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「神経系モビライゼーション:どのくらい滑る?②」


1.英文紹介

Ellis RF, Hing WA, McNair PJ. Comparison of longitudinal sciatic nerve movement with different mobilization exercises: an in vivo study utilizing ultrasound imaging. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Aug;42(8):667-75. doi: 10.2519/jospt.2012.3854. Epub 2012 Jun 18. PMID: 22711174.

2.目的

 超音波画像を用いて大腿部後面での坐骨神経の縦方向の移動量を検討することを目的とした。

3.対象と方法

✓健常成人31名(女22名、男9名、平均29±9歳)。
✓頚椎および膝関節の可動域は、3 SPACE FASTRAK(磁場式三次元動作解析)を用いて測定した。
✓坐骨神経の伸展性の評価は、大腿後面中央部(臀部と膝窩の中間)で評価した。超音波で短軸で同定し、そのまま長軸像で描出した。その後、超音波画像のフレームごとの相互相関分析を用いて移動距離を計算した。
✓4つの神経モビライゼーションの方法、いずれも脊柱を屈曲させてスランプ肢位で測定を実施(バランスボールを用いて姿勢変化を抑制している)。
 A:膝関節伸展と同時に頸椎伸展
 B:膝関節伸展のみ
 C:頸椎屈曲のみ
 D:膝関節伸展と同時に頸椎屈曲
 いずれも足関節の影響を排除するために、足関節背屈0°に装具で固定した。膝関節運動は、20°/秒の角速度で行った(環境設定を参照、Biodex装置にて速度をコントロール)。頸椎の動きを3秒かけて行うよう指示された。

4.結果

✓A〜Dまでの4つの運動は、大腿部後面での坐骨神経の移動量に有意差を認めた(P<.001)。同時に頚椎伸展と膝関節伸展させる運動が、最も大きな坐骨神経の移動量(3.2 ± 2.0 mm)を認めた(スライダー)。これは、同時に頚椎屈曲と膝関節伸展させる運動(2.6 ± 1.5 mm; P = .002)よりもわずかに移動量が大きかった(テンショナー)。頚椎屈曲運動は、坐骨神経の移動量が(-0.1 ± 0.1 mm)他の3つの運動よりも有意に小さかった。

5.興味深い点

✓今回の測定肢位は、いずれもスランプ肢位で実施しており、言い換えると高齢者の円背を再現していることに近いと思われる。対象が若年者ではあり、加齢に伴う軟部組織の柔軟性は加味されていないが、スランプ肢位でもスライダーとテンショナーのの手技で十分に神経を滑走させることが可能であることが示唆される。
 今回の結果から頚部単独では、十分な滑走を得ることができないということ、逆に膝関節を上手くコントロールすると十分に坐骨神経は滑走するのだという点は十分に理解出来た。また、臨床的には、私自身は、側臥位で実施することが多いので、固定するべくところと動かすところのメリハリをしないと十分な滑走は得られないと思われる(セルフエクササイズで座位で実施させることもある)。

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