見出し画像

日本企業の有配率を見よ!


先日、自社株買いの規制に関して懐疑的な意見を示す記事が発表されました。

「海外投資家には日本企業の株主還元はまだ低すぎるという認識があるだけに、ガイドラインの導入で自社株買いが少しでも妨げられるようになれば、市場は失望するだろう」

自社株買いは悪なのか 岸田首相「規制発言」に疑心暗鬼:日本経済新聞

日本企業の株主還元が低すぎるという主張、これは、配当性向の比較だけに基づいた主張です。

そもそも日本とアメリカの市場は大きく異なるため、同一の指標を用いて優劣をつけることはナンセンスです。

例えば、Floyd et al. (2015)、Brown et al. (2018)、Michaely et al. (2021)の研究より、米国上場企業における有配率は、全体市場の30%~40%です。
一方、日本上場企業における有配率は、およそ80%。東証一部上場企業に関しては、93%もの有配率を達成しています。

アメリカにおいては、
①配当を支払わない新興企業が増加したこと
②黒字でありながら配当を実施しない企業が増加したこと
③配当を自社株買いで代替する企業が増加したこと
により、1980年以降無配当企業が増加しました。

このように、アメリカでは投資を受けて莫大な利益を出した企業だけが高い配当を払うため、配当性向が高くなることは当然です。

もしこれを日本の市場と比較したいのであれば、アメリカの無配当企業も加味した配当性向を用いなければなりません。

記事の中では

「日本企業が今後、自社株買いの増加と増配で株主還元を充実させていくのは、『既定路線』だ」

とも述べられていますが、日本企業は既に十分すぎるほどの株主還元を行なっていることに加え、多くの企業が成熟しています。

「売り上げの増加が止まって成熟期に入った段階では、上場を廃止して株主還元をやめる」という選択肢を持つアメリカと、そうではない日本を比較し続けてはならないように思います。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?