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1次予選課題「ノクターン」系選択数を数えてみました~2021ショパンコンクール

頼まれてもいないのに、ついつい数えて集計してしまう予選の課題曲。前回は、1次予選の「エチュード」の選択ランキングをお届けしました。

続いては、ノクターンまたはそれに準ずるゆっくりとしたエチュード(いわゆる「別れの曲」Op.10-3など)の指定課題の選択状況です。

「歌心」は、ショパンの音楽の魂。予備予選や1次予選という最も基本的な能力を問うラウンドで、エチュードやバラードと並んで「ノクターン」を指定していることから、ショパンコンクールがいかにこの「歌心」を大切に考えているかが分かります。(実は、ピティナ・ピアノコンペティションJr.G級全国大会で、メンデルスゾーンの「無言歌」が指定されるのもまったく同じ意図です)

それでは行ってみましょう!

1次予選ノクターン選択数ランキング

予備予選に続いて、Op.48-1ハ短調、Op.62-1ロ長調、Op.27の2曲が高い人気を誇っています。この上位4曲は不動ですね。予備予選のランキングを振り返っておきましょう。

驚いたことに、「ト長調 Op.37-2」を選んだ人はいませんでした。予備予選では日本の伊藤順一さんと山縣美季さんだけが選択していましたが、伊藤順一さんが本大会1次予選に向けては「ロ長調 Op.62-1」を提出したことで、選択者ゼロの事態に。。

では、もうこの曲が聞ける可能性がないのかというと、第2次~第3次予選の課題では、指定された作品以外に、時間が余ればショパンの他の作品を自由に加えることができるので、そこで追加してくるコンテスタントは出てくるかもしれません。

せっかくなので、あえて誰も選ばなかった「ト長調 Op.37-2」を聞いてみましょう。

前回の2015年大会でファイナルまで進出し、その後、イスラエルのルービンシュタイン国際ピアノコンクールで優勝した、今回の地元ポーランド期待のコンテスタントのひとり、シモン・ネーリング Szymon Nehring さんの演奏です。

彼は、ルービンシュタインコンクール優勝の実績で、7月の予備予選を免除されたピアニストです(日本の牛田智大さんと同じ扱い)。日本では、TVアニメ「ピアノの森」で登場人物のピアノ演奏を実際に担当したことでも知られているかもしれません。

1次予選では、初日10/3(日)の冒頭、「昼の部」のセッション(日本時間10/3 19:30頃)5人目と、早々に登場します。「M」から始まりますから、「N」のネーリングさんの出番は、当然早くなりますね。もちろん本大会ですからどのピアニストも素晴らしいのですが、もっとも大きな規模の国際コンクールで実績を持つコンテスタントとしては、最初の登場になりますから、注目です。

ちなみに、このネーリングさんの演奏は前回大会の「2次予選」です。つまり、先ほど述べたように「2次予選の中で、自分の選択として入れたプログラム」として演奏しています。前回の「1次予選」のノクターン系の課題では、エチュードOp.25-7を選択していました。こちらも、凄まじく美しい作品です。

ネーリングさん、今回は、後期の難曲でありながら名曲「変ホ長調 Op.55-2」を選択しています。この曲は、特にショパンにこだわりの強いピアニストたちが選択しているイメージがあります(筆者の偏見)。今回のコンクールに懸けるネーリングさんの思いが伝わってくるようです。どんな曲か、聞いておきましょう。

弾いているのは、2010年本大会でファイナルまで進んだパーヴェウ・ヴァカレツィさん。彼は、今回の審査委員長でラファウ・ブレハッチ(2005年大会優勝)の師匠でもあるカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロン先生の生徒のひとりですが、実は、前述のシモン・ネーリングさんも、今はポポヴァ先生に指導を受けています。

コンテスタントそれぞれの「歌心」には、個性のほかに、地域性やアンサンブル経験なども垣間見えて、1次予選のひとつの大切な聴きどころとなりそうです。

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