魔法詠唱の覚書

魔法詠唱の三大要項

魔法詠唱を構築する三大要項について簡易に記載する。
魔法詠唱を発現させる上で重要になるのは
ターゲット、リソース、アンプリファイアである。

ターゲット

ターゲットとは平たく言えば『詠唱した魔法が、どの対象に、どの程度の規模で、どのように作用するか』である。
術者が自らの魔法を磨き上げるには、ターゲットの理解が最優先課題となる。
魔法のターゲットを理解し、より有利に立ち回れる状況・環境を選択することができれば
素養や才能の差を埋める、あるいは覆すことができるかもしれない。

詳細は別項に譲るが、ごく一部の一握りの天才を除き、魔法そのものの強さには原則それほど大きな差は生まれない。
どの魔法をどのタイミングでどう使うか、魔術師たちの機転が勝敗と明暗を分ける。

リソース

リソースとは『(その)魔法のエネルギーを供給している要素』である。
例えば、炎の魔法であれば、空気が乾燥した砂地ではリソースが増大するが
水や氷の魔法であれば空気が乾燥した砂地ではリソースが減少する。
リソースの多寡は効能の強度に直結する。
なお、リソースとは単なる環境や状況だけを指し示す言葉ではない。
例えば、同属性の魔法を使う場合、リソースは甲乙で奪い合いとなり
結果として双方の火力と継戦能力は低下する。

逆に、対立する属性の魔法を使う場合、その場に存在する
リソースは増減し、場の優位性がどちらかに傾く減少が多々発生する。

簡単な例を挙げると、なんら特徴のない空間で、水の魔法が発動した結果
あたり一面が水浸しになったとする。
この際、後発する炎の魔法のリソースは減少する、という具合である。

属性には同一や対立だけでなく
一方的に有利、一方的に不利な関係もある。
この場合のリソースは劇的な増減、あるいは逆転を引き起こす。
だからこそ魔法使いにとってはターゲットの理解が最重要課題になり
ついでリソースの管理と把握が要諦となる。

アンプリファイア

アンプリファイアは詠唱した魔法の効能を増幅する要因のことである。
魔法は、法文詠唱によるセーフティー・ロック解除を経て
術式名を強く発することでトリガーされるが
アンプリファイアはこの法文詠唱にも術式名呼称にも関連性を持たない独自の要素である。

魔法ごとに要素は異なるが、往々にして痛み、怒り、屈辱、悲しみなど
主に術者や被術者のフィジカル・メンタルに関与する要素が多い。

アンプリファイアの特徴に、術者がアンプリファイアの要因を認知すると
増幅係数が小さくなるというものがある。

「何がその魔法を強化しているか」を術者側が認識してしまうと
威力・効能の振れ幅が小さくなる。
これが知識が少なく経験が浅い魔法使いほど
強烈なラッキーヒットを生み出しやすい理由である。

魔法の監視と管理

全ての魔法詠唱は行政によって監視・管理されている。
発現するエネルギーの規模や対象が大きいものほどマークされる傾向にある。

これは公共の福祉を損なわぬための取り組みであり
一個人が所有・運用するのには不適格と判断された場合は
行政側へ接収され、これに従わない場合は討伐対象に指定される。

強力な魔法を有する術者ほど政治的な束縛を受けやすく
極端な危険性を有する魔法はすぐに歴史の裏側に取り込まれてしまうだろう。

魔法詠唱のリスクについて

魔法詠唱は場のリソースを背景に詠唱、発現されるが
術者の心身に係るコストはゼロではない。

短期的なリスクでは、精神の錯乱と肉体の摩耗が起こりうる。
長期的なリスクでは、人間性の消滅と実体の変容が危惧される。

これは詠唱する魔法の強度や規模と比例関係にあり
強力で強大な魔法を使う術師ほど短命の傾向にある。

特に強力な魔法を継続的に詠唱した場合は
実体の変容が進み、いわゆる『人外』と呼称される化身にその身を落とす。

世の人外のほとんどは優れた術師たちの慣れ果てである。

前述された『魔法そのものの強度に大きな差が生まれにくい理由』は
この魔法の見えざる手によって間引きが自然発生するためである。

魔法詠唱の補助となる要素

魔法詠唱におけるリスクを減らすために以下の取り組みが推奨されている。

補助媒体の活用


杖、指輪、タリスマン、護符、チャームなど
何かしらの補助媒体を術式詠唱に組み込むことで
術者本人の心身に及ぶ影響を軽減させることが可能であることが判明している。

ただし、補助媒体は何でも良いというわけではなく
術者がその媒体に対して高い価値を認識しているものほど軽減効果が期待できる。
主に形見や遺品などが選択されることが多いが、
特別な縁故を持たぬ者のために、市販される補助媒体には
価値を付与するために法外な値段が付けられている。

しかしこれらの補助媒体は魔法詠唱を繰り返すことによっていずれ消滅してしまう。

破損や劣化ではなく、現世から永遠に消滅するため再生はできない。
そのため、補助媒体は複数所有することが望ましいとされる。
なお、補助媒体は無機物でなくても良い。

一例を挙げると、今をときめく大人気Vtuber五月七日の空 氏は
自らのリスナーを補助媒体として採用している。
これが彼女の無尽蔵に近い魔力の正体である。

分割詠唱


一つの魔法術式を二人以上で詠唱する行為を分割詠唱と呼ぶ。
分割詠唱のメリットは術者の心身への負担を術者間で分散できる点にある。

一方で、分割詠唱のデメリットは術者同士の相性に効能が影響されること、アンプリファイアの要素が増えること、
詠唱によるセーフティー・ロック解除にタイムラグが発生することなど、概して魔法の効能の振れ幅が大きくなる点にある。
相性が良く、近しい資質を持ち、十分に訓練された者たちの分割詠唱は大きな脅威となる。

なお、二つ以上の魔法術式を二人以上で詠唱する行為は合体詠唱と呼ぶ。

魔法の素養と適性

魔法詠唱の素養と適性の有無は存在するとされるが
因果関係や法則性は未だ明らかにされていない。

そのため、現時点での情報を断片的に記す。

・魔法詠唱の素養はほぼ全ての人類が潜在的に持ち合わせている可能性が高い。
・素養が開花、発露するかどうかは後天的経験によるものが大きいと考えられる。
・概ね、筋肉量・骨量と魔力量は反比例の傾向にある。
・極めて高い魔法適性を有した者たちの多くに循環器または血管系の先天的な病変があった。


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