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飯田有抄のショパコン日記53〜反田恭平さんが師事するパレチニ先生、そして入賞者のタフネスについて

反田さんの2位が発表された翌日のタイミングで、今回のコンクールの審査員であり、また反田さんがワルシャワの音楽院で師事しているピオトル・パレチニ先生と会話する機会を得ました。
(ちなみに、審査員は、自分の生徒に点を入れることはできません)

今回の反田さんの演奏についてコメントしてくださいました。

「彼は1次予選からずっと、安定した演奏を聴かせてくれました。コンクールで上位入賞するには、やはり各ラウンドで浮き沈みがあってはいけません。すべて安定したパフォーマンスをしないと。
3次予選の演奏については、本人としては納得のいかない部分があったようで、涙する場面もありましたが、私は『気を落とさないで、すぐに協奏曲の準備に取り掛かりなさい』と声をかけていたんですよ」

まだ3次の結果発表前、つまりファイナリストが決まる前の段階で、こちらの日記を投稿しましたが、

今だから書きますが、反田さんは「3次ではやりたい演奏ができなかったけれど、パレチニ先生からは『協奏曲の準備を進めなさい』と言ってもらっているんです」と話してくれました。先生はいつも励ましてくださっていたんですね。


「このような賞をいただくと、この先がとにかくピアニストとして忙しくなっていきます。各国からのオファーが押し寄せ、コンサートの依頼が増えていきます。若いピアニストにとっては、それが悪い影響になってしまってはいけません。私は彼に『少しずつやりなさい、poco a pocoですよ』と何度も伝えています」
と、パレチニ先生は少し心配そうな微笑みを浮かべながらも、反田さんの受賞を嬉しそうに語ってくださいました。


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たしかに、上位入賞者のハードスケジュールたるや、この時点ですでに相当のものです。長期間の緊張の中ラウンドを勝ち進み、最終結果発表までの長い時間を、生配信番組で喋り続け、深夜2時頃の発表で感情が大きく揺すぶられ、すぐにまた配信番組でしゃべり、そしてもう褒賞コンサートの打ち合わせをしていたようです。その後にやっと、ホテルでの日本プレス向け記者会見(朝4時)。
そして翌日はまた全体的な記者インタビュー(たぶん何度も同じ質問をされる)、夜は表彰式とガラコンサートでの演奏、レセプション。コンサートは3日間。この間もずっと各種インタビューも続いていることでしょう。
そうしたものをすべてこなせるだけのタフネスを備えていなければならない。

でも、本当に忙しくなるのは、まさにここから・・・

そうしたことも全て見通した上で、審査の先生方は、上位入賞者をどんなピアニストに授けるか、潰れてしまわないだけの経験やパワーを備えた人であるかを真剣に考えて、選ばれているようです。

反田さんが記者会見で語られたのは、6年という時間の中で、演奏はもちろん、体格作りや、活動の拠点の整え方から、すべて準備してきたことをお話されていて、そのことにも大きな感動をもらいました。

大きなコンクールでタイトルを与えられる人の責任を果たすための、長い努力と準備が必要だということ。これから国際的なコンクールという舞台を夢見る若き才能たちに、大切なことを教えてくれている反田さんです。



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