肥満の記憶が自然免疫・神経性炎症を開始加齢黄斑変性症へ影響をもたらす


エピジェネティックな変化が、ステアリン酸:steric acidなどの脂肪酸が脂肪常在マクロファージを炎症誘発性表現型に変化させ、加齢期にも保持され肥満期の影響が残存する・・・という悲しいお話


Past history of obesity triggers persistent epigenetic changes in innate immunity and exacerbates neuroinflammation
SCIENCE 5 Jan 2023 Vol 379, Issue 6627 pp. 45-62
DOI: 10.1126/science.abj8894
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj8894

肥満の後に残る免疫の変化
マウスに高脂肪食による肥満を過去に経験すると、体重が減少し代謝が正常化した後でも自然免疫に持続的な変化が生じる。Hataらは、このような食事誘発性マウスの肥満が解消された後も、炎症反応に機能する遺伝子の発現増加に関連したマクロファージのクロマチンのエピジェネティックな変化が持続することを見出した(Mangum and GallagherによるPerspectiveを参照されたい)。脂肪組織や骨髄を移植した実験では、骨髄細胞の変化が、実験的に誘発された目の傷害に対する炎症反応を悪化させることに関与していることが示された。もし同様のプロセスがヒトで起こるなら、著者らは、そのような変化が、肥満に関連する加齢黄斑変性症の素因に寄与する可能性を提唱している。

【要旨】
加齢黄斑変性症は、一般的な神経炎症性疾患であり、肥満などの遺伝的および環境的要因によって引き起こされる失明の主要な原因である。加齢に伴う疾患では、修正可能な因子が生涯にわたって複合的に作用する可能性がある。我々は、人生の早い時期に食事によって誘発された肥満が、自然免疫系の持続的なリプログラミングを引き起こし、代謝異常が正常化した後も長く続くことを報告。
ステアリン酸はToll-like receptor 4 (TLR4)を介して作用し、クロマチンランドスケープをリモデルし、activator protein-1 (AP-1) の結合部位のアクセス性を選択的に高める。
骨髄系細胞では酸化的リン酸化が低下し解糖に移行し、最終的に炎症性サイトカインの転写、病的な網膜血管新生の悪化、視覚機能の喪失に伴う神経細胞変性につながる。このように、過去の肥満歴は、単核食細胞を再プログラムし、神経炎を引き起こす素因となる。


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