シノニム

逢魔が時の今頃
私のすぐ下の部屋で多分また
幸薄げな占術師が
香を焚き染めている
三日前に拾った猫は
それにつられて
しばらく目を覚まさなくなる
あまり意味を望まずに
日記をクリップで纏めた
爪は噛みすぎてもうボロボロ
後輩が腫れ物に触るように
「作業中は音楽聴かないんですか」
(歌詞があると、気が散るから)
手製のシェルターの裾が破けて
でも何をするわけでもなくて
何かできるわけでもなくて
「あたしらどうせ捨てられるんなら」
 「死んで生まれたほうが」
  「よかったかもしれないね」
と、別れ際の言葉フラッシュバック
煙と一緒に嚥下する
ムスタングの弦は
だいぶ前から錆びたまま
触れる
ずっと前に忘れたはずの
貴女に向けたラブコール



#詩 #過去作

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