尿中細胞外小胞検出にて脳腫瘍早期発見

名古屋大学の研究者らは、脳腫瘍の存在を示す尿サンプル中の特定の細胞外小胞を捕捉・検出するために使用できるナノワイヤーアッセイを開発しました。この細胞外小胞は尿中に自然に排泄されるが、これを捕捉して分析する技術はこれまで複雑で、さまざまな装置が必要だった。このオールインワンアッセイは、酸化亜鉛ナノワイヤーでコーティングされたシンプルなウェルプレートを使用し、その表面電荷のために細胞外小胞が引き寄せられるようになっている。そして、蛍光標識した抗体を用いて、各ウェルの腫瘍特異的な細胞外小胞を検出することができる。この技術により、脳腫瘍の早期かつ非侵襲的な発見が可能になり、治療成績の向上に貢献することが期待される。

Chattrairat K, Yasui T, Suzuki S, Natsume A, Nagashima K, Iida M, et al. All-in-One Nanowire Assay System for Capture and Analysis of Extracellular Vesicles from an ex Vivo Brain Tumor Model. ACS Nano. 2023 Feb 14;17(3):2235–44. https://doi.org/10.1021/acsnano.2c08526

細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)は、癌の早期診断のためのバイオマーカーとして有望視されている。細胞外小胞は、核酸やタンパク質などの小胞内だけでなく、膜タンパク質や糖脂質などの小胞外からも重要な生物学的情報を持つ生体物質として広く研究されている。EVを高収率で分離するために、密度、サイズ、免疫親和性に基づく捕捉など様々な方法が開発されているが、分離後のEVの解析には異なる測定系が必要であり、多検体において捕捉から検出までオールインワンで解析できるプラットフォームが望まれている。ナノワイヤーを用いたアプローチは、従来の方法と比較して、表面電荷相互作用によるEVの捕獲に有効な能力を示すことから、ここでは、従来のウェルプレートアッセイを、電荷によるEV捕獲と膜タンパク質のEV解析を可能にするオールインワンのナノワイヤー一体型ウェルプレートアッセイシステム(すなわち、ナノワイヤーアッセイシステム)へとアップグレードを図った。このナノワイヤーアッセイシステムを血管などの腫瘍環境を再現した脳腫瘍オルガノイドのEV解析に適用したところ、腫瘍オルガノイド由来のEVではCD31/CD63の膜タンパク質発現比が1.42倍となり、p値が0.05未満であることが分かった。さらに、膠芽腫患者の尿サンプルでは、この比率が非癌患者の尿サンプルよりも2.25倍高く、同様にp値は0.05未満であった。このように、従来のウェルプレート法とナノワイヤーを用いたEV捕捉法を組み合わせることで、EVを効率的に捕捉できるだけでなく、1つのアッセイシステムで分析できることが実証された。このオールインワンのナノワイヤーアッセイシステムは、EVを介した腫瘍-微小環境のクロストークを解明するための強力なツールになると期待される。

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ChatGPTに聞くシリーズ

細胞外小胞の概念について教えて下さい

細胞外小胞(extracellular vesicles)は、細胞外空間に放出される小さな膜包被の小胞です。細胞膜から形成され、さまざまな細胞種で見られます。細胞外小胞には、細胞外膜小胞(microvesicles)、外泌体(exosomes)など、複数の種類があります。
細胞外小胞は、細胞間相互作用や情報伝達、細胞内外の物質輸送、細胞の状態や機能の調節など、多様な役割を担っています。例えば、外泌体は、細胞内のRNAやタンパク質を含んでおり、外部の細胞に取り込まれることで、情報伝達や細胞機能の制御に関与しています。また、外泌体はがん細胞においても重要な役割を果たしており、がん細胞の転移や増殖に関与することが示唆されています。
近年、細胞外小胞の研究が盛んに行われており、これらが生理・病態においてどのような役割を果たしているのかを解明することが期待されています。

パラクラインやエンドクラインと細胞外小胞の関連性はありますか?

はい、パラクラインとエンドクラインという用語は、細胞外小胞の分泌に関係しています。
パラクラインは、細胞外小胞の分泌物質が隣接する細胞に影響を与える現象を指します。つまり、細胞外小胞が分泌され、その分泌物質が近隣の細胞に作用することによって、細胞間の相互作用や調節が起こります。例えば、がん細胞から分泌される外泌体が周囲の正常細胞に影響を与え、がんの転移や増殖を促進するとされています。
一方、エンドクラインは、細胞外小胞が分泌された細胞自身に作用する現象を指します。つまり、細胞自身が分泌した細胞外小胞が、その細胞自身に作用することで、自己調節や自己制御が起こります。例えば、細胞内のタンパク質やRNAが外泌体として分泌され、その外泌体が再度、細胞自身に取り込まれることで、自己調節が行われるとされています。
細胞外小胞は、細胞間相互作用や調節に関与する重要な役割を果たすことがわかっています。その分泌や受容によって、パラクラインやエンドクラインなどの現象が引き起こされることがあります。


microvesicleの例を教えくてください


microvesicle(マイクロベシクル)は、直径0.1〜1μm程度の細胞外小胞の一種で、細胞膜から放出されるものです。以下に、microvesicleの例をいくつか挙げてみます。
血小板由来microvesicle:血小板が放出するmicrovesicleは、血栓形成や炎症、免疫反応などに関与するとされています。
白血球由来microvesicle:白血球が放出するmicrovesicleには、T細胞やB細胞に関連する分子や細胞間相互作用を調節する分子が含まれることが知られています。
がん細胞由来microvesicle:がん細胞から放出されるmicrovesicleには、がん細胞の転移や増殖を促進するタンパク質やRNAが含まれることが知られています。
神経細胞由来microvesicle:神経細胞から放出されるmicrovesicleには、神経伝達物質や神経細胞の成長・発達に関与する分子が含まれることが知られています。
これらのmicrovesicleは、細胞間相互作用や物質輸送、情報伝達、細胞の状態や機能の制御など、多様な役割を担っています。最近では、これらのmicrovesicleが疾患の発症や進行に関与することが明らかにされ、研究が進められています。

microvesicleの本体はなんですか?

microvesicle(マイクロベシクル)は、細胞膜から放出される細胞外小胞の一種であり、その本体は細胞膜の一部です。
具体的には、細胞膜に膜融合が起こり、そこから分泌されることで形成されます。microvesicleには、細胞膜に存在する脂質分子や膜タンパク質が豊富に含まれており、その分子構成は、細胞の種類や状態によって異なります。
細胞膜から放出されるという点で、microvesicleは、エキソソーム(exosome)と似た性質を持ちます。しかし、microvesicleとエキソソームは、形成されるメカニズムや分子構成に違いがあります。エキソソームは、リソソームを起源とする小胞で、その本体は膜内部に含まれる脂質分子やタンパク質です。
細胞外小胞の種類によって、その形成・分泌機構や分子構成が異なるため、それらが担う機能や役割も異なってきます。しかし、microvesicleやエキソソームなどの細胞外小胞は、細胞間相互作用や情報伝達、物質輸送、細胞の状態や機能の制御など、多様な役割を持っています。

ナノワイヤーアッセイによって細胞外小胞を検出する方法を教えて下さい

ナノワイヤーアッセイは、高感度な生物センシング技術の一種であり、非常に小さいサイズのナノワイヤーを用いて、生体分子や細胞表面の検出を行うことができます。以下は、ナノワイヤーアッセイによる細胞外小胞の検出方法の一例です。
1)ナノワイヤーの準備
ナノワイヤーを作製し、表面を特定の分子(例えば、抗体やリガンド)で機能化します。細胞外小胞の表面には、特定のタンパク質や糖鎖が存在するため、これらを標的とした抗体やリガンドを用いることが一般的です。
2)細胞外小胞の回収

細胞外小胞を、細胞培養上清や血漿などの液体中から回収します。回収には、超遠心分離やフィルタリングなどの方法が用いられます。

3)ナノワイヤーアッセイの実施

機能化されたナノワイヤーを、細胞外小胞が存在する液体に加え、一定時間インキュベーションします。このとき、ナノワイヤー表面の抗体やリガンドが、細胞外小胞の表面に存在する標的分子に結合します。

4)評価

ナノワイヤー表面に結合した細胞外小胞を、検出する方法によって評価します。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)や荷電素子(CMOS)などの検出方法が用いられます。これらの方法によって、ナノワイヤー表面に結合した細胞外小胞の数や種類を定量的に測定することができます。

以上が、ナノワイヤーアッセイによる細胞外小胞の検出方法の一例です。この技術を用いることで、細胞外小胞の多様な分子構成や機能、疾患との関連性などを解析することが期待されています。




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