3ヵ月以上続く痛みに対する抗うつ薬の長期的な有効性や安全性を裏付ける確固たるエビデンスはない


"The average length of RCTs was 10 weeks"というChochrane記載からタイトルになったのだろう

サインバルタのみが疼痛へのエビデンスあり、今後、milnacipranに関して期待されるとのことと、エビデンスとしてはまだまだ不十分で、効果は中等度で、長期効果に関しては不明

Limited Evidence Backs Antidepressant Use for Managing Chronic Pain
Emily Harris
JAMA. Published online May 24, 2023. doi:10.1001/jama.2023.9155
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2805534

英国のNational Institute for Health and Care Excellenceなどのガイドラインでは、慢性疼痛患者の治療に抗うつ薬を使用することが推奨されています。しかし、3ヵ月以上続く痛みに対する抗うつ薬の長期的な有効性や安全性を裏付ける確固たるエビデンスはない
研究者らは、25の抗うつ薬の結果を検討した。その結果、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチンだけが、患者の痛みの軽減と身体機能の改善に中程度の効果があり、標準より多いデュロキセチンの服用による明らかな利益はなかった。同じくSNRIであるmilnacipranについてもエビデンスは有望であり、他の抗うつ薬については不確実であったと、研究者らはCochrane Database of Systematic Reviewsに報告した。



Birkinshaw, Hollie, Claire M Friedrich, Peter Cole, Christopher Eccleston, Marc Serfaty, Gavin Stewart, Simon White, R Andrew Moore, David Phillippo, and Tamar Pincus. “Antidepressants for Pain Management in Adults with Chronic Pain: A Network Meta-Analysis.” Edited by Cochrane Pain, Palliative and Supportive Care Group. Cochrane Database of Systematic Reviews 2023, no. 5 (May 10, 2023). https://doi.org/10.1002/14651858.CD014682.pub2.

背景

  • 成人における慢性痛は一般的であり、身体能力、健康状態、生活の質に悪影響を及ぼすことが多い。

  • 以前のレビューでは、特定の抗うつ薬が痛みを軽減し、一部の慢性痛症状に対して患者の全体的な改善印象に対する効果があることが示された。

  • しかし、すべての慢性痛症状に対して全ての抗うつ薬を調査したネットワークメタ分析(NMA)はまだ存在しない。

目的

  • 頭痛を除く慢性痛を持つ成人に対する抗うつ薬の比較的な有効性と安全性を評価する。

調査方法

  • 2022年1月に、慢性痛症状に対する抗うつ薬のランダム化比較試験(RCTs)についてCENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、LILACS、AMEDおよびPsycINFOデータベースと臨床試験登録を検索した。

選定基準

  • 慢性痛に対する抗うつ薬を調査したRCTsを含めた。

  • 比較群がプラセボ、別の薬物、別の抗うつ薬、または異なる用量の同じ抗うつ薬であった場合、その研究を二重盲検とした。

  • 各腕に10人未満の参加者を含むRCTsや追跡期間が2週間未満のRCTsは除外した。

データ収集と分析

  • 2人のレビュー著者が個別にスクリーニング、データ抽出、バイアスのリスクを判断した。

  • 主要な結果は、50%の痛みの軽減、痛みの強度、気分、有害事象だった。

  • 二次的な結果は、30%の痛みの軽減、身体機能、睡眠、生活の質、患者全体印象の変化(PGIC)、重大な有害事象、および退会だった。

主な結果

  • このレビューとNMAは、合計28,664人の参加者を含む176の研究を含めた。

  • デュロキセチンは有効性結果全体で一貫して最高位の抗うつ薬であり、証拠は中程度から高程度だった。

  • デュロキセチンの標準用量は、大部分の結果に対して高用量と同等の効果があった。

  • ミルナシプランはしばしば次に効果的な抗うつ薬としてランク付けされたが、デュロキセチンよりも証拠の確実性は低かった。

  • 慢性痛の他の抗うつ薬の有効性と安全性については、確固たる結論を導くための十分な証拠はなかった。

安全性

  • すべての抗うつ薬に対するすべての安全性結果(有害事象、重篤な有害事象、および退会)に対する証拠は非常に低かった。

  • これらの結果については、NMAから信頼性のある結論を導くことはできない。


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