輪廻転生 影鷹物語 ② 稲倉魂命
「さて、今宵の宿はどうするかな」
夕暮れ時を迎えて足早に去って行く、町の人達を見ながら呟いた。
「どこかで宿を取ることができればいいが・・・・どうもそうはいかぬらしいな」
街道筋にある街のせいか行き交う人は多いが、その街道筋を利用する旅人に一夜の宿を提供することを生業としている商家は意外なほど少ない。
そのどれも既に一夜の宿を求める旅人達で賑わっていた。
こうなると到底どこかに宿泊をすることはまずできないと考えるのが普通だった。
『もし、そこの方』
『なんでしょうか?』
声のした方に振り返ると、今にも崩れ落ちそうな小さな稲荷社があった。
『もしよろしければ今宵は我が庵に来てはいかがでしょうか?』
『それはありがたい。
どちらに行けばよろしいかな?』
『ご案内致しましょう』
言うなり白い狐がするりと立った。
絹糸のように白く、とても美しい狐だった。
目は赤く輝いていて、とても高い知性がそこには備わっているのが見て取れた。
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