見出し画像

アフタートーク・スクリプツ (前編)

去る6月20日、トーク・スクリプツVer0.0~10.2の歴代参加者全員(だと一番良かったんだけど皆それぞれに日々忙しいので集まれる人たちだけ)で、合同打ち上げ 兼 顔合わせ 兼 感想戦としての「アフタートーク・スクリプツ」なるものを開催しました。集まったといってもご心配なく、zoom上での出来事です。いつかきっと実体で「劇場版アフタートーク・スクリプツ」もやってやるぞ、という気持ちにはなりましたが。

もともとこの会合自体を配信したり公開する予定はなかったのですが、話を聞けば聞くほど僕がトーク・スクリプツに対して求めていた理想の結果というか、「自身の感覚や経験に引き寄せて解釈が変わる」とか「まるで意図していなかった偶然が画面から発見される」とか「演じていた本人の口から物語がメタ視点で語り直される」といったものがゾロゾロ出てきて、ちょっと自分一人でこの面白さを保有するのは勿体ないんじゃないかという気持ちになり、一部抜粋して公開することに決めました。

本来なら編集した映像で出すのが最も臨場感あって楽しいんでしょうけど、zoom特有の音飛びやノイズがあったり、話題があちらこちらへ行ったり来たりしているのもあって、初見の方にも可能な限りスムーズに流れを把握できるよう文字起こし&再構成を施しています(そしてこの作業が大変だったので公開までに時間がかかってしまいました、すみません)。

* * *

さいとう篤史[Ver0.0]:二人芝居で12本撮ったってことは全部で…24人? 川峰さんだけ2回出てるから23人か。
辻本直樹:全員集まれば24人ですね、僕を含めて。これだけやって横のつながりが全くないのも寂しいなと思って、今日こういう形で集まってもらったんですけど。
さいとう:はじめましての人もいるから一応名乗っとかないと。Ver0.0の「試写会で寝た男」です。
永瀬安美[Ver6.0]:あ、私「タイムカプセル/ブックマーク」の女です。上岡さんはどれに出ていた方ですか?
上岡実来[Ver10.2]:「約束されたB.B.Q.のための序曲」です(笑)
さいとう:これ、作品だけじゃなくて「(画面の)左ですか?右ですか?」って聞かれそうだね。
上岡:バーベキューの右です。

辻本:今日はzoomの画面共有機能を使って今までの作品を見ながら、オーディオコメンタリー的に話せたらいいなと思ってまして。とりあえず最初、Ver0.0からいきましょうか。

Ver0.0(パイロット版) 試写会で寝た男

辻本:やりたかったこととしては、二人の緊張感の差を見せたかったんですよね。追い詰められてる人と余裕の人、みたいな。
さいとう:ちょっと見えにくいんだけど、このとき俺の着てるTシャツがE.T.のオマージュで「スターウォーズ」のキャラが描かれてるデザインなんですよ。で、何回か見てるうちに気づいたんだけど、実は秋葉さんの後ろにも(R2-D2が)いるんですよ。
永瀬:ほんとだ!
辻本:あ、これか。全然気づかなかった。
さいとう:映画ライターと編集者の関係だから、二人ともスターウォーズは好きなんだなっていう共通点が見つかって。


画像1


永瀬:初回っていつだったんですか?
辻本:公開したのが3月31日ですね。撮ったのはその前日です。
さいとう:あ、前日だったっけ?
辻本:やりましょうってなったのは前々日かな。その日の夜にzoomで集まって一旦完成までいったんだけど、そこで僕がちょっと欲を出してしまったんですよ。もっと秋葉さんの編集者が冷たく突き放すパターンを撮り直したくなっちゃって…「今の感じだと締め切り破っても普通に待ってくれそう」って言ったのを覚えてます。
佐倉もち[Ver3.0]:(笑)もともとが優しい子ですからね。
さいとう:見た人からも言われたけど、やっぱりこうして見るとVer0.0だけ台本感というか、エチュードなんだけどプロットがしっかりしている感じがあるね。
辻本:まあ、まだ最初でコンセプト的なものも固まりきってなかったりするので。あと、これだけ「仕事の話」をしてるんですよね。それも関係あるかもしれない。

Ver2.0 笑えるふたり

画像2

岡本セキユ[Ver7.0]:僕はこのタイトル、地味に好きなんですよ。
西田麻梨果[Ver5.0]:辻本さんは、高村さんのボケが好きなんでしたっけ?ツッコミが好きなんでしたっけ?
辻本:ツッコミが好き。なんというか、高村くんのは飛んでくる球の速度を落として誰でも拾いやすくするタイプのツッコミだと思っていて。
西田:こういうコンビ本当にいそうだなっていうか、二人にはお笑いで売れなくても、なんなら芸人になれなくてもいいから「幸せであれ」と願う。
上岡:推したさがありますよね。
佐倉:私は二人とも知り合いだから、その面白さもあって。この部屋も知ってるし、矢島さんの座椅子とか、私とあと何人かでプレゼントしたやつですもん。
セキユ:二人がどういう関係で、何の話をしてるのか、最初はほとんどわからないところから始まって、少しずつお笑いコンビだってことが解ってくるのが…なんか、会話劇の教科書みたいな。
辻本:ネタ合わせをする中、千鳥の漫才でいうところの「イカ二貫」に相当する部分のフレーズが決まらずに行き詰まってるって設定なんですよ。だからまず最初に「面白そうだけど決め手に欠けるフレーズ」の候補をいくつか出して、3人で練るところから始めました。
さいとう:本当のネタ合わせじゃん。
辻本:「人を笑わせるための話をしているのに本人たちは全然笑えていない状態」と「ネタとしては全く使えない(二人の間でしか面白くない)話題で笑っちゃってる状態」の対比を作りたかったんですよ。
さいとう:悪口で仲良くなっちゃう感じがすごく男子っぽいんだよなー。動きは少ないけど、ずっと見ていられる。

Ver3.0 暮来月の晩に

セキユ:このタイトル、なんて読むんですか?
辻本:「くれこづき」です。12月の異名をいろいろ調べて、一番馴染みのなさそうなやつを選びました。
さいとう:iPhoneの予測変換に出てこないもんな。
セキユ:暮来月のチョイスもだけど、「晩」だよなって思いましたね。この感じは「夜」じゃないなと。

画像3

セキユ:佐倉さん、こういう上着似合いますよね。
佐倉:(爆笑)
木村友里[Ver9.0]:なんか、ダボッとした服よく着てるよね。
佐倉:あー、それはそうかも。袢纏がいいって最初言われたんですけど、持ってなくて。結局、部屋着の上から着る毛布を羽織って、あと下には裏起毛のパーカーを着込んでます。
西田:今では考えられないけど、これ見た当時(公開は4月16日)ほんとに寒い時期だったのは覚えてます。
さいとう:右側の、人が寝ているから壁がドーンと見えるっていう空間、贅沢な使い方してるなあ。
辻本:起き上がって川峰さんの顔がわかるまで、たっぷり3分40秒あります。
川峰はる香[Ver3.0/10.2]:この時はあまり設定が細かくなかったけど、そのあとVer10.2で久しぶりに参加したら指定がすごく増えていてびっくりしましたね。
辻本:お話によってスクリプトの書き込みの多さも結構バラバラなんですよ。特にVer3.0は、何も起こらない度でいえばダントツかもしれない。
セキユ:この回、すごく文学的じゃないですか? スペクタクルじゃない時のパターンのジブリというか…なんか、コクリコ坂の短編版みたいな。
さいとう:ジブリが作ったハウス食品のCMっぽい。
辻本:役名がサツキとメイっていうのも多少は影響あるのかな…ちなみに「カンちゃん」は劇中ではカンちゃんとしか呼ばれてないけど、本名フルネームは大垣幹太といいまして…
さいとう:カンタでしょ。え、あいつ今、日焼けしてムキムキになってんの?
佐倉:あまり何も考えずに日焼けってワードを出した覚えはあります。
さいとう:作り込まなくても、頭の中で勝手に「カンちゃん」が像を結んでいくのが面白い。


Ver5.0 真夜中と未来

画像4

セキユ:いや、もう、これ構図が…(笑)
加糖熱量[Ver6.0]:この構図すごかった。画面ごしに顔が見えてるのもいいんだよな。
辻本:ここのzoomには僕も参加していて、それでモニタリングしてたんですけど、撮ってる画角は全く別アングルだから…
西田:たまにバグりますよね。
辻本:特に位置関係のダメ出しをするとき、もう少し手前に…って言いながら「どれに対して手前?」ってなったりとか。
セキユ:会話させたくなる構図というか、どんな設定でも成立するし、内容聞かなくても絶対グッとくるやつじゃないですか。現代版「耳をすませば」みたいな…またジブリになっちゃうんだけど(笑)右側のお酒の配置なんて完全に美術スタッフの所業だし。文脈を作りに行ってますよね。
さいとう:あと、ザクの向きね。
西田:顔合わせの時点からずっとここにいましたよね、ザク。
さいとう:途中まで絵を描いてる背中に向かって話していて、会話に集中するために画面と向き合うようになる変化だったり。
上岡:それは電話じゃできないですもんね。
さいとう:できないできない。これはカメラっていう指向性があって初めて成り立つ関係だから。そこがやっぱり他の作品と一番違うところなのかな。
辻本:個人的にはここ好きなんですよ、「描けます!バカにしないで!」ってとこ。完全に気を許した友達にだからこそ言える感じがあって。
さいとう:西田さん、どうですか?自分で見て。
西田:恥ずかしいですね。シンプルに照れてました、いま。
加糖:自分の声とか喋り方とか、改めて見ると「うわーこんな喋り方してるのか」って思う。
佐倉:舞台より自然な、特に何も意識してないときの喋り方をしてるから、知り合いに見てもらったら逆に気持ち悪いというか、演技じゃないところを見てる感じがあったらしくて。
上岡:すごく見てほしいんだけど、会社の人には見せづらいなって思いました。会社にいるときの自分とも違うし、限りなくプライベートに近い演技をしてるから。

後編へつづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?