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飯田有抄のショパコン日記1~ライブ配信を楽しむための5つのツボ


こんにちは。ショパン国際コンクール@ピティナ広報部のレポーター・メンバーの飯田有抄です。

いよいよ初日を迎え、コンテスタントの皆さんが繰り出す、いきなり素晴らしい演奏に驚愕しております。実はわたくし、本来でしたら現地の客席にいて、このnoteからレポートをお送りする予定でした。しかし、ワクチン摂取日からのカウントが足りず、ポーランド入国が難しいことがわかり、出発を遅らせることになりました。現地レポは2次予選からしっかりお届けの予定です!

そのようなわけで、私も世界中の多くの皆さんと同じように、1次予選はライブ配信をがっつり堪能すべく、日本時間の午後5時からPCの前に陣取っております。

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みなさんすでに覚悟(?)の上かもしれませんが、ショパン・コンクール観戦は長丁場であります! しかも日本は朝の3時過ぎまで続きます。ただただ漫然と聴き続けていては、どんなに素晴らしい演奏であっても(であればこそ?)、「ああもうお腹いっぱい、なんだかもうよくわかんなくなってきちゃった……」という耳の飽和状態が起こりかねません。

でも、どの時間帯に、どんな人が、優勝につながる最高のパフォーマンスを繰り出すか、まったく油断なりません!

そこで、長い配信期間をどうしたら楽しく聴き続けられるか、工夫してみたいと思いました。ひとつの方法にすぎませんが、ここで共有させてもらいますね。
たとえば、次のような5つのポイントに着目して、一人一人の演奏を聴いてみるのはどうでしょう?

ポイントその1:ダイナミクスの変化
どれだけ豊かに強弱の変化をつけているかな?と聴いてみます。これはたぶん、演奏上もっともわかりやすいポイントかもしれません。ただし、配信をどんな環境で聴くか(スマホなのか、イヤホンなのか、スピーカーに繋ぐのかetc)によって、強弱変化がわかりにくいこともあります。

ポイントその2:音色の種類
その人がどれだけ多様な音色を持っているかな? と注目します。唐突な例ですが、たとえば歌手の美空ひばりさんの歌のうまさって、曲や歌う言葉によってコロコロくるくると声音が変わるところにありますよね。ピアノも、人によっては信じられないくらい、1台から多様な音色が引き出されます。音色のヴァリエーションが多くて、変わるタイミングが自然な演奏には、とても惹きつけられますね。

ポイントその3:和声変化への反応
だんだんちょっと専門的になりますが、和声(ハーモニー)の変化、つまりコード進行に応じて、その人がどう反応して、音色やダイナミクスやテンポの操作しているか(あるいはしていないか)に注目してみます。過剰ではなく、自然に、和声の変化に対応していると、これまたグッと惹き込まれます。

ポイントその4:声部の分離度
ちょっと硬い言葉にはなりましたが、たとえばメロディーとバスと、内声部のうごめきと、ショパンの音楽が持っているポリフォニック(多声的)な響きを、どのくらい立体的に表現しているのかな?と耳を澄ませてみます。一人で演奏しているのに、まるで3人4人、いや、オーケストラが演奏しているかのように、いろんな声部が適度に分離していると、すごく素敵な演奏になりますね。

ポイントその5:全体のまとめ力、構成感
バラードやスケルツォ、幻想曲やソナタのように、規模の大きく長い曲になればなるほど、全体の設計をきちんと把握して、ドラマティックな構成を伝えてくれる演奏は、すごく説得力がありますよね。一方で、あっという間に終わってしまうエチュードでさえも、短い中にきちんとドラマを展開して聴かせてくれる奏者もいます。その人がどんなふうに、全体を捉えて伝えようとしてくれているのか、俯瞰した視線を追ってみようとするのも面白いです。


ここではこんな5つのポイントをあげてみましたが、自分の気になるポイントを立てて(たとえば、リズム・テンポ感とか、ステージ上での振る舞いや表情、ドレスの好みなどもアリかも?!)その切り口から演奏にせまってみるようにすると、漫然と聴くよりは、一人一人のコンテスタントの魅力に、自分なりに迫れるかもしれません。というご提案でした!

以上は、演奏にしっかり集中して楽しむ方法ですが、もちろん気楽に、のんびり画面を眺めるのもいいですね。ケーキにコーヒー、ワインなどを用意してリラックスして視聴するのも、配信鑑賞という特等席ならではの楽しみ方。

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いずれにしても、みなさん寝不足には気をつけながら、ライブ配信でのセッションを思い切りたのしみましょう!


写真:©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)


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