腰部脊柱管狭窄症術後の理学療法ケーススタディ：前脛骨筋筋出力低下と足関節背屈不足

1. 患者情報

• 年齢：68歳

• 性別：男性

• 診断名：腰部脊柱管狭窄症（L3/4, L4/5レベル）

• 手術：L3-L5椎弓切除術

2. 現病歴

約2年前から両下肢のしびれと間欠跛行が出現。保存療法で改善せず、歩行距離が50m程度まで低下したため、3週間前に手術を施行。術後、右下肢のしびれは改善傾向にあるが、左下肢のしびれは残存。また、左足関節の背屈が困難となっている。

3. 既往歴

• 高血圧（内服加療中）

• 2型糖尿病（食事療法中）

4. 社会背景

• 職業：定年退職した元会社員

• 家族構成：妻と2人暮らし

• 趣味：週1回のグラウンドゴルフ（現在は中止）

• ADL：術前は自立。現在は歩行器使用

5. 理学療法評価（術後7日目）

疼痛評価

• 腰痛：VAS 3/10（安静時）、5/10（動作時）

• 左下肢痛：VAS 2/10（安静時）、4/10（動作時）

関節可動域検査（単位：度）

• 腰椎屈曲：30（痛みあり）

• 腰椎伸展：10（痛みあり）

• 左股関節屈曲：100

• 左膝関節屈曲：130

• 左足関節背屈：5（筋力低下あり）

徒手筋力検査（MMT）

• 体幹屈曲：3

• 体幹伸展：3

• 左股関節屈曲：4

• 左膝関節伸展：4

• 左足関節背屈：2（前脛骨筋の筋出力低下）

• 左足関節底屈：4

その他の評価

• 感覚：左L4-L5領域にしびれ感（5/10）

• 歩行能力：歩行器使用で20m連続歩行可能

• バランス：Berg Balance Scale 35/56点

日常生活動作（FIM）

総得点：95/126点

• セルフケア：35/42点

• 排泄コントロール：14/14点

• 移乗：15/21点

• 移動：7/14点

• コミュニケーション：14/14点

• 社会的認知：10/21点

歩行分析

• 立脚期：左立脚期の短縮、左足関節の背屈不足による踵接地の困難さ

• 遊脚期：左足関節の背屈不足による足尖のひきずり

• 代償動作：骨盤の過度な前傾、股関節の過度な屈曲

6. 問題点

インペアメントレベル

1. 左前脛骨筋の筋出力低下

2. 左足関節背屈可動域制限

3. 腰部・下肢の疼痛

4. 左L4-L5領域のしびれ感

ディスアビリティレベル

1. 歩行能力の低下

2. バランス能力の低下

3. 階段昇降の困難さ