日やろうとしたことを本当にやりたいだろうか」

というスティーブ・ジョブズの言葉のことである。

いいたいことはわかるし、自分だって毎日本当にやりたいことをしたい、できるものなら。

ただ全てを投げ出して、したいことをするなんてできない、と思っていた。

でも、そんな私でも気づいたらメジャーデビューを目指すバンドから声をかけてもらい、夢追い人になっていた。

楽器を始めたのは25歳でそこから一年と3ヶ月しか経っていないにも関わらず舞い込んできたビッグチャンスだった。

公僕として数十年の社会人人生を全うする以外の選択肢なんてないと思っていた私にとってはあまりにも刺激的な話だった。

私は迷わず飛びついた。こんな貴重な話そうあるわけがない。余暇の時間を全て音楽に捧げてやろうと覚悟した。

ただ加入には条件があった。それは今のバンドのメンバーのレベルに匹敵する実力をつけることだった。さすがに即戦力としての実力を認められたわけではなかったけどそれは仕方ない。これまで音楽歴は音楽の授業でのリコーダーや鍵盤ハーモニカくらいだったからだ。


この千載一遇のチャンスが訪れたきっかけは、飲みの場で「プロになりたい」と大口を叩いたことだと思う。

誘いを受けた日からというもの、私は練習に明け暮れた。平日は仕事終わりに3時間、土日は毎日7時間を目標に音楽と向き合った。友達と遊ぶことを後回しにして家にこもって練習した。

でも想像以上にしんどかった。やはりそう甘くなかった。

本気になればなるほど厳しさが出てくるもので、やりたくないと思う日には、それでもやらなきゃプロになれないと葛藤した。

でも今思えばとても充実していた。ワクワクして楽しかった。夢を語る私の姿を見て両親から「目が輝いてるね」と言われた。だって夢を語るってすごくワクワクしてたまらないんだもの。

結局、チャレンジは終わった。挑戦を決めたときは想像もしていなかったけれど、私は辞退を申し出た。

理由はいくつかあるけど、一つ確実に言えるのはアーティストとしてなんとしても売れたいとは思わなかったことが大きい。

そもそも音楽を始めた時も音楽の魅力をもっと知りたい、好きな音楽にまみれていたいと思ったからであって、ライブはしたくないとすら思っていた。

だからある意味では自分の軸はぶれていないことになる。半年間は少なくとも全力を尽くしバンドマンの苦楽をなんとなく体験できたし、誘ってもらったことには感謝しかない。そして、後悔ももちろんない。

夢を追うことにはワクワクだけでなく、辛いこともたくさんある。でもこの半年間の充実はそんじょそこらじゃ味わえないことだと思う。


歳を取れば取るほど大きな夢は持ちにくくなってしまう。でもそれはとてももったいない。だから私は次の夢を見つけるために自分と向き合い、自分の欲望に正直になって、たくさん行動していこうと思う。

ジョブズが言うように毎日自分がしたいことをすることは今はまだできないけれど、少しでもそんな日を増やしていけるよう努力する。そしたらいつの日かきっとそんな日々を引き寄せられる気がするから。


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