小説における禁止事項の把握法

 私、フリーターから正社員になって以降、転職した事はないんですが、人事異動でいろんな仕事を経験しました。最初は建築系の部署で、ひたすら設計図面読んだり見積分析してました。その次が、システム関連の部署。社内のシステム開発やら経費削減の支援。そしてその次が広報。その次が福祉の現場で、今はやや教育系(自分でも何してるか微妙に把握していない)といったところでしょうか。

 もうすぐ勤続20年になろうかという感じですが、毎回転職状態になる異動はいつも面食らいます。
 しかし、これまでの経験の中で小説にも生かせるなと思っている仕事があります。それが広報のお仕事。

 僕は細かすぎて大嫌いだったんですが、広報では禁止されている事がいろいろとありました。例えば子供の「供」という漢字は避けてひらがなにすべきだとか、障害者の「害」という字はひらがなか「碍」に変えるべき(障害物競走の「障害」はそのままで良い)だとかがそれなんですが、気にする人はすごく気にするんですよね。

 まぁ、プロ作家になったらプロの校正がつくだろうから心配いらないんですが、ネット投稿から出発すると誰も教えていないので、致命的だったりするかもしれません。

 最近は過去の偉人が当時の常識で責められなかった事も、常識が変わったせいで偉業ごと葬られるような、もう訳わからん世界になってきていますが、世の中いろんな主張をもった人たちがいます。

 多くの人が見る場に発表する以上、できるだけそういう人たちの琴線に触れないようにするする必要はあるかもしれません。

 と言うわけで、行ってみましょう。

「記者ハンドブック」を読み込む【禁止語句】

 先程例示したような禁止語句の原典となるものが、マスコミでの対応です。テレビ局や新聞社はそういうノウハウを溜め込んでいるので、その業界から漏れてくる禁止語句の考え方は、物書きにとって勉強になります。

 その中でも、比較的入手しやすいものに「記者ハンドブック」というのがあります。年々分厚くなっている気がして、すでにハンドブックと呼べないほど分厚いですが、いろんな事が書いてあって割と有用です。

 2種類ぐらい見たことありますが、どっちもちょっとお高かったですね。

熱心な信者がいる宗教に深入りにするのを避ける

 その昔、「悪魔の詩」という小説があったんですが、読んだことないので細かい事はわからんのですが、この作品で作者はイスラム教を敵に回しました。

 そして、この作品は各国で翻訳されたんですが、その翻訳者たちも同じくイスラム教を敵に回してしまいました。結果どうなったかと言えば、その小説の翻訳者たちが各地で暗殺されたり襲撃されたりしました。

 何が言いたいかと言えば、表現の自由なんてものは一部の国でしか通用しません。国境や日本の法律なども、相手がより上位のルールに殉じていれば、こちらのルールなど意味を持ちません。

 宗教に限った話ではないですが、相手の思想を踏みにじって、「モチーフにしました」「パロディです」「冗談でした」と言って相手が認めてくれれば良いですが、それを決めるのはあくまで相手です。やめた方が無難でしょう。もちろん、命がけで主張したい事があれば止めませんが。

 ちなみに、日本でそこまで口煩く言われなかったのは、殺害までいたるような人たちは日本語を勉強してなかったからの可能性があります。今は自動翻訳の精度が増してるので、そろそろ危ないかもしれません。時代は変わりますのでお気をつけて。


「人権問題」に興味を持とう

 ファンタジー世界を舞台にするメリットは、こちらの世界では差別と言われるような内容でも、セーフ扱いになることが一つあったんですが、最近ちょっと雲行きが変わってきました。

 例えば、「ダークエルフ」は黒人差別と結び付けられはじめている感じがありますので、このまま進めば「邪神と契約したせいで肌が黒くなったエルフ」とかは狩人たちの攻撃対象になりかねないと思っています。(邪神と契約するのカッコイイ!と思っても、相手にその厨二魂が届くかどうかは微妙なところ)

 その他、最近はLGBTなども、SDGsなどに含まれたこともあり、一昔前とは劇的に扱いが変わってきてきました。多分昔のお笑い番組のような扱いをすると一発で炎上するでしょう。

 これらは人権問題として浮上し、世間に認知され、世論が認め、それから排除が始まるというプロセスを踏みます。人権問題を知り、常時更新できるようにすれば、排除される側に回る可能性を下げる事ができるに違いありません。


 時代は変わります。常識だって変わります。記者ハンドブックはさらに分厚くなるでしょうし、世界的な常識の衝突は激しくなるでしょうし、新たな人権問題はいずれ浮上してくるでしょう。

 僕らは、それらを知り続けなければなりません。僕的には、他人を受け入れて、もっとおおらかな世界で生きて行きたいんですが、ね。