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飯田有抄のショパコン日記44〜これがファイナルのキラめきか!

1次予選最終日、2次予選、3次予選と聴き進んでまいりまして、ついにファイナルとなりました。会場に到着すると、なんだかこれまでとお客さんの雰囲気も違い、どことなくみんな晴れやか。着飾った人も多く、ドキッとするようなセクシードレスのおねえさんもいます。

それとは反対に、ホールスタッフのマスク警察、録音・録画警察の眼光は厳しくなり、鼻が出てる人、いつまでもスマホをいじってる人にすかさず真顔で指導が入ります。ピピー!! (実際には笛は鳴りません)

やはりステージにオーケストラの椅子や譜面台が配置されていると、一気に賑やかな雰囲気になるし、こちらも静かに興奮が高まります。

そしてついにファイナル、本選が幕を開けました! 本日の奏者4名とも、協奏曲は第1番です。

最初の奏者はポーランドのカミル・パホレツさん。このホールで初めてオーケストラとピアノの響きを耳にした瞬間、眼前に鮮やかな色彩が広がるかのようで、クラクラするほどの感激がありました!

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彼のリリカルかつ、すっきりとした音楽作りに合わせて、アンドレイ・ボレイコさんの指揮、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が、端正な響きで呼応していきます。ピアノとオーケストラとのバランスが最高で、パホレツさんの柔らかな音色がまったくオーケストラに埋もれることもありません。第1楽章の再現部では、独奏の流れをかなりオーケストラが自然に受けたことにハッとしました。・・・これは、もしや、ソリストによってオーケストラが相当変わるのでは? と予感。

その予感は的中でした。次に登場した中国のハオ・ラオさんは、若さいっぱい切れ味よく、やや硬質よりのよく立つ音が魅力です。オーケストラは序奏からブリリアントな響きへ! 指揮のボレイコさんのコントロールが素晴らしい! この響きの違いがどこまで配信で確認できるかはわからないのですが、少なくとも会場ではかなり違って感じました。

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ハオ・ラオさんの第2楽章を聴いていたら、あまりにも純粋で、夢と希望にあふれたショパンの音楽に胸がいっぱいになりました。ショパンがウィーンでの華やかな活躍を夢見て、祖国ポーランドを離れる前に、告別演奏会で初演された作品。その頃のショパンも、今演奏しているハオ・ラオさんのようにキラキラしていたのかな、などと想像してしまったら、ぐっときてしまい、門出を祝いたい気持ちになりました。

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それにしても、ハオ・ラオさんはかなり情報量の多い演奏をしましたね。オーケストラを時に率先してリードしたり、逆にオーケストラによく反応しながら、新たな自分の音色も引き出してもらっているような場面もありました。第3楽章はリラックスした雰囲気が伺えて、楽しそうな演奏姿。

そして反田さんの演奏を経て(そちらは別記事に感想を書きました)・・・

ファイナル初日の最後に演奏したのは、イタリアのレオノーラ・アルメリーニさんです。
慈愛に満ちた、深くも明るさのある音楽を聴かせてくれるアルメリーニさん。この人のピアノを聴いていると、いつでも「ピアノ演奏における歌謡性」といったことを考えたくなります。どうしてあんなに、歌うようにメロディーを紡ぎ出せるのでしょうか。

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彼女の歌心に導かれるようにして、オーケストラのソロパートのある楽器、とりわけファゴット奏者の対旋律が見事に浮き上がりました。妙にファゴットとの絡みがとてもよかったなぁと思っていたら、演奏の最後に、指揮者のボレイコさんも、ファゴット奏者を立たせていましたね(拍手を浴びせてあげるため)。

ハーモニーの移ろいとともに、時折見せる笑顔が魅力的でしたね。大らかで愛情深く、楽しさのある演奏は初日を締め括るにふさわしい存在感でした。

ところで、この日記では「アルメリーニ・ドレス」と勝手に呼んで着目してきた色違いのお衣装ですが、なんと今回は形が異なり、黒地にキラキラとした光沢のある生地のシックなドレスでございました。

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それにしても開演前は「同じ協奏曲を4回も聴くなんて、けっこう大変だな・・・」と密かに思っていたのに、ソリストと同様にオーケストラの響きや音楽作りも4回ともまったく違うので、相当楽しく、あっという間の時間でした。
初日のみなさんの素晴らしいファイナルに拍手です!

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※記事の速報性を上げるため、ヘッダには予選時の写真を使用しています。
写真:©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)

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