Project U/0 #004

#004 暗闇に嘯く



「レイ、仲間ができそうなんだ。きっと我々の力になってくれる。」

「仲間ですか…?」

「ああ。既に入所時から第一条件を満たしていたようでずっと気にかけていたんだが、昨日から私の研究室所属になったんだ。」

「そう、じゃあその人にも私の声が聴こえるのね。」

「潜在的エンダーだとしても、自らの力でコントロール出来ているかはまた別の話になるがな。だがまあ、彼は優秀な様だからすぐに扱える様になるだろう。」

「…」

「不安か?」

「どうだろう…わからない、もうずっと博士以外と会話なんてしてないから…」

「きっとレイと彼なら、仲良くやれると思うよ。」

「そう…博士が言うならそうなのかもね。」

「もう私も長くないからのう。これから先、君と一緒にいてくれる仲間を出来るだけ増やさなくては行けないね。」

「そんな冗談やめてよ、」

「冗談なんかじゃないさ、私も67になった。君と出会ってから40年も経っているんだ。この先長くはないよ。」

「この時代の医療は私がいた世界よりずっと進んでるって言ってたじゃない…」

「全て治せるわけじゃない。人間は弱く脆い、だから短い生の間に何かを成し遂げようと一生を捧げるんだ。私は君の未来に人生を賭すと決めた。それを私は全うしたい。」

「いいよそんなの、博士がいればそれでいいのに…」

「レイ、私も違う世界で君と出会いたかったよ。きっと違う未来が待っていた。彼女と私と、レイと。そんな人生があったらどれだけ幸せだったか。」

「そうだよ…まだマツリさんだって…」

「諦めたわけじゃないさ。だが、元気なうちにこの先の後継者を見つけなければならない。それはわかってくれるね?」

「…そうね」

「そろそろ彼がくる頃だ。今日はきっと新しい1日が始まるよ。」



ウーレイは本当はわかっていた。
この出会いが遅かれ早かれくることを。
博士とずっといられないことも。

彼女は迷っていた。
この先もずっと誰かを見送るしかない宿命から
逃れることは正しいのか。

写真立手を愛おしそうに撫でる
博士の背中を見つめ、ウーレイは思案する。

人の幸せとは一体何なんだろうか。
等しく死にゆく中で、足掻く命に意味はあるのか。

きっとこの虚しさに答えはない。




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