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The Yoshio Band「きみのかなしみに」によせて

歌詞カードを眺めながら、アルバムを聴くのは、音楽的自我が芽生えた中学時代以来だと思う。

昔、団地の2階が実家だった。
私の部屋は西側で、
夕暮れが綺麗に見えたのを憶えている。
よくTSUTAYAのJ-Rock棚から借りたアルバムたちを歌詞カードと一緒に聴き耽っていた。
愛や恋について書かれた歌詞の意味すら分からずに、それでも夢中で読んでいた。

The Yoshio Band のNewアルバムは、夏の夕暮れがとても似合う。
メロウなメロディに乗せて、どこかにあるはずのかなしみたちへ届けたい言葉たちが紡がれている。
思い出が打ち寄せる砂浜で、未来に対する不確かな期待を抱かせてくれる、そんな「祈り」にも似た何かを感じた。

きっと、そんな何かに袖を引かれて
あの頃の風景を思い起こしたのかもしれない。
当時に比べたら、年齢も多少は積み重なり、経験も知識も少しはついた。
だけど、例えば人の気持ちとか、
あの頃分かったと思っていた事が、むしろ分からなくなった。
「分からない」と思えるようになった。
それが、少しだけ誇らしい。

ああ、またあなたとお酒を酌み交わしながら、色んな事を話したい。
記憶について、小さな絶望について、そして、未来への不確かな期待について。

そんな事を考えながら、大阪へ向かう新幹線の中で夏の終わりを感じています。

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