見出し画像

0232 - 出会うまでの助走期間

t= 7 d= 3

そういえば、今は「出会うまでの助走期間」を味わう機会ってほとんど無くなったなーと、ふと思った。

ドラマーとして音楽活動を初めて四半世紀ほど経過した。

初めてバンドを組んだのは中学生の時。西暦でいうと1990年代に突入してまも無い頃。同級生のお兄さんがバンドを組んでいて、その同級生の家に遊びに行くと、ギター、ベース、ドラムといった楽器が揃っていた。見よう見まねで楽器に触れながらBOφWYやTHE BLUE HEARTSの曲をコピーしているうちに、バンド演奏の楽しさにハマったのだ。

当時、巷ではイカ天などを含めたバンドブーム。ギターやドラムといった楽器が演奏できる人はチラホラ存在していたが、地域にいる学生全体からすればほんの一握り。音楽の趣味が合うとも限らないため、バンドをしてカタチになるだけの人員を揃えるのは至難の業だった。

で、そんな「気の合うメンバーが欲しいけど、自分のツテでは揃えられない」時にどうしていたかというと、バンド系の音楽雑誌に載っていたメンバー募集のページ、通称「メンボ」にハガキを送っていたのだ。

「ボーカル、ベース募集!当方15歳のギターとドラム。ボウイ・氷室京介・布袋寅泰みたいなロックバンド組もうぜ!練習は磐田や掛川が希望!」

といった文言+住所と名前を送る。すると翌々月辺りに発売される号に掲載される。しばらくすると手紙が数通やってきて「メンボ見ました!ボーカルやりたいです!」のようなメッセージと共に連絡先が書いてある。ピンと来た人に電話をかけてアポを取り、後日ようやくご対面。

メンバー欲しいねと思ってから実際に会うまで当たり前のように2〜3ヶ月を要していたという状況も感慨深いが、この「アポを取ってから実際に会うまでの1〜2週間」で味わうドキドキ・ソワソワ感がたまらなかった。

手紙の返信でもらった文字の感じや電話で話した声の感じなどから、勝手にアレコレ想像(妄想)する。見た目はカッコイイかな。スタイルはいいのかな。背は高いのかな。ボーカル希望だけど歌は上手いのかな。

実際に会った時に、想像通りでホッとすることもあれば、良い意味でギャップがあって驚いたことも。もちろん、悪い意味でギャップがあって正直ガッカリしたことも。

こういった感覚、それからも(大人になってからも)しばらくは味わえていたように思う。

今は、何かのきっかけで知った人でも、SNSのプロフィール画像などで見た目くらいは事前に把握できる機会が多い。また、スマホ=気軽に撮影できるので、会う約束をした際に目印として顔写真を送りあうことも容易だ。更に、実際に会う前から、手軽にビデオ通話などで顔を見ながら話すこともできる。

少なくとも「電話やメールでのみやり取りした人と、実際に会うまで、見た目の情報が全く入って来ないまま数週間過ごす」という「出会うまでの助走期間」を味わう機会はほとんど無くなった。

それだけ便利で安心な時代に変わったということだろう。それはそれで大歓迎だが、想像(妄想)して楽しむ機会が減ってしまった事実には、少しばかり寂しさを感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?