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【番外編】いろいろ噂されたけれど、Spotifyが直接上場を選んだ理由はコレ

直接上場により公開会社となるSpotifyは、去る3月15日にInvestor Dayを開催し、その様子をネット中継しました。英語版ログミーを探したものの見つからず、飛ばし飛ばし見てみたら最も濃い内容は出だしの3分にあり。以下、そのエッセンスです。

"...we’re approaching things a little differently here with our direct listing. For us, going public has never really been for the pomp and circumstances of it all. So you won't see us ringing any bells, or throwing any parties. And despite the enormous respect we have for the New York Stock Exchange in this process, I also won't be on the floor doing any interviews."

カッコいいですね。上場のお祝いと称して見得を切るようなことをするつもりはありませんと、鐘を打ち鳴らしたりパーティを開くなんてもってのほか、取引所での記者インタビューすら受けませんということです。

"And this is because I think the traditional model for taking a company public just isn't a good fit for us. The typical IPO requires a lock-up, and we don't think that's the right thing to do. Our most valuable asset is our people. And we want to treat them fairly, and we want to empower them. And we have allowed shareholders and employees to buy and sell stocks for years. And that shouldn't stop just because our stocks are becoming more widely owned."

さらに、パーティを開かない理由はそれだけじゃないと続きます。既存株主にロックアップを強いる「普通の上場」はフェアじゃない、これまでずっと従業員にもその他の株主にも株の売買を認めてきたのに、単に株主ベースが広がるからといって売買を凍結しなければならないのは間違っていると。Spotifyにはそういう「普通の上場」は似合わないから、お祝いしないとのことです。

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ミュージックに合わせた華々しい登場から1分も経っていませんから雰囲気はワーっとした感じなのですが、冷静に聞くとギョッとさせられるセリフですよね。上場後も株価が上がるなら、別に半年間売れなくてもそこまでの支障はなさそうです。上場株を保有できないVCならいざ知らず、従業員には今後も長らく自社株を持っていてほしいはず。しかも新株発行がないということは、新株主においては公募価格と初値の間で行うサヤ取りがなく、誰しもが場で株を買う訳です。含み益を持つ既存株主と、新たな価格で買う新株主。既存株主のロックアップをこんなに強く否定されると、この半年で売れないことがそんなにヤバいのかという心配が頭をよぎります。

"And since Spotify isn't selling any stock when we go public, we're really entirely focused on the long-term performance on the business. So for us, the most important day isn't our listing day, but it's the day after, and the day after that. And this is when we continue the hard work of helping one million artists to live off of their art."

最後はぱっと聞いただけではよく意味が分からないのですが、今回、上場に際して新株を売らないことでも示されているとおり、Spotifyは長期的な業績に100%フォーカスしています、という感じのことを言っています。これを聞いたときは一瞬ハテナ?と思いました。資金調達することと長期的な業績に注力することって相反するんだっけ。。これ実際どういう意味かというと、長期にフォーカスしてるから短期は知らないよと、そういうことを言っているんですね。この後のプレゼンに繰り返し出てきますが、Spotifyは利益じゃなく売上成長を優先するということを何度も強調しています。それがEVを押し上げるのだとも。プレゼン全体を見ると分かるのですが、ここでの彼らのメッセージは、短期的な業績は期待に沿えないかもしれないけど、新株発行であなたから資金を調達するわけじゃないんだから、欲しい人が既発行株を譲り受けるセカンダリーだけだからそれでいいよねと、そういうことなんですね。

個人的にはプライマリーもセカンダリーも同じ株主だと思いますが、そこを区別しているのが興味深いところです。うちとしてはあなたにお金を出してもらう訳ではないんですよと、そんな意識が垣間見える気がします。

さて、新株発行しないんだからしばらく我慢してねという、投資家に通じるのか通じないのかが大変興味深いメッセージを発したDaniel Ekですが、最後のひとことでまたカッコいいことを言うんですね。このおかげで先ほどのメッセ—ジ、雰囲気的にどうでもよくなっちゃいます。大事なのは上場日ではなくその次の日や次の次の日だと。我々は100万人のアーチストが経済的に自立できる世界を実現するために頑張るんだと。

冒頭と締めくくりにカッコいいことを言うってほんと大事だと思います。正直、前後の「And」とは裏腹に、中段のメッセージはカッコいい部分から完全に独立していますし、最後に彼が言っているのも、「次の日や、次の次の日」ではなく「次の年や、次の次の年」という意味だということには気付きます。言いたいことをちゃんと言いながら、全く場の雰囲気を壊さない。彼はスウェーデン人ですから英語は母国語じゃないと思うのですが、極めて優秀なスピーチライターが付いているんだろうなと感じた次第です。

(以上、https://investors.spotify.com/investor-day-2018/default.aspx より)

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