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心原性脳塞栓症の理学療法ケーススタディ


1. 患者情報

  • 年齢、性別:68歳、男性

  • 診断名:心原性脳塞栓症(左中大脳動脈領域)

  • 手術:該当なし(保存的治療)

2. 現病歴

自宅で突然の右上下肢の脱力と構音障害を呈し、家族が救急要請。発症から1時間以内に搬送され、MRIにて左中大脳動脈領域の急性期脳梗塞と診断。心房細動も確認され、心原性脳塞栓症と診断された。

3. 既往歴

  • 高血圧(10年前から加療中)

  • 2型糖尿病(5年前から加療中)

4. 社会背景

  • 職業:定年退職した元会社員

  • 家族構成:妻と二人暮らし

  • 趣味:ゴルフ、散歩

  • 自宅環境:2階建て一戸建て、階段あり

5. 理学療法評価(発症後7日目)

疼痛評価

  • 特記すべき疼痛なし

関節可動域検査(右側)

  • 肩関節屈曲:110°

  • 肘関節伸展:-10°

  • 手関節背屈:45°

  • 股関節屈曲:100°

  • 膝関節伸展:0°

  • 足関節背屈:10°

徒手筋力検査(右側)

  • 上肢:2/5

  • 手指:1/5

  • 下肢:3/5

ブルンストロームステージ

  • 上肢:Stage III

  • 手指:Stage II

  • 下肢:Stage IV

その他の関連する評価

  • 感覚障害:右上下肢の表在感覚、深部感覚ともに中等度鈍麻

  • 言語機能:軽度の運動性失語

  • 高次脳機能:注意障害、半側空間無視(軽度)

  • バランス:座位保持可能、立位は軽度介助必要

  • 歩行能力:平行棒内歩行で軽度介助レベル

日常生活動作(FIM)

  • 運動項目:45/91点

  • 認知項目:25/35点

  • 合計:70/126点

詳細な動作分析

歩行分析(平行棒内):

  • 立脚期:右立脚期の短縮、右膝の過伸展、骨盤の右側方動揺

  • 遊脚期:右足のクリアランス低下、骨盤の挙上による代償

6. 問題点

インペアメントレベル

  1. 右片麻痺(上肢>下肢)

  2. 感覚障害

  3. 運動性失語(軽度)

  4. 注意障害

  5. 半側空間無視(軽度)

ディスアビリティレベル

  1. 歩行能力低下

  2. ADL自立度低下(特に更衣、入浴、トイレ動作)

ハンディキャップレベル

  1. 社会参加の制限(趣味活動の制限)

  2. 自宅内での役割変化

7. 目標設定

長期目標(8週後)

  1. 屋内歩行自立(T字杖使用)

  2. ADL自立(FIM運動項目80点以上)

  3. ブルンストロームステージ:上肢 Stage IV、手指 Stage III、下肢 Stage V

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