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妊娠中のはなし

もう一生ないだろうから妊娠中のエピソードを残しておこう。
子を宿すまでの話を以前書いたが、今回はその後の話。

妊娠発覚前、ナンバーガールのライブを観るために名古屋へ行った。近鉄のひのとりで向かったのだが乗り物酔いをしてグロッキーに。名古屋に到着したら治ったが、凄く楽しみにしていた念願のひのとりだったのに全くエンジョイできず悔しかった。思い返せばこれから起きることの前触れだったのかもしれない。

悪阻の洗礼

妊娠初期は悪阻で生きた心地がしなかった。
ベッドと身体が合体したような最悪な生活。文字通り寝たきり。
SNSやテレビに映し出される料理の画を見るだけで具合が悪くなり、年末年始というタイミングを恨んだ。
一番ひどい時は光がダメで、液晶画面さえ見るのが苦痛で、部屋のカーテンを閉め切り横になってずっとラジオを聞いて過ごしていた。ラジオはいい。元々好きだったが改めて良さを実感した。ラジオから流れる肉を焼く音で具合が悪くなったけれど。

何か食べないと気持ち悪くなる。とはいえ食べても気持ち悪くなる。
極々少々口に入れるのもドキドキする。その日その時の正解が読めない。果汁グミ、ラムネ、ビスコ、アメ、カロリーメイト、スティックパン。一番助けられたのはコストコのシロップ漬けグレープフルーツ。とはいえまともに食べられた記憶がない。ポカリスエットが苦く感じて凄く嫌な気持ちになった。怖すぎてできることなら何も口に入れたくない。

前情報通りハミガキ、シャワーでも具合が悪くなる。比較的いけそうなタイミングにギリギリこなした。3日に1回、朝のシャワーが限界。夜は完全アウト。こればかりは冬で助かった。ハミガキはできなくとも、リステリンを使えばどうにかなると考えていたが、リステリンを口に含むだなんて土台無理な話。口内環境がスラム。

つわり軽減バンドを四六時中手首に装着していた。発作が起きるたび強く押さえていたので濃いアザができた。
いっそ入院したい、とクリニックへ行き検査をするもケトンは出ているが数値が中途半端で願い叶わず。せめてもで処置してもらった点滴が効いた実感は無かった。

妊娠が分かりすぐ体調が優れなくなり、急遽勤務先を退職した。正解だったのかずっとモヤモヤしていたが、これだけ使い物にならない身体になるならスパッと辞めておいてよかったのかもしれない。

自分の身体なのに人に操られているような、もう二度と味わいたくない感覚。
女ばっかりこんな目に合うなんて…とトイレで唾液を吐きながら泣いた。
悪阻の発作がパニック障害の発作に似ていたのが辛かった。
パニック障害は吐くのが怖かったけど一度も吐くことはなかった。どれだけしんどくても絶対に吐かない。
しかし悪阻は吐くから厄介。嘔吐恐怖症には耐えがたい日々。

一度強い発作が起きベッドから動けず、枕元に置いてあった袋に嘔吐した。自分が情けないと泣いていると夫が吐瀉物の処理をしてくれた。この時この人と結婚してよかったとしみじみしたのだが、思えば発作が起きたきっかけは夫のバカでかく汚いゲップだった。妊娠後も飲酒量変わらずでほぼ毎日2L以上飲む。吐きそうだからやめてと言っても何度もゲップをする夫。食べ物の匂いが完全アウトだった私の横でキムチ鍋を作って食べるような人間だ。とはいえ今でも夫に対してイライラした時は「でもこの人私のゲロの処理してくれたしな~」と思い出し心を落ち着かせる。ゲロゲロパワー。

数週間で体重-7kg。ありがたいけど嬉しくない。
この頃服用していた吐き気止めの漢方薬がいまだに大量に残っているのだが、パッケージを見ただけで気持ち悪くなる。

悪阻対策としていろいろ試したが、個人的にはyoutubeに自律神経に効く系ヒーリングミュージックと、以前購入していたアロマオイル(Escentsのストレスリリーフ)の効果が大きかった。

妊娠初期に感じたこと。男性が妊娠できたなら、ちゃんとした悪阻の特効薬はとっくに開発されていただろうし、もっと妊婦や子どもに優しい社会になってただろうな。

字が弱々しく絶望感溢れる日記


悪阻が比較的マシになって食欲が戻ってきた。とはいえ吐くのが怖くて無難なものしか食べる気がしない。
冷たい麺が食べたいけれど冬なので売っていない。自炊できる程体調は良くない。サラダ麺とサンドイッチが定番になった。

ベッドで横になりながら美味しそうなご飯の写真を見つけ、いつか行くぞとGoogleマップでピンを打ちまくる。

ある日、なんだかいけそうな気がする!となり宅配ピザを頼む。食べられた。感動。美味しく食べられた。ジャンクは偉大!!!
悪阻がマシになった時に食べたサンドイッチとこのピザの美味しさは一生忘れないかもしれないな。

ケツを労わる

悪阻が終わり、次は便秘と痔に悩まされた。
元々、定期的に痔になることがあったのでまぁそこまで…と思っていたが甘かった。
過去最大に自分のケツと向き合った。
専門医に診てもらうも飲み薬はまだ飲めないし、ということでケツ穴注入タイプの薬とマグミットを処方してもらう。
人生初のケツ穴注入タイプの薬、一番苦手な薬に決定。ちゃんと注入できているのかよくわからないまま使いまくった。
努力を重ね、するっとスムーズに普通の便が排出された時の感動よ。健康なケツのありがたさ。ケツの事故はもう二度と味わいたくない。ヨーグルトfeat.きな粉とバナナが欠かせなくなった。
さくらももこ著『そういうふうにできている』に妊娠中の便秘について書かれているのだが、"わかる"の連発。

平穏だと思っていた中期

妊娠中期はマイナートラブルもなく平和に過ごした。
腹の中でちゃんとヒトが生きとるんか?と不思議な気持ち。〇週の壁をクリアしていく度にホッとする。
ライブ(オトダマ)に行ったり野球観戦をしたり引越ししたり結婚式に参列したりユニバに行ったり。ユニバは9.5割アトラクションに乗れないけれど、それでも楽しかった。

健診に行くと、ドクターに逆子になってるねと言われた。寝る方向を調整してとアドバイスを受ける。
アドバイス通りの方向を向き寝続け、再度健診へ行くと横位になってるとのこと。横位!横向き!
確かに寝始めは横を向いていたはずが、起きると仰向けになっていることが多かった。
無痛分娩の予定だが、健康に安全に生まれてきてくれたらもう何でもいいわ状態。

30週に入った頃、夫の祖母が亡くなった。何の予兆もなく突然の事だった。もう少しでひ孫の顔を見せることができたのにととにかく悔しかった。
"妊婦は葬儀に出てはいけない"と古くから言い伝えがある。
悪いものが子どもに憑くからダメらしい。スピリチュアル!!よくよく調べると、昔は焼き場の衛生面がよくなかったことや、お茶出しなどやることが多い中妊婦に気を遣わせないようにという思いでできた言い伝えとのこと。
義母に相談すると、私がいいなら出席してね、でも無理は絶対しないで。と。
少人数の家族葬でそこまで気を遣うこともなさそうだったので出席させてもらった。
葬儀場のスタッフさんがクッションやひざ掛けを持ってきてくれたり、待ち時間に休憩できる場所を用意してくれたりでとてもありがたかった。
まさか生と死をこれだけ身近に体験するとは。

想定外だらけの終盤

32週頃、実家へ帰る。
里帰り出産がしたかった訳ではなく、産みたかった病院が実家の近くにあるというパターン。
出産=死のリスクだと子どもの頃から考えていたので、プロ中のプロにお願いしたかった。望むのは365日24時間無痛分娩が可能な環境。それを考えるとここしかない!!という病院がたまたま実家に近かった。
健診での手厚さに驚いた。出産に消極的すぎた私でもここでならなんとかなる。謎の自信が湧いた。

それとは逆にひっさびさの実家暮らしはかなりキツかった。月1回数時間顔を見せに帰るだけでは気付けなかったあらゆる歪みがストレス!とにかくストレス!家にいるより動いて過ごした。里帰り出産のイメージからかけ離れた生活!!ハード!!この調子で産後どうなっちゃうの…と泣いたりした。メンタル〜。

子、横位から動かず。無痛分娩希望だったので、外回転術をするか選択を迫られた。と同時に帝王切開の手術日程を選ぶことになった。「手術日ということは誕生日だからね」とドクターに言われ、自分が出産することをやっと実感。

悩んだ挙句、結局外回転術はしないことにした。回らない可能性もあるし、何なら帝王切開のメリットを調べれば調べるほど経膣分娩よりいいのでは…?と思えた。

やることはすべてやったが子、頭が下にこず。何なら最後の健診にて発育曲線平均値超えのbigbabyになっていることが判明。今までアベレージを保っていたのに!何で!ウォーキングや鬼のように家事もしているのに…実家での食事が怪しい。無難に血糖値の検査をしてもらうも問題なし。安心。そうなればやっぱり帝王切開が一番良い気がしてきた。

腹の中でくるくる回って遊んでいたのに、最後に巨大化して動けなくなった我が子を考えると、おっちょこちょいなのかと面白くなる。愛おしい。

入院の説明を受け、一番気になっていたことを質問する。「素の牛乳が飲めないんですが、何か持ってきてもいいですか?ミロとか…」
我ながら情けない瞬間だった。こんな人間が親になれるのだろうか。ちなみに持込は不可だった。

臨月は毎日汗だくだった。真夏。いくら冷房が効いていようがTシャツがびしゃびしゃ。体のいろんなところが苦しい。内臓が押される感覚がわかる。終盤は中から肛門が押される感じが気持ち悪くて驚いた。恐れていた後期つわりがなかったので、それだけで他はどうなってもいいよ状態。

入院1週間前は新型コロナに絶対感染しないぞとピリピリ。外部との接触を極力控えた。ここで感染したら1週間入院延期!怖すぎ!体がしんどいし予定通り産ませて!最後の最後にどえらいプレッシャー。

ライジングサンでのナンバーガールの解散発表にうへぇーとなったり、急遽出演し生中継を配信した藤井風のライブを見てうぅーとなったり。あと数日で入院というのにその辺りは相変わらずな過ごし方をした。

入院予定日がやってきた。無事入院!
人生初の入院!

続編は書けそうなら書こかな。


…LLサイズ人間だから、服を着ていると妊婦感がなかったのが今思い返せば切ないわね。


あってよかったもの

Escents ストレスリリーフアロマブレンド
つわりの救世主。妊娠前に購入していた自分に大拍手。

mofua イブル マルチクッション
抱き枕にしたり足の浮腫みが酷かった時に足置きにしたり。

ヴェリタスブロイ
ノンアルビアはこれ一択。妊娠前は禁酒できるか心配だったけど、全く酒を飲みたいとは思えなかった。元々酒が好きというよりはアテが好き。たまにノンアルを飲むとなればヴェリタスブロイ。安い美味い。妊娠中の飲酒はあきまへんでぇ。

くら寿司
加熱している寿司の充実感、サイドメニューの満足感。寿司欲を満たす!!天ぷら寿司のありがたさよ。あとポテトが美味すぎて神。

エアリズム前あきブラ
とにかく身体が苦しい終盤に助けられた。困ったらユニクロ。アンダーが大きめなのか全く苦しくないし、エアリズム素材で汗さらさら。

日記
縛りすぎない。書ける時だけ書くのスタイル。今になり読み返すと自分を褒めてあげたくなる。


図書館を利用しまくった。選んだ妊娠出産エッセイは全て当たり。上記にも書いたがさくらももこ、山崎ナヲコーラ、川上未映子、犬山紙子、松田青子。どれも世間的ステレオタイプ妊婦母親像を壊してくれるもので痛快。
そしてジェーン・スーの間違いなさを噛み締めた。
欲を満たすために旅行の本も読んだなぁ。
あとamazonで課金いらずのものをDLして色々読んだ。全然使っていなかったkindleをフル活用。寝れなくてしんどい時に読むと高確率で寝落ちできたので助かった。

ラジオ
AM、FM、ポッドキャスト。四六時中聞いていたが特にハマったのは、AMはABCラジオのウラのウラまで浦川です。元々浦川アナ大好き人間なのだが、ラジオをやっているとは知らなかった。懐かしのミューパラのコーナーがあるのには感動して泣きそうになった。死にかけてたけど。真面目な政治の話からゲスい下ネタまでどれも面白い。ためになる。
FMはCOCOLOのMARK'E MUSIC MODE。「やっぱりマーキーは凄い!」その一言に尽きる。レジェンド。チョイスする音楽もちょうどいいしあの独特なノリがこちら側の身体にも沁みついているから…。浦川アナにマーキーさんて、10代の頃から好みが変わっていない自分が恐ろしい。
ポッドキャストはOVER THE SUN。パーソナリティふたりの掛け合いが楽しく、優しい。聞いていて気持ちが軽くなったり熱くなったり。悪阻で死にかけてヒトではない何かになりそうだった私をヒトに戻してくれた。


そういえば語学の勉強しようとしてたのに全くしなかったな…。

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