肩峰下インピンジメントに対する整形外科的テストの捉え方(動画解説)
今回は肩疾患をみていく上で必ずというほど対応する機会が多い「肩関節インピンジメント症候群」
その中でも肩峰下インピンジメントに対する整形外科的テストについて深掘りしていきたいと思います。
ロコラボでは肩関節に対する理学療法評価・アプローチ(徒手・運動療法)について紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
|肩関節インピンジメント症候群とは
大きく関節外、関節内のインピンジメントに大別され、更に関節外インピンジメントでは肩峰下インピンジメントと烏口下インピンジメントに分けられます。
例えば、肩関節の可動域制限が生じていた状態において屈曲は挙がるようになってきたが、外転が60~90°付近で引っ掛かる形で痛みが生じて可動域制限が起きている経験をしたことがある方は多いかと思います。
その場合、ほとんどのケースにおいて何かしらの要因により肩峰下での大結節のスムーズな通過が起こらないことでインピンジメントが生じ、痛みと可動域制限を引き起こしていると考えられます。
|代表的な肩インピンジメントテスト
肩インピンジメントに対しての整形外科的テストとしてまず思い浮かぶのはNeer test(ニアーテスト)、Hawkins test(ホーキンステスト)の2つだと思います。
その他にも一般的には腱板損傷に対するテストとして紹介されていることも多いPainful arc signやDrop arm test、棘下筋筋力テスト、empty can test、水平内転テスト、ヨーカムインピンジメントテストなどがあります。
それぞれのテストで何を確認しているのか?どこのインピンジメントを確認することが出来るのか?それらをしっかりと理解することは大切です。
しかし、前提としてインピンジメントテストではインピンジメントが起こるかどうかを確認する評価であり、その原因が確認できる訳ではないです。
|挙上時の大結節の通路
肩関節挙上運動時において、上腕骨は上方へ転がり、下方へ滑ります。この転がり運動と滑り運動によって、大結節が肩峰の下方へ入り込んでいくことで挙上を可能としています。
その挙上時において大結節が肩峰下へ入り込む通路が下記の図になります。
これだけだと、少し分かりづらいかもしれないのでそれぞれ肩峰下を通過する通路と段階に分けて解説します。
肩関節屈曲はほぼ前方路、外転は後外側路を通り挙上していきます。
大結節が肩峰下通過するまでを段階別にしたものです。
①pre-rotational glideと②rotational glideの境界角度が60°や80°の記載のものがありますが、あくまでも個人的な見解ですが60°を境界として考えています。
いくつかの文献、烏口肩峰アーチにて滑り込みを確認する際の角度やpainful arc testにおいても60~120°にて痛みが生じる場合に陽性としている点からも60°付近から肩峰下に入り込んでいくのではないかと考えています。
|整形外科的テストにおける意義
前述した大結節が肩峰下においてどの位置を通過していくのか、どの位置で疼痛が生じているのかを明らかにすることによって、インピンジメントテストによる刺激がどの組織に対しての刺激となるのかを推測するヒントになるかと思います。
今回は肩峰下インピンジメントに対するテストの中でもNeer test/Hawkins test/painful arc sign/棘下筋筋力テストについて考察していきます。
○Neer test(ニアーテスト)
肩関節内旋位での挙上運動のため、anterior pathを大結節が通過する際のインピンジメントテストとなります。挙上角度によってどのglideに分類されるかが変わってきます。
○Hawkins test(ホーキンステスト)
肩関節90°屈曲位または外転位での挙上運動のため、屈曲位であればanterior path、外転位であればpostero-lateral pathにおけるrotational glideでの大結節の移動を評価しているインピンジメントテストとなります。
○painful arc sing(ペインフルアークサイン)
肩甲骨面上での挙上運動のため、neutral pathを大結節が通過する際のインピンジメントテストとなります。これも疼痛が生じる挙上角度によってどのglideに分類されるかが変わってきます。
○棘下筋筋力テスト
このテストにおいては、肩関節の動きとしては下垂位での外旋運動となるためpre-rotational glideでの運動のみとなります。しかし基本的には肩峰下に入り込む前の状態でありpre-rotational glideでの痛みに関してはインピンジメント以外の要因(例えば腱板断裂や肩関節外旋可動域低下など)による影響が大きいと考えます。
ただ、陽性・陰性尤度比に基づくとHawkins test/painful arc sign/棘下筋筋力テストの3つ全て陽性であれば肩峰下インピンジメント症候群の可能性が高くなるとされています。
|肩峰下インピンジメントの要因
整形外科的テストにてインピンジメントの有無が確認できたところで、その要因を評価していく必要があります。
肩峰下インピンジメントを増強させる因子としては大きく二つあります。
1つ目は関節構造自体の異常によるもの、2つ目は関節運動に異常がある場合です。
そして、関節構造の異常、関節運動の異常それぞれに色々な因子があります。
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