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「挙上時の三角筋の貢献度について」



1.英文紹介

Hecker, Andreas et al. “Deltoid muscle contribution to shoulder flexion and abduction strength: an experimental approach.” Journal of shoulder and elbow surgery vol. 30,2 (2021): e60-e68. doi:10.1016/j.jse.2020.05.023

2.「研究目的」

✓肩関節屈曲および外転運動の筋力に対する三角筋の寄与については、生体内のデータが不足している。
✓可動域全体における肩関節屈曲・外転筋力に対する三角筋の貢献度を定量化し、信頼性の高いin vivoデータを作ることを目的とした。 

3.「対象と方法」

✓対象者は、18歳から65歳までの男女12名
✓腋窩神経ブロックにて三角筋をノックアウトする
✓腋窩神経ブロックの前と30分後に、三角筋と棘上筋、棘下筋の針筋電図を計測した。30分後に最大収縮をさせて、三角筋の筋電図反応が完全にサイレントの場合、麻痺は成功したと評価した。
✓筋力測定を徒手筋力計を用いて、腋窩神経ブロックの前と45分後に実施した。測定肢位は、立位で屈曲あるいは外転を0、30、60、90、120°の計10 Positionの測定を行った。また、下垂位外旋ならびに外転90°外旋も測定した。下垂内旋は、立位ならびに外転90°内旋の測定は、背臥位で行った。
✓可動域は、屈曲、外転、内旋、外旋をゴニオメーターで測定した。

4.「結果」

✓すべての被検者において,三角筋の3つの部分が完全麻痺していることが筋電図で確認できた。
✓棘上筋と棘下筋の活動はすべての被験者で腋窩神経ブロックの影響を受けなかった。
✓可動域は、介入前・後の外転と屈曲運動がそれぞれ94%と88%に有意に低下したが、内旋・外旋可動域に差は認めなかった。
✓外転筋力は介入前・後で外転0°で76%、外転120°で25%となった。これは、0~120°の全可動域において有意に低下していた。
✓屈曲筋力は、介入前・後において0°で、89%となり、有意な低下は認めなかった。屈曲30°から120までは、64%~30%と、有意な低下を認めた。
✓内旋筋力は、外転0°と外転90°では、有意な低下は認められなかった。
✓外旋筋力は、外転0°で84%と減少傾向を示し、外転90°で53%と有意に低下していた。

5.「結論」

✓三角筋は外転および屈曲角度に依存して肩関節の最大筋力に直線的な寄与を示し、立位の各屈曲角度における屈曲筋力は、11%から70%、各外転角度で24%から75%の寄与を示した。三角筋と小円筋の組み合わせは、外転90°における外旋に大きく寄与する。

6.「興味深い点」

①Table Ⅱより屈曲の可動域の最小値と最大値は、88〜100%、外転の可動域の最小値と最大値は、50〜93%であることから三角筋をノックアウトすると屈曲よりも外転運動の方が強く影響を受けるという点
 →この辺は、おそらく筋モーメントアームなどが大きく関与したり、屈曲と外転筋力に参加する挙上筋の数の違いなども関与していると思われる。
②挙上時の最大の主動作筋である三角筋がノックアウトされていても手は挙上することが出来るのだという点(上肢の重み程度)。
 →今回のように構造的破綻がなく、陰圧構造が正常であれば、三角筋がサイレントであっても、他の挙上筋群で少ない力でも手は挙上することが出来るのだと思った。
 

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