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クライバーンコンクール:1次予選1日目のプログラムと聴きどころ

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールは、日本時間の6/2(木)24時(木曜の夜、金曜に日付が変わった0時)から、3日間の1次予選の初日がスタートします。日本時間で、0時、早朝4時半、朝9時半からの3つのセッションで、計10名が40分のリサイタルを行います。

日本からは、1日目のトリとして、6/3(金)午前11時15分(日本時間)に、亀井聖矢さんが登場。亀井さんの1次プログラムは以下の通りです。

ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ショパン:エチュード イ短調 Op.10-2
ベルク:ピアノソナタ Op.1
リスト:「ノルマ」の回想

お得意の曲目を揃えてきましたね。1次予選にかける思いが伝わってくるようです。亀井さん自身の過去の動画で予習しながら、さらに進化した演奏をアメリカの地で披露してくれることを期待します。


さて、世界最高峰のクライバーンコンクール、30人のコンテスタントはいずれ劣らぬ実力者であり、並々ならぬコダワリをもったアーティストです。まずは、1日目の出場者・タイムテーブル・プログラムを日本語でまとめました。時間は、注記がなければすべて日本時間です。

第1グループ 6/3(金)0:00(現地6/2(木)10:00am)

0:00 Georgijs Osokins(ラトヴィア、27歳)
スクリャービン:ピアノソナタ第9番 Op.68 「黒ミサ」
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ショパン:ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58

0:45 Elizaveta Kliuchereva(ロシア、23歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
フランク:前奏曲、コラールとフーガ
リスト:スペイン狂詩曲

(20分休憩)

1:45 Ziyu Liu(中国、24歳)
シューベルト:3つのピアノ曲 D.946
バルトーク:ピアノソナタ Sz.80
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)

第2グループ 6/3(金)朝4:30(現地6/2(木)2:30pm)

4:30 Jonathan Mak(カナダ、25歳)
ハイドン:ソナタ 変イ長調 Hob.XVI:46
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲 Op.42

5:15 Anna Geniushene(ロシア、31歳)
ハイドン:ソナタ ニ長調 Hob.XVI:42
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」Op.33(全曲)

(20分休憩)

6:15 Andrew Li(アメリカ、22歳)
ハイドン:ソナタ ニ長調 Hob.XVI:42
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3つの楽章
リスト:ハンガリー狂詩曲第6番

7:00 Denis Linnik(ベラルーシ、26歳)
ラモー:組曲 ニ長調 RCT 3より「ミューズたちの対話」「つむじ風」「歓喜」
カラマノフ:ピアノのための変奏曲
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ラフマニノフ:ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.36(1931年版)


第3グループ 6/3(金)午前9:30(現地6/2(木)7:30pm)

9:30 Tianxu An(中国、23歳)
グバイドゥーリナ:シャコンヌ
メンデルスゾーン:厳格なる変奏曲 Op.54
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
リスト:メフィスト・ワルツ第1番

10:15 Arseniy Gusev(ロシア、23歳)
ギボンズ:ソールズベリー卿のパヴァーヌ
フローベルガー:アリア ニ短調 FbWV 636
フランク:前奏曲、コラールとフーガ
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
スクリャービン:ピアノソナタ第7番 Op.64 「白ミサ」

(20分休憩)

11:15 Masaya Kamei 亀井聖矢(日本、20歳)
ハフ:Fanfare Toccata(委嘱新曲)
ショパン:エチュード イ短調 Op.10-2
ベルク:ピアノソナタ Op.1
リスト:「ノルマ」の回想


全員に注目ですが、特筆すべきコンテスタントをご紹介しておきます。

トップバッターのGeorgijs Osokins ゲオルギス・オソキンス(ラトヴィア、27歳)は、2015・2021ショパンコンクールですっかりおなじみの存在となりました。低い椅子に座る独特のフォームから繰り出される濃厚でこだわりのある音楽はワルシャワでも強い印象を残しました。

2人目のElizaveta Kliuchereva(ロシア、23歳)は、モスクワ音楽院(ロシア)ハノーファー音楽演劇大学(ドイツ)イモラ国際ピアノアカデミー(イタリア)と世界最高峰の音楽院に学んだピアニスト。また、3人目のZiyu Liu(中国、24歳)もまた、ハノーファー音楽演劇大学に学び、ヴィオッティ国際コンクール(2019年)で第1位を獲得するなど活躍。この二人に共通するのは、ハノーファーの名教師アリエ・ヴァルディ先生のもとで学んだということ。ヴァルディ先生の名前はショパンコンクールの際も何度も出てきましたが、最近では、進藤実優さんも先生のもとで学び始めています。個々の個性を存分に開花させる名匠に学んだ2人のピアニズムに注目です。

第2グループでは、おなじみの名ピアニストを家族に持つ俊英たちが登場です。Anna Geniushene アンナ・ゲニューシェネ(ロシア、31歳)は、自身がブゾーニ国際3位、リーズ国際ファイナリストなど名だたるコンクールで入賞している折り紙付きの実力派ですが、彼女の夫は、ショパンコンクール(2010)チャイコフスキーコンクール(2015)2位のルーカス・ゲニューシャス。夫妻でのデュオ活動も活発です。

彼女のYouTubeチャンネルにはソロの録音も多数。


次に登場するAndrew Li アンドリュー・リー(アメリカ、22歳)は、ハーバード大学とニューイングランド音楽院の教育プログラムで学んだという俊才中の俊才で、ニューイングランドでは名教師Wha Kyung Byun先生に学び、2016年のクーパー国際ピアノコンクール(山崎亮汰さんが優勝)のときの第5位入賞など、早くから才能を見せました。

彼の兄は、2015年のチャイコフスキーコンクールで上述のゲニューシャスとともに第2位を受賞したジョージ・リー George Li。ジョージのYouTubeチャンネルには、弟アンドリューのソロ演奏や二人の幼少期のデュオ演奏など、貴重な演奏映像も豊富に掲載されています。

ひょっとして、家族を応援に来たゲニューシャスとジョージ・リーが再会というようなシーンもあるのでしょうか?

参考:George Li ジョージ・リー YouTubeチャンネル

1日目の現地「夜の部」は3人のピアニストが出演。3人目(1日目の最後)が亀井聖矢さんです。

冒頭に登場するTianxu An ティアンス・アン(中国、23歳)の名前をご記憶の方は、かなりのツウでしょう。藤田真央さんも入賞した2019年のチャイコフスキーコンクールで第4位に入賞した素晴らしいピアニストですが、何といっても、その本選で手違いにより異なる曲のオケ序奏が始まったのを見事にリカバーした衝撃のシーンは話題となりました。

このあたりは、今回もクライバーンコンクールを視察している高坂はる香さんがONTOMOに寄稿した注目ポイントの紹介記事でも詳しく触れられていますので、是非。高坂さんの現地レポート、今回もあるようですので、楽しみです!

そればかりが記憶に残ってしまいますが、実力も折り紙付き。中国の名門・中央音楽院(北京)に学んだ後、アメリカの才能教育のメッカ、カーティス音楽院で、マンチェ・リウやロバート・マクドナルドに師事。マンチェ・リウ先生といえば、小林愛実さんの師匠でもあります。最高レベルの演奏にも注目です。

亀井さんの前に演奏するArseniy Gusev(ロシア、23歳)の個性的なプログラムに関しては、ひとつ前の記事でご紹介しました。自ら作曲もする多彩な音楽家のようです。ギボンズ、フローベルガーから、フランクを経てスクリャービンの「白ミサ」へ到達するオリジナリティあふれるプログラムです。


さあ、眠れない日々が始まります。

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