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いきなりですがトヨタが富士の裾野に未来都市を創るといったニュースが今年の1月頃に話題になったことを覚えていらっしゃいますでしょうか。

アメリカのラスベガスで毎年開催されている世界最大級の家電・技術見本市「CES2020」でトヨタ自動車の豊田社長が高らかに発表したのが、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクトとして先端都市を創るというものでした。

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■トヨタはなぜ自動車メーカーなのに都市を創るのか?

トヨタはクルマメーカーでトヨタホームなどの子会社では家も作っていますが、不動産会社でもないトヨタがなぜ急に未来都市を創ると言い出したのか?

本件の詳細は、https://toyokeizai.net/articles/-/323669 などご参照頂ければと思いますが、端的に言うとこちらにかかれた中でも特に

「IOT、自動運転など自動車業界が100年に1度の大変革期にあり、次世代自動車産業における競争のカギが、ハードからOSやサービスなどに変化し、テ クノロジー企業などに覇権を握られる可能性からの危機感」

が一番大きいかと思います。

自動運転分野でgoogle、Appleなどが台頭していきていることに加え、既に車は所有から利用へと大きく消費者ニーズも変化してきている。将来は、自動車は都市機能のモビリティ分野の一部(ソフトウェア)と今後なっていくと考えることが順当。

そんな未来が予測されるなかで、都市を自ら創りプラットフォーマーとならないと、トヨタであってもとても勝ち残ってはいけないとの危機感からの大胆な戦略かと想像できます。

そして、トヨタには自動車関連のみならず、不動産、IT企業含めて多様なグループ企業があり、途上国の国家予算に匹敵するキャッシュを保有するなどの強みがあるからこその戦略でもありますよね。

つまり、戦略とは、

①トヨタが自動車業界の未来を予測したように、まず未来を予測、洞察すること

②未来洞察(仮説)を踏まえて強み(トヨタ:リーダーポジション、豊富なキャッシュ、住宅、IT含めた多彩なグループ企業の存在、カイゼン等)を活かす

というシンプルな2点から生まれています。今回のトヨタの事例のように戦略とは未来洞察(仮説)をし、その予測を踏まえて自社の強みを活かして重点的に取り組むこと(戦略)を決めること。とてもシンプルです。

そして戦略実行をしつつ、継続的に将来の変化を敏感に探知し、検証結果も踏まえて走りながら判断を変えていく「変幻自在」な対応が成否を分けるのです。

■では、戦略的な思考は企業だけでよいのか?

トヨタの未来都市を創る戦略について述べましたが、この戦略的な思考は企業だけのものでしょうか。

否。私は、特に今後の個人のキャリア(労働市場)においても同じであり、戦略的行動ができるかが成否を分けると考えます。

過去の所属先での中長期の時間軸で行われる出世競争は終身雇用前提の話でした。終身雇用が崩れ、コロナにより日本型雇用が大きく変化している現状において、企業内ではなく、転職、副業や兼業、起業も含め労働市場が今後より流動性の高い開かれたマーケットになります。まさに「労働市場の自由化」です。

つまり、それは本当の意味でのキャリアにおける「個の競争の時代」の到来を意味します。企業内でのあいつは出世頭だ、出世している役員の派閥だから今後も安泰だ、との企業内の論理は100年時代においては意味をなさないことは皆さんもうお気づきかと思います。

少し道を外れますが、欧米の方から「なぜ日本人は、仕事の話を聞くと会社名をまず言うのだ?」と不思議がられる話はよく聞く話ですが、今後は何をしているのか?と聞かれて所属している会社名ではなく、何の職種か(エンジニア、マーケター、人事、経理等)、自分はどのようなパフォーマンスを提供できるのか、を伝える時代が当たり前になっていくでしょう。

■個人におけるキャリア戦略の策定

話が飛びましたが、トヨタの戦略の話に戻り、個人においてのキャリア戦略に置き換えて考えてみます。当然、個人のキャリアもこれからは組織依存ではなく、主体的に開発しないとならないので「戦略的」に考える必要があります。個人も企業と同じように個人の「キャリア戦略」に必要な物は「①未来洞察」「②強みの把握」です。

まず①未来洞察

このような変化の時代に「戦略」を考えるために何を考えるのか、それはトヨタと同じ「自身のキャリアに関する分野の未来を予測する」ことはMUSTです。

マクロとしての国内/海外労働市場の動向を踏まえて、ミクロである①職種(企業内で提供している機能)×②役割(スタッフorマネジメントorプロフェッショナル)×③業界(世の中の誰の何のニーズを満たしているか)について今後どう変化していくのかを予測することが必要。

「変化が激しい時代だから予測しても意味がない!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、変化が激しいから洞察をする意味があります。

変化が激しくないなら簡単に予測はできるので差別化は困難ですし、予測する意味もありません。しかし、変化が激しいからこそトヨタのように先を予測して仮説を立てて、先手を打てる企業が勝ち残るのが競争の世界。労働市場も同じ、自身が労働市場で競争に勝つためには変化を予測して先手を打つ必要性があります。

②自身の強み

競争に勝つには、自身の強みの把握が不可欠です。個性としての強み、ビジネス経験や知識、社会関係資本(ネットワーク)の棚卸により、自身の強みの可視化は戦略には必要不可欠。

未来予測と自身の強みを踏まえて何に集中すべきかを深く思考し、決めて行動していくことが大事になります。

ただ、大事なのは仮説の中身ではなく、仮説は外れてなんぼ、常に将来に関する情報を集めてその仮説を更新をしていくこと、行動したことも状況に応じて変化をさせていく機動性(ピボット力、アジャイル力)、つまりプロティアン(変幻自在)に対応する力がこの時代には特に求められます。

プロティアン・キャリアの考え方では、キャリアがプロセスであり蓄積すべきもの、なにも転職や副業を推奨する考えではありません。今の会社の仕事に100%打ち込むべきタイミング、時期もあれば、副業をしてみる方が良いタイミングもあります。

戦略実行のために、既存社内キャリア開発、転職、副業、起業、あらゆる選択肢をフラットに並べてあくまで中立的に判断をするものです。

なお、田中研之輔教授の著書「プロティアン」におけるプロティアン・キャリアのモデルでは以下の6つにモデルを分類しております。

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その個人のその方の状況によりどのモデルを選ぶべきかを考えるべきものなのでいまは副業が騒がれているから副業やってみるかでなく、自身のキャリアにとって何のキャリア資本を蓄積すべきなのか、を戦略的に考え、主体的に選ぶことが大事です。

■「プロティアン・キャリア戦略講座」開講

プロティアン・キャリア戦略オンライン講座(1期生)を5月より開講しておりますが、プロティアンの理解を深めたうえで、いままさに受講生が行っていることは日本国内の労働市場の未来洞察をチームで取り組んで頂いております。(以下は第1回プロティアン講義の一コマ)

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外部環境分析では、網羅性をもって考えるために「5フォース分析」と「PEST分析」をMIXさせたフレームワークとシナリオプランニング手法も用いて、役割分担して日本の労働市場の2030年について予測を実施。

次回は、各チームで議論を行います。
ご興味あるかたはぜひこちらを!
https://protean-career.or.jp/license/strategy-lp

■最後に・・・

いろいろと回り道しましたが、最後に整理させて頂きますと、トヨタが未来都市を創るように、戦略は「未来洞察」と「自身の強み」を元に生まれる。

経営戦略の世界では当たり前のにやっている戦略策定を自身に置き換えると体系的に考えていない、そんな方が多いかと思います。

個人のキャリアの世界では、独りよがりの短期的な視点で面接官のイメージや条件などで重要な転職等の意思決定をしがち。

100年時代、VUCA時代といわれてコロナにより大きくキャリア観、働き方が変わるいまだからこそ、各個人がしっかりと100年時代のキャリア戦略の意思決定を誤らないためにも、自身の強みを把握し、未来を予測して戦略的にキャリア開発する。私自身も意識して今後も取り組みたいと思っております。


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