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【「景岳全書」婦人科を読む】2.婦人規上 2-1.総論類 論難易二(4)
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【「景岳全書」婦人科を読む】2.婦人規上 2-1.総論類 論難易二(4)

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【本文④】

今富貴之家、居奥室之中、処帷幔之内、復有以綿帕蒙其手者、既不能行望色之神、又不能尽切脈之巧。
使脈有弗合、未免多問。
問之覚繁、必謂医学不精、往往并薬不信。不知問亦非易。其有善問者、正非医之善者不能也。
望聞問切、欲於四者去其参、吾恐神医不神矣。
世之未通患、若此最多、此婦人之所以不易也。
故凡医家病家、皆当以此為意。

【書き下し】

今富貴の家、奥の室の中に居り、帷幔の内に処(す)む。また綿帕を以て、その手を蒙うものは、既に望色の神行うこと能わず。また脈を切するの巧尽すこと能わず。
脈をして合せざることあり、未だ多く問うこと免れず。問うことの覚え繁ければ、必ず医学精(くわし)からざると謂い、往々にして併せて薬を信じず。問うことを知らざれば、また易からず。そのよき問いあるものは、正に医のよき者に非ざるに能わざるなり。
望聞問切四つの者、その三を去ること欲せば、われ神医は神ならざると恐れる。世の患いを通じずして、これ最も多く、これ婦人の所易しからざるなるがごとし。故におよそ医家病家はみなまさにこれを以て意となすべし。

【口語訳】

今裕福な家の病人は、家の奥まった部屋で生活し室内をしきる垂れ幕の内に居る。さらに被り物を身につけ覆っており、手を触れて診察することが難しい。顔色や肌の色つやを見ることができず、また手を取って脈診することができない。

脈診とを合わせて診察することができず、多くの問診することになる。少しの質問でも病人は医学に精通していないと感じる。往々にして薬剤の処方が正しいかを疑う。人々は診察の道理をしらないため、適切な問診をするのが優れた医者とはわからない。

望聞問切、もしこのうち三つを使えない為、わたしは正しく診断し治療できないのではと畏れている。世の人々の病の中で、これが女性の病の治療が難しいことの大きな原因である。そのため、医師も患者もこの種の問題を念頭に置いておかなければならない。

【山口解説】

人事的困難については、当時、高貴な女性に対して、医者であっても直接姿を見ることは許されず、脈診をするために直接触れることさえ出来ませんでした。したがって、診察は問診を中心に行うしかなく正確な診断が出来ません。これは、ただでさえ難しい女性の診断治療を、さらに難しくさせていたようです。

現代の私たちはこのような状況にありませんが、ここで注目すべきは、四診である「望聞問切」のうち、1つだけの診察では、正しく診断治療出来ないという部分です。経絡治療においても脈診を重要視するあまり、しっかりと考察することなく、脈を直接選穴や治療に結びつけてしまう傾向にあります。しかし、本来は四診すべてを行い、それを総合的に判断し、診断治療するべきです。脈を診断の中心に据えながらも、望診をし、必要な問診をし、お腹を触り、ツボを診て触れ、総合的に考えて病因病理を導き出し、それに応じた選穴、手技を用いて治療をしなければなりません。私たちがよくよく考えなければいけないことだと思います。

古典の中に脈打つ鍼灸の骨組みを損なうことなく、鍼灸の本質的な伝統を守りながら、これを取捨選択して現代的に構築したものが経絡治療です。これを考え出すに至ったプロセスを思うと、並大抵のことではなかったと思います。その臨床システムは素晴らしいものです。ただしそのシステムが素晴らしいがために、システムのみが先行し、思考の欠如に陥りがちなところがあります。私たちは常に病因病理を意識し、それを導き出すために、脈診に腹診や問診、切経を重ね、さらには脈差診から祖脈、脈状診へと移行し、少しずつ経絡治療を前に進めていくべきだと考えています。


【コラム:西洋医学の視点から①/仁木小弥香】

女性の心とからだの特性は月経周期を持つことにあります。本来ヒトの発生段階では男女ともに周期性を持つのですが、男性は胎児期の初めに精巣から男性ホルモンが分泌され、そのホルモンが視床下部の性中枢に作用し、持っていた周期性を失います。女性は初潮を迎えると月経周期に従って身体が機能するようになります。

月経1日目、2日目は下腹部痛や倦怠感、気分の落ち込みに悩まされますが、その後は比較的楽になる人が多くなります。月経が終わって次の排卵までの10日間程は、体調良く気分も前向きに過ごせる時期です。しかし、排卵期になると腹痛、浮腫、倦怠感やイライラなどの症状が始まり、月経までの2週間程続きます。特に月経が始まる前の3~10日がピークとなり、PMS(Premenstrual Syndrome)、月経前症候群と呼ばれています。個人により症状の軽重はありますが、女性の70~80%にみられ、これは排卵に伴う女性ホルモンの変動によると考えられています。日常生活に支障をきたす場合には、低用量経口避妊薬や低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬による排卵抑制療法が選択されます。精神的ストレスの影響も大きいとされており、カウンセリングも有効とされています。

毎月訪れる、時に憂うつにもなる月経ですが、月の周期と一致していると考えると神秘的に感じられ気持ちが落ち着きます。月は欠けることもありますが、満月になると優しい光で人々を照らします。同じように、毎日の生活もつらい時もあれば楽しい時もある。そう考えると月経とうまく付き合いながら人生を送れるのではと思います。


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目次

書き下し・口語訳・コラム/仁木小弥香
解説/山口誓己

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