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クライバーンコンクール:クォーターファイナル1日目の聴きどころ(作品編)

現地で6/5(日)から2日間にわたって行われる、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの「クォーターファイナル」(準決勝)。1日目は、午前・午後・夜の3つのセッションで、午後のセッションの最初に亀井聖矢さん、夜の部の最初に吉見友貴さんが登場します。

プレセレクションとハイレベルな1次予選をくぐり抜けた18名は、いずれ劣らぬ個性的で才能あふれるピアニストです。クライバーンコンクールの大きな特徴は、3ラウンドにわたる膨大なソロリサイタル(40分+40分+60分)で、委嘱された新曲以外にはほぼ完全に自由な選曲ができるということです。聴き手の立場では、ヴァラエティ豊かな選曲が楽しめる一方で、すべてのプログラムを把握するのは至難の業です。

ここでは、この2次予選からセミファイナルを見据えて頻出するピアノ音楽の主要なレパートリーを少し予習してみます。

ブラームスのパガニーニの主題による変奏曲は、コンクールでも定番となっている高難度の技巧が要求される作品で、2次では初日にAndrew Liと吉見友貴さんが演奏するほか、セミで田所マルセルさんが準備しています。

クライバーンコンクールがコロナ禍で制作した「Cliburn Masterpiece」は、ピアニストとそれ以外の分野の演奏家などが主要な作品を語り合い解説し、そしてコンクールでの名演で締め括られた絶好の番組で、ブラームスのパガニーニ変奏曲については、クライバーンコンクールで語り継がれる演奏を披露したアレキサンダー・コブリン(2005優勝)が解説し、その後に彼のコンクールでの演奏が収められています。

この「Cliburn Masterpiece」で他に解説されている、今回頻出の作品を挙げておきます。

ラヴェル:夜のガスパール

ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3つの楽章
指揮者のマリン・アルソップ(今回の審査委員長)がオケの点から、2013優勝者のヴァディム・ホロデンコがピアニストの観点から語っています。

プロコフィエフ:ピアノソナタ第8番 変ロ長調 Op.84 「戦争ソナタ」

スクリャービン:ピアノソナタ第5番 Op.53

日本にも応援する人が多い中国のユトン・ソンは、2次1日目の最後の登場。J.S.バッハ(ブゾーニ編)のシャコンヌ、ショパンの幻想曲という定番のほかに、オーストラリアの作曲家カール・ヴァインの5つのバガテルという意欲的な選曲です。この曲を、昨年のショパンコンクールも沸かせたアレキサンダー・ガジェヴが演奏している動画があります(シドニー国際ピアノコンクール・抜粋)。ガジェヴもユトン・ソンも、非常に精緻で知的なピアニスト。この作品の中に見出したものがあるのかもしれません。

今回、1次でそのユトン・ソンが、そして2次ではDennis Linnik、Albert Cano Smitが相次いで披露するのが、ハンガリーの作曲家ジョルジュ・リゲティ(1923-2006)の練習曲第13番「悪魔の階段」。クラクラするような難曲です。リゲティの練習曲は、「エチュード」というこの分野にモダンで斬新な感覚を持ち込みつつ、演奏はどれも極めて難しく、現代のピアニストの試金石ともなっています。現代作品に精通する世界的ピアニスト、ピエール=ローラン・エマールがこの作品を詳しく解説しています。

2次予選やセミファイナルのリサイタルプログラムは、さすがにどのピアニストのものも練りに練られており、「自己紹介」代わりの1次予選に比べても、さらに濃厚なその演奏家の世界観が出るものになりそうです。

2次予選1日目は、いよいよ日本時間6/6(月)0時、日付が変わった瞬間からスタートします。

第1セッション

0:00 Anna Geniushene(ロシア、31歳)
ブラームス:4つのバラード Op.10
バルトーク:ピアノソナタ Sz.80

0:45 Andrew Li(アメリカ、22歳)
ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲 ヘ長調 Op.34
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 第1巻・第2巻

(20分休憩)

1:45 Denis Linnik(ベラルーシ、26歳)
シューマン:交響的練習曲 Op.13
スクリャービン:ピアノソナタ第5番 Op.53
リゲティ:練習曲第13番「悪魔の階段」

第2セッション

4:30 Masaya Kamei 亀井聖矢(日本、20歳)
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
リスト:超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」
ラフマニノフ:ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.36 (1931年版)

5:15 Clayton Stephenson(アメリカ、23歳)
ラヴェル:「クープランの墓」より「プレリュード」
リスト:バラード第2番 ロ短調
プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番 変ロ長調 Op.83 「戦争ソナタ」

(20分休憩)

6:15 Albert Cano Smit(スペイン/オランダ、25歳)
ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
スクリャービン:詩曲 嬰ヘ長調 Op.32-1
スクリャービン:エチュード 嬰ハ短調 Op.2-1
リゲティ:練習曲第15番「白の上の白」
リゲティ:練習曲第13番「悪魔の階段」

第3セッション

9:30 Yuki Yoshimi 吉見友貴(日本、22歳)
モーツァルト:ピアノソナタ第9番 ニ長調 K.311
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 第1巻・第2巻

10:15 Uladzislau Khandohi(ベラルーシ、20歳)
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903
プロコフィエフ:ピアノソナタ第6番 イ長調 Op.82 「戦争ソナタ」

(20分休憩)

11:15 Yutong Sun(中国、26歳)
ヴァイン:5つのバガテル
ショパン:幻想曲 ヘ短調 Op.49
J.S.バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ

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