小説 禁じられた恋 〜そうゆうあんしん〜 1


「う〜ん、いい匂い」
私は豆の木パンの側に立っている。
ここ最近、私は母に頼まれて豆の木パンにパンを買いに来るようになっていた。
ここに来る目的は2つある。おいしいパンと彼の笑顔だ。

お店に入るとパンの良い香りが立ち込めてきた。「いらっしゃいませ〜」
まずはトレーとトングを取る。
ん〜と何しようかなぁ…迷っちゃうなぁ…とりあえず母に頼まれた食パンをゲット!それから私が食べたいパンもお駄賃代わりに買っていいよって言われているので選ぶ。
「いらっしゃいませー焼きたてパンですよ〜」彼だ!なんて爽やかな笑顔。トレーにのったパンを運ぶ彼が輝いて見える。
歳で言えばきっと私と同い年か、ちょっと上くらいだろう。バイトなのかなぁ?彼を見つめていたら、「焼きたておいしいですよ」と言ってくれた。わぁ〜〜ときめきが止まらな〜い。
「かっ…買います」と小さく呟いた。

豆の木パンの近くには公園がある。私は家まで待ちきれずにその公園で買ったパンを食べてしまいます。
その公園は住宅街の中にある小さな公園で、そこにはベンチが2つ並んで置いてあり、私は1つのベンチに座り、さっき購入したばかりのパンをほおばる。「う〜ん、おいしい」焼きたてのフランスパンの中に魅惑のミルクソース。たまらなーい!これぞミルクフランス!
パンの美味しさに感銘を受けつつ、公園のベンチに座り空を眺める。静かに流れる雲を見つめる、なんて贅沢!こんなお手伝いだったらいくらでもしたいよ!
あっ!誰か来た
白衣着てる、豆の木パンの彼だ!彼は開いているもう一つのベンチに座った。チャンスだ!声をかけたい。でもなんて言えばいい?パンおいしいですね位しか思い浮かばないよね?でも貴重な休憩時間でしょう、そんな時に申し訳ないかなぁ…でもそんなこと言ってたらこのチャンスはなくなってしまう。勇気を出すのよ杏!
「さっきはどうも」
私は勇気を出して彼に話しかけた。
「あーいつもありがとうございます」
いつもありがとうございます?!という事は私のことを認識してるってこと?気づいてるってこと?信じられない!その時パンを喉に詰まらせてしまった、すかさず買っておいたコーヒー牛乳で流し込む。クスっと笑う彼がいた。
あっ、笑われちゃった!でもいい!嬉しい、私を認識してくれてたってことが何より嬉しい!
「パン美味しいです」
「ですよね、ありがとうございます。俺、ここのパンに惚れちゃって、それでバイトさせてほしいってお願いして、今やっとバイトできてるんですけど、将来パン職人になりたくて」
「パン職人!いいですね、夢があるって素晴らしいですよ!将来ってことは、大学生?ですか?」
「いやいや俺は高校二年生。高2」
「同い年?高校生で頑張ってるって凄いですね!」
「ありがとう、またパン買いに行きますか?」
「はい来ますっ!豆の木パンのファンになっちゃったんで私」
「じゃあ、また会えますね、名前聞いてもいいですか?」
「はい、杏(あん)です」
「杏ちゃん!俺は、蒼(そう)って言います」
「蒼くん、来週の日曜日来れると思います」
「じゃあ、俺もこの時間に休憩とって、またここで話せるかな?」
「はい」
「あっもう行かなきゃ、じゃあまた来週」
「はい、お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとう」
彼は手を上げながら走り去って行った。
わぁ〜憧れの人と話ができたんだよ!来週って約束までしちゃったんだよ!急展開だよ、どうしよう?どうしよう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?