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書評「インサイトブースト」を読んでみて

書籍「インサイトブースト -経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本-」を読みました。その感想をnoteにまとめました。

デザイン経営がしっかりと成果を出せるよう、デザイン経営の研究者がデザインにMBAを掛け合わせることによって生み出した、デザイン経営の新しい理論をまとめた一冊だ。ブランディングを成功させるために欠かせない「無意識のインサイト」の掘り起こし方と、そのインサイトをデザインに反映する方法を提示する。


どんな書籍なのか?

書籍の第1章「なぜデザイン経営が必要とされているのか?」では、デザイン経営の解説と、著者のデザイン経営に関する考察が書かれています。

デザイン経営は、トンマナをそろえた一貫したビジュアルづくりのことでもなければ、組織にCDOを置くことでもなく、「経営のヒト、モノ、カネの各領域における経営戦略施策と密接に結びつく」ものであり「経営戦略のどこにデザインの力が有効に働くかを明確にすること」であるとしています。

第2章では『インサイト・ブースト』と呼ばれる著者独自の手法を通じて、顧客・ユーザーの「無意識のインサイト」を導き出す手法を提示しています。

デザイン経営の実践においてインサイトは非常に重要な役割をはたし、「無意識のインサイト」こそが経営戦略をブーストさせるものである。そして、インサイトから本質的な問題を解決するアイディアを展開する手法として『インサイト・ブースト』を紹介しています。

第3章「なんのためにデザインの力を使うのか」では、著者のデザインに関するエピソードや、デザインに関する考え方が示されています。

書籍を読んでみて

特許庁が公開した「『デザイン経営』宣言」のなかで、デザイン経営の効果として「ブランディング構築に資するデザイン」と「イノベーションに資するデザイン」の2つが示されています。

「デザイン経営」宣⾔ P2 より抜粋

…言いたいことがなんとなくわかる反面、正直ピンと気ていないところもあるというのが個人的な感想でした。

そんななか、書籍「インサイト・ブースト」を読んでいて印象的だったのは、デザイン経営の実践者(=デザイナー)のアウトプット(=デザイン)が経営戦略に結びつくものになっているか?という問いでした。

デザイナーが経営戦略を理解し、アウトプットがヒト・モノ・カネのどこに・どのように影響を与えるかを考えることが「デザイン経営」なのではないかと思いました。

一方で、デザイナーが組織の中で経営戦略のヒト・モノ・カネに直接的に関与することは、なかなか難しいとも感じます。例えば、ヒト=従業員の配置や採用計画・評価制度を決めるのは、デザイナーではなく人事部の仕事でしょう。カネは財務・経理部でしょうか。

なので、例えばですが以下のようにヒト・モノ・カネに間接的に関与することが、デザイナーの経営への関与として現実的なのではないかと考えます。

  • ヒト=組織カルチャーの啓蒙活動、CIの策定

  • モノ=プロダクト、ビジュアル

  • カネ=企業価値の向上への貢献(ブランディングやIR活動)

そして、デザイナーの日々の活動・アウトプットが、ヒト・モノ・カネのどこに影響を与えるのかを常に考えることが、デザイン経営の第一歩なのではないかと思いました。

書籍のなかで気になったフレーズ5選

最後に、書籍のなかで特に心に残ったフレーズを5つほどピックアップさせてください。

デザインが経営の資産価値に大きく貢献できる部分は、有形資産ではなく無形資産の部分、つまり、姿形を伴わない資産価値の部分である

経営戦略を理解し、その打ち手にデザインを組み込むことが、デザイナーとしての力を証明することになり得る

経営戦略のどこにデザインが効果を発揮できるのかを明確に示すこともしないのに、デザイン経営を実践しているという人材が溢れ始めた時期で、いざ広まったデザイン経営の実態を見つめながら、近い将来に不具合が起き、結果、これまでのデザイン業界が信頼を失いかねないと危機感を感じるようになった

デザイナーが物事を考えるプロセスを経営の世界に取り入れる、ということで注目を浴びたデザイン経営は、ノンデザイナーの人たちもデザイナーが持つ職能を使うことができるといわれているが、その職能こそがまさに、「察る」という行為だ

「そもそも何が問題なのか」を発見する力こそが、「察る」という能力、つまり、観察眼と審美眼を使いこなす力であるということだ


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