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関係舎の原案/「夜を通る」

(写真撮影:奥山郁)

イントロダクション

「久し振りに会ったのに、お葬式みたいな暗い顔してどうした?」
棺の中から、それはそれはフツーに起き上がってきた親父は、開口一番そう言った。

「葬式は明日だよ」
と、泣き腫らした顔で俺は冷静にツッコミを入れる。
そしたら親父は困ったような目をして、
「最後くらい笑って送り出してくれよ」って言ったんだ。

蝋燭の火を絶やすな。
話題の花を枯らすな。
叶わないはずだった一家団欒、どうせなら朝まで語り明かそう。
お詫びを、本音を、そしてお別れを。

走馬灯、みんなで見れば寂しくない。

キャスト

A(息子/20代〜30代前半):東京在住。Cから入院中のDの病状については聞かされていたが、仕事や自分の生活(あるいは意地など)で忙しく見舞いに帰れていなかった。

B(婚約者/20代〜30代前半):Aの婚約者。もともと近いうちに両親への挨拶に赴くつもりであったが、Dの急な訃報を受け、予定を前倒す形でAが連れ帰って来た。

C(母/50代以上):Dの死を看取ったあと、知人への連絡や葬儀の手配など、ほとんど一人で休む間もなく立ち回ることとなった。

D(父/50代以上):故人。超自然的な力で一晩だけ蘇り、会話のできる状態となった。棺のある部屋から外へは移動することができない。

内容についての規定

時間は通夜の晩から翌朝にかけての、いわゆる「寝ずの番」の時間帯。

舞台は告別式の準備がなされた葬儀場、またはAの実家の仏間(およびそれらと同じ建物内の別空間も使用してよい)。

実家の場所は東京および関東地方ではなく、移動に最低でも片道3時間を要する距離がある。東京で仕事を終えてから駆けつけたAの帰宅は通夜の席に間に合わなかったため、他の親族と顔を合わせているのはCのみ。

・「仏教の通夜は故人の成仏を祈ることではない。故人との別れに集まった親しき人々が故人の遺体を取り囲み、故人の思い出話を通して語り合う夜のことである」(Wikipedia より)

・悲観的ではなく、あくまでも前向きな『別れ』のための物語であるようにしてください。

・Aが実家に帰ってくるのは少なくとも2年以上ぶりです。

・Aの職業は特に指定はありません。ただし、実家に帰ってくるためにスケジュールの調整や煩雑な手続きなど、フットワークを重くさせる事情があるもののほうが望ましいです。

・Dが「蘇る」瞬間のシーンは必ずしも描かなくて構いませんが、物語内には「蘇る前」の時間のシーンを必ず含めてください。

・劇中の時間経過は一晩以上を超えない(翌日の葬式が始まるより前に必ず終わらせる)ようにしてください。ただし特例として、葬式のシーンを省略し数年後の未来などをエピローグで描くことは可能とします(実際の上演時に応相談)。また、回想で時間を戻すのは何年前でも可能とします。

・Aの兄弟姉妹、または気心の知れた親戚であれば、最大2人まで追加キャストとして登場させても構いません。

上演に際して

上演料(原案買取料)は公演規模に合わせて応相談とします。必ず事前にお問い合わせください。
また、フライヤー・パンフレット等には「原案:辻本直樹(関係舎)」を明記してください。

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