予備予選免除者って何?~ショパンコンクール予備予選(基礎情報編)
連日、熱演が続くショパンコンクール予備予選。ここで改めて「予備予選」はどの位置づけなのかおさらいしましょう。
ショパンコンクールは、大きく3つの段階から成ります。
(ア)映像提出 (予備選考) 今回500人以上のエントリー
(イ)予備予選 164人が選出 ※今、進行中のもの
(ウ)本大会 80名が選出予定/10月 (この中にさらに1次予選~本選)
今回は(ア)と(イ)のあいだで1年3か月にわたりたびたび延期が繰り返された結果、現在、連日進行しているのが(イ)予備予選ということになります。
そして、ショパンコンクールが指定する条件を満たすピアニストは、(ア)あるいは(ア)と(イ)が免除され、直接、次のプロセスに進むことができます。その条件とは?
(1)以下の各地のショパンピアノコンクールで上位3位以内の入賞者は、映像提出を免除で予備予選(現在開催中のもの)に直接参加できる
・アジア太平洋国際ショパンピアノコンクール(韓国・大邱、2018年)
・ダルムシュタット国際ショパンピアノコンクール(ドイツ、2017年)
・カナダ・ミシサガ・ショパンピアノコンクール(カナダ、2019年)
・若いピアニストのためのモスクワ国際ショパンピアノコンクール(ロシア、2018年)
・若いピアニストのための北京国際ショパンピアノコンクール(中国、2016年・2019年)
・ショパンコンクール in ASIA派遣コンクール(東京、2020年)
(2)以下の国際ピアノコンクールで上位2位以内の入賞者は、予備予選を免除で、10月の本大会から参加できる
・エリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門(ベルギー・2016年)
・パデレフスキ国際ピアノコンクール(ポーランド・ビドゴシチ、2019年)
・ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール(アメリカ、2017年)
・浜松国際ピアノコンクール(日本、2018年)
・リーズ国際ピアノコンクール(イギリス、2018年)
・チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門(ロシア、2019年)
・サンタンデール国際ピアノコンクール(2018年)
・アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール(イスラエル、2017年)
(3)以下の2つのコンクールの上位2位以内の入賞者は10月の本大会に、第3位の受賞者は予備予選に、直接参加できる。
・ショパン国際ピアノコンクール in マイアミ(アメリカ、2020年)
・ポーランド国際ショパンピアノコンクール in ワルシャワ(ポーランド、2020年)
たとえば、日本から参加している進藤実優さん、古海行子さん、黒木雪音さんは、(1)の「ショパンコンクール in ASIA 派遣コンクール」で特別推薦を受けたので、(ア)を免除され、今回の(イ)からの参加を許可されています。
さて、(2)(3)の条件を満たし、ひと足早く、10月の本大会への参加が許可されたと発表されているピアニストが9名います。日本からは、すでにピアニストとして活躍している牛田智大さんがエントリーしています。
9名を演奏と共にご紹介しましょう。
1. ピオトル・アレクセヴィチ Piotr Alexewicz (ポーランド)
2020年ポーランド国際ショパンピアノコンクール in ワルシャワ 第1位
栄誉あるドゥシニキ国際ショパン音楽祭でのリサイタルから
2. エイヴリー・ギャリアーノ Avery Gagliano(アメリカ)
2020年ショパン国際ピアノコンクール in マイアミ 第1位
マイアミのショパンコンクールの映像から
2019年のクライバーンジュニア国際ピアノコンクールでも、セミファイナルまで進出し、正統的でごまかしのない音楽で強い印象を残しました。
2019年6月に行われた第2回クライバーンジュニア国際ピアノコンクールは、俊英揃い。セミファイナリスト、右から2人目がショパン予備予選免除者のGaglianoさん。その左隣が予備予選に登場するJJ Jun Li Buiさん、右から6人目が同じくEva Gevorgyanさん。このコンクールには、進藤実優さん・森本隼太さんも参加していました。
3. アダム・カウドゥニスキ Adam Kaldunski(ポーランド)
2019年若いピアニストのための北京国際ショパンピアノコンクール第1位
2020年ポーランド国際ショパンピアノコンクール in ワルシャワ 第2位
ショパンの生家ジェラゾヴァ・ヴォラでのリサイタルから
4. シモン・ネーリング Szymon Nehring(ポーランド)
2017年ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール第1位
前回、ポーランドから唯一ファイナリストに
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
その後ルービンシュタインコンクールで優勝、一躍世界へ
シマノフスキ:変奏曲 ロ短調 Op.3
5. エヴリン・オゼル Evren Ozel (アメリカ)
2020年ショパン国際ピアノコンクール in マイアミ 第2位
マイアミのコンクールでの演奏から。
山﨑亮汰さんが優勝した2016年のクーパー国際ピアノコンクールでも第2位に入賞、その後ダブリン国際などでも入賞の俊英です。
6. カミル・パホレツ Kamil Pacholec (ポーランド)
2019年パデレフスキ国際ピアノコンクール 第2位
「ショパンとヨーロッパ」音楽祭でのリサイタルから
7. ピオトル・パヴラク Piotr Pawlak (ポーランド)
2017年ダルムシュタット国際ショパンピアノコンクール 第1位
2020年ポーランド国際ショパンピアノコンクール in ワルシャワ 第2位
ショパンの生家でのリサイタルシリーズから
8. スン・ユートン Yutong Sun (中国)
2018年サンタンデール国際ピアノコンクール 第2位
スペインの名門サンタンデール国際のほか、各地のコンクールで入賞
9. 牛田智大 Tomoharu Ushida (日本)
2018年浜松国際ピアノコンクール 第2位
浜松国際コンクールでの活躍はいまだに鮮烈な印象(第2次予選)
ショパン:バラード第1番 ト短調 Op.23
この9人が、今回の予備予選を免除されて、10月の本大会への参加を認められています。
いずれ劣らぬ実力派。予備予選が終わったら、10月に向けて是非チェックしてみてください。
写真(古海行子さん・進藤実優さん):(c)Wojciech Grzedzinski / NIFC