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Vol.5 東京の運賃は安すぎる――準完全競争下の「利益」と「幸福」


(※始めから学問的に知りたい!という方は、こちらの『関経連レポート』をお読みいただければと思います👇※)

皆さんこんにちは!今日もお越しいただきありがとうございます。前回まで、世界と日本の所得格差についてお話してきました。まだ読まれていない方はコチラから👇


超富裕者の所得ばかりが成長して、一般層=マス層の所得は成長していない、ということが明らかになりましたね。今回は、今までとは視点を変えて”企業側” の立場から、日本経済を捉えていくことにしましょう!


“牛丼一杯400円”は、日本だから実現できた


「牛丼を食べに行こう!」そう思ったとき、皆さんはどのような基準でお店を選びますか?

すき屋にしようか、それとも松屋?吉野家でもいいなあ・・・

たくさんお店があるとはいえ、メインメニューの牛丼は、味にそこまで違いが無く(異論はご容赦ください汗)、ほとんどワンコインで動かない価格帯ですよね。

では、そもそもどうして三者とも同じような価格帯になっているのでしょうか?

それは、三社間で競争が起こっているからです。


企業は、みんなが高い利益を狙って財サービスを生産販売しています。でも、だからといって自分だけ高い利益を上げるために高い価格で販売してしまったら?顧客は価格の安い別のお店を選ぶため、かえって売れなくなってしまいます。

準完全競争2


つまり、利益を狙って財・サービスを販売しようとするにしても、価格を下げざるを得ない状況にあるのです。これは「価格低下圧力」とも言いかえられます。これが、結果として牛丼が400円という世界になっているわけです。


東京運賃130円、ロンドン運賃500円!


続いて、都市部の交通を思い浮かべてみてください。

準完全競争1

上図左側は東京、右側はロンドンの鉄道および地下鉄地図です。鉄道の運賃が東京では130円であるのに対し、ロンドンではなんと500円!

(東京の人口は900万人、ロンドンの人口は800万人で、タクシーやバスの料金においてはほぼ同水準であることから、鉄道運賃にだけ異常に差が生まれていることがわかります。)

これは、私たちが日ごろから受けるサービスの高さと、それに対する価格が非常に安価であることがあらわれた最たる例であるといえます。

電車は一寸狂わぬ時間で運行されていて、到着が1分遅れようものならお詫びのアナウンスが流れる世界。

鉄道会社は迅速で安全な運行を行うために、人材や機材に多額の費用をかけています。しかし、運賃は異常に低く抑えられ、高い利益率は望めない、という現状があるのです。


企業はどんどん疲弊していく・・・


ここまで身近な例を挙げながら、「価格競争」や「高品質・低価格」についてお話ししてきました。

企業の努力のおかげで、いまや私たちの身の回りには、安くていいものがいっぱいです。しかし、企業自体は安価で質の高い物を売るので、売上も利益もあまり見込めない・・・

どうにか原価を下げる努力をしている企業もありますが、それは、相対的に見れば他の企業の売り上げを落とすという悪循環にもなってしまっています。

これを日本経済社会における供給側の特徴・問題として、「準完全競争」 の状態である、とご理解いただきたいのです。

そもそも完全競争とは、ある財について、多数の供給者と需要者がいて、誰もが価格を左右する影響力をもたない状態。1.財が同質であり、2.情報が完全であり、3.多数の取引主体があり、4.市場への参入・退散が自由である必要がある。例:ガソリンスタンド。(参考:『ミクロ経済学入門【新版】』, 2014 , 吉田・角本・青木・久下沼・水野著)

(なぜ「準」完全競争としているかについては、ここでは割愛します。『関経連レポート』で説明していますので、気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひお読みください!リンクは最上部に載せています👆 )

次回は、”需要側”の視点から見ていきましょう👀👇


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