質問紙法では無意識の部分が反映されない?(いやされる)

前回は質問紙法の回答が歪曲されやすいと一概には言えないぞ、というお話でした。今回は、質問紙法では無意識の部分が反映されないというのは本当か?というお話です。わりとロジカルな話なので、こまめに見出しをつけますね。

投影法は「刺激」と「反応」の積み重ねである

一般的に投影法は無意識の部分が反映される、と言われています。まさに名は体を表すというとおり「投影」されるわけです。もう少し深く考えると、あるいは初歩の初歩に戻って考えると、投影法性格検査は常に「刺激」と「反応」の押収です。
例えばロールシャッハテストでは、例の有名な図版が「刺激」であり言葉で得られる答えが「反応」です。SCTでは文の最初のワンフレーズが「刺激」でありその後に受検者が書き込む文章が「反応」です。P-Fスタディは吹き出しつきの図版が「刺激」であり吹き出しに受検者が書き込む文章が「反応」です。

実は質問紙法も「刺激」と「反応」の積み重ねである

ここで多くの心理検査実施者が忘れているあるいはそもそも認識していないことを述べたいと思います。それは質問紙法も「刺激」と「反応」の積み重ねであるということです。
質問紙法では質問項目を提示してそれに選択肢(2件方-5件法ぐらい)で回答してもらいます。すなわち質問項目が「刺激」であり選択肢から選ぶ回答が「反応」です。つまり構成は投影法と全く同じなのです。

質問紙法は直接言葉で聞いているから投影法ではないのでは?という疑問

構成が同じだからと言って直接言葉で聞いていたら投影法ではないですよね。この疑問は至極当然です。例えば、うつ病の尺度(SDS,CES-D)はうつ病の症状を尋ね、依存症の尺度(こちらをご参照ください)は依存症の症状を尋ね、摂食障害の尺度(EAT)は摂食障害の症状を尋ねます。直接症状を尋ねているのだから投影法ではないのでは?そのとおりです。これらの短い尺度は、短いがゆえに"遊び"がなく直接測定したいものの周辺症状を尋ねるので、投影法とはとても言えないでしょう。

MMPIは短い他の質問紙法とはちょっと違うぞ

ところが古い方のMMPIにはこんな質問項目(改変済)があります。
「あなたは神の御業を信じますか?」
この質問項目は宗教のことを聞いているのではと問題になったものですが(もう1回言いますが改変済)、第2尺度すなわち抑うつを見る尺度の採点項目です。宗教観を尋ねたいわけではありません。当たり前ですが。
またMMPIでは質問項目と各尺度が一対一対応ではなく、複雑に絡み合っており、何を質問しようとしているかがわかりにくいです。MMPI-3なんか実施者だっていちいちマニュアルを見ないとわからないぐらいです。
このように質問項目と紐づけられた尺度に関連性が見いだせない場合、質問紙法でありながら投影法的要素も含むと言えます。

MMPIは無意識の部分も反映しうる

こういった投影法的要素からMMPIは無意識の部分を反映しうる検査と言えます。多様な尺度が準備されているMMPI-3ではさらにその傾向は強まり、どこに障害となっている事柄の心理的原因があるのかを深く検証することができるようになっていると感じています。そして本人たちも気づいていなかった無意識の部分を検証することで、問題解決に結びつくでしょう。一応他施設の参考記事を貼っておきますね。https://www.satocounselingroom.com/%E5%BF%83%E7%90%86%E6%A4%9C%E6%9F%BB/mmpi-3/mmpi-3%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E4%BE%8B/

今回のまとめ

  • 投影法と同じく質問紙法もまた「刺激」と「反応」の積み重ね

  • MMPIは何を尋ねているのかわかりにくく構成されており、その分投影法的である

  • MMPIは無意識の部分も投影されうる質問紙法である


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