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架空のM-1準決勝に残って欲しかったコンビ5選

はじめに

「文脈」をご存知ない方へ:書くに至った経緯はこちらをご覧ください。

<!-- ここから下はすべてフィクションです -->

システムの虚を突くようなまさかの同点決勝3連戦を経て、ちりめん算用の優勝で幕を閉じた昨年のM-1。今年もプロアマ問わず5000組以上のコンビが出場し、火花を散らしている真っ最中である。最終決戦に進めるのは5000分の9、約0.18%だけという過酷な道のりだ。
それでも準決勝にまで残れれば、敗者復活戦のチャンスが回ってくる。実際、一昨年のM-1では敗者復活から勝ち上がったエイブラハムがそのままチャンピオンの栄冠を手にしている。今年もオーソリティー、大正三色、コモンセンス、ナンシートンネル、湯けむりらを筆頭とする総勢25組の実力者が順調に駒を進めた。
一番悔しいのは準々決勝で敗退した88組だろう。彼らに再挑戦の機会は与えられない(少なくとも今年じゅうは)。そしてテレビ中継があるわけでもないから、どんな人たちがどんなネタをやっていたのか知られないまま「途中で脱落した」という結果だけが残される。
ただし今年は準々決勝の動画配信が公式に存在している。

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さすがに113組すべてをチェックするのは時間的にも集中力の面でも叶わなかったけど、半分くらいは見ることができた。で、その中から5組、勝ち上がれなかったけど面白かったよというコンビを紹介しておきたいと思う。

<!-- ここから先はいよいよフィクションです。くれぐれも真に受けぬよう重ねてお願い申し上げます -->

ガートルード

これまで「スローペース・ローテンションの漫才は不利」とされてきたM-1の不文律が、今年は若干薄まっている気がした。ちりめん算用の優勝による影響が大きいんだろうけど、ガートルードはその逆風をもろに受ける形となっていた。去年までに比べて1.5倍ほどテンポを加速させた、ハイスピードでたたみかけるボケに会場の雰囲気がついて来られなくなってしまっているのが、動画でもありありとわかる。メタゲーム的戦略というか、「決勝に行ける漫才のやり方」を研究し突き詰めてきたであろう2人だけに、この番狂わせは大きな痛手だったに違いない。

むこうみズ

おそらくフリーからの参戦で、いくら検索してみてもプロフィール的なものには全くたどり着けなかった。なので普段は二人とも会社員をしているという本人たちの「つかみ」を信じるしかないのだけど、コピー機の紙詰まりを直すという会社員あるある的な設定からスタートしたのも「どうせ一般人枠でしょ」と油断させる巧妙な罠だったんじゃないかとさえ思ってしまう技巧派のネタだった。もしかしたら元芸人→一度は諦めて就職→再燃、というパターンだったんじゃないかと踏んでいる(誰かご存じの方いらっしゃれば情報提供お待ちしています)。

金鍔

「泳がし漫才」と呼ばれるスタイルで今年プチブレイクを見せた金鍔。以前に別の動画で見たラーメン屋のネタなんかも個人的には好きだったけど今回の部屋探しもそうで、1分近くツッコミ無しで5個も6個も積み重なったボケを、「伸びる!」とか「靴脱げ!」といったわずか数文字の短いワードで一撃のもとに葬り去るのが、落ち物パズルの連鎖のように爽快で心地いい。ただプチブレイクの弊害というべきか、ネタ自体が多くの観客にとって既知のものだったことが敗因だったのかもしれない。まだ結成5年目だし、来年以降はもっと面白くなると信じている。どこの目線から言っているのか。

バーガンディ

気がつけばラストイヤーのバーガンディ。毎回「ハナから優勝する気がない」などと揶揄されながらも自身のスタイルを貫き通したことは賞賛に値するし、去年は敗者復活でギリギリまで健闘していたのも事実。今やれることを全部詰め込んだ漫才だったと個人的には思う。会場に響きわたった「ファクシミリで来いよ!!」の絶叫をぼくらはきっと忘れない。15年間お疲れ様でした(まるで解散するみたいな書き方になってしまった、すみません)。

ネンブツポニー

漫才の構造自体をいじるコンビは今じゃそれほど珍しくない。でも「どつき漫才をやってみたいがパワハラになるからできない」から始まって「人の頭を殴っていい正当な理由」探しに奔走しはじめる構成は念ポならではの視点だし、ボケvsツッコミではなく二人協力体制で笑いの抜け道を模索する姿は漫才というより脱出ゲームのようでもある。「漫才師が相方の頭を叩く」という見慣れたはずの光景が、難解な謎を解き明かしたようなカタルシスとともに訪れるラストには会場から拍手が起こるほどだった。
とはいえ正直、笑いよりも感動が上回ってしまうのはやはり漫才として分が悪い。準決勝進出できなかったこと自体には納得してしまうんだけど、このネタが決勝戦のあの空間でどんな評価を受けることになるのか、ちょっと見てみたかったなとは思うのだった。

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