見出し画像

0093 - 夜中の田んぼ道

t= 8 d= 2

住んでいる街(静岡県袋井市:浅羽地区)には田んぼが多い。

街の中央部には南北に貫く大型農道があり、その両サイドは特に田んぼ率が高い。ちなみに、その大型農道の途中には『PADDY』というショッピングセンターがあるのだが、PADDYは日本語に訳すと『水田』『稲田』となる。すなわち田んぼ。そのくらい田んぼが多い。

田んぼエリアには住宅がほとんど建っておらず街灯も無いため、夜になると暗い。先日、平日の夜中1時半頃に田んぼ道を自転車で通ることがあったのだが、それはそれは尋常じゃない暗さだった。

田んぼエリアを通り抜ける距離は2km弱。自転車なら所用時間7〜8分ほどだろうか。さっさと駆け抜けたかったが、通り慣れていない道で更にライトによる視界は数メートルのみ。突然カーブなどあったら対応できない。ゆっくり慎重に走るしかなかった。

夜中の田んぼ道。静寂な闇。視界も悪い。真面目な話、ちょっと怖かった。

東京暮らしが長かったこともあり『闇』に慣れていない。地元では車移動が基本なので夜に風を感じながら自転車で走る機会も少ない。更に平日の夜中なので人も車も全く通らない。暗い(見えない)、静か(聞こえない)、そして生身(風に触れる)という3要素の組み合わさった状況が、自分にとっては非日常すぎた。

怖い気持ちを少しでも軽減させたかったのだろう。無意識に歌を口ずさみ出した自分。その咄嗟に口から出た曲が『おしりかじり虫』という悲しい謎展開。

ただ、この謎展開が功を奏したようで、恐怖心からは見事に解放された。暗いからなんだ。静かだからなんだ。

気持ちに余裕ができると視界が一気に広がる。改めて周りを見回すとそこまで深い闇ではない。暗さに目が慣れてきただけかもしれないが、どこが道で、どこが田んぼなのか、うっすら何となくのレベルだが把握できる。

ふと頭上を見上げたら、それはそれは見事な星空が目に飛び込んできた。

静かな環境、何も遮るものも無くクッキリと見える星空。まさに『吸い込まれるような』パノラマビュー。恐怖心に打ち勝った先に、想像以上の豪華なご褒美が待っていた。

たまには良いね、夜中の田んぼ道。そして、ありがとう、おしりかじり虫。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?