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【「地域をつなげる力研究会」Vol.11 イベントレポート】「京都をつなげる30人」発「かもがわミュージック」誕生ストーリー

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2024年9月18日(水)に開催された第11回目の内容をレポートします。

ゲスト

小野寺 亮太 |Ryota ONODERA
京都市役所 / アトツギオタク

滋賀県で創業50年を超える飲食店の3代目に生まれる。大学卒業後は京都市役所に勤務。福祉、観光、青少年育成等の担当をする傍ら、「京都市未来まちづくり100人委員会」「京都をつなげる30人」や金融機関との協創PJなど、クロスセクターで社会課題を解決するプロジェクトに多数参画。京都をつなげる30人は、第3期・第4期に参加。アトツギオタクとして、京都を中心としたローカルアトツギコミュニティ「アトツギラボ」を発足。一般社団法人ベンチャー型事業承継エバンジェリスト。

田貝 雅和 | Masakazu Tagai
株式会社TBWA HAKUHODO Disruption®︎ Consulting

ITプラットフォーマー、デジタル・エージェンシーを経て現職。 スタートアップからグローバル・ブランドまで、 様々な規模・業界のクライアントに共創的アプローチでビジョン実現の支援を実施。 「良い戦略は良い問いから生まれる」という考えのもと 『問いと対話』の研究と実践をライフワークにしている。京都をつなげる30人には第4期に参加し、100年後に見たい京都という問いから「かもがわミュージック」を企画・推進している。

武田 真彦 | Masahiko Takeda
音楽家

京都を拠点に活動する音楽家、アーティスト。
家業であった西陣織「大樋の黒共」の廃業を背景に、残された素材・技術・歴史を継いでいく見立てを通じて、
サウンドインスタレーション、パフォーミングアーツ、現代美術、伝統工芸など幅広い領域における作品を制作。
主な作品として、フルアルバム「Mitate」、サウンドインスタレーション作品「CYCLEE」、音のプロダクト「Synclee」、旅館「Azumi Setoda」のための楽曲「CYCLICAL MEDIUM」、「Hotel Kanra Kyoto」の館内BGM、「KYO AMAHARE / KYO 居雨」の空間サウンドデザインなどがある。
2023年、香港メディアアートアワード FUTURE TENSEにおいて、サウンドインスタレーション作品「CYCLEE」がBEST POPULARITY AWARD最優秀賞を受賞。

http://masahikotakeda.com

【はじめに】

今回のテーマは「京都をつなげる30人」発「かもがわミュージック」誕生ストーリーです。

2019年にスタートした「京都をつなげる30人」では、これまで様々なクロスセクタープロジェクトが生まれてきました。コロナ後のインバウンドの回復とともに、オーバーツーリズムの課題も深刻化している京都。昨年度開催された4期の活動テーマは「100年後にみたい京都」であり、内から観る人(移住・定住者)と外から観た人(関係人口)が多様な視点から「心の豊かさ」「Well-thinking」「京都コモンズ」「継承と進化」「心の余白」、そして「かもがわ」という6つの柱を打ち立てました。

特に、かもがわ(鴨川・賀茂川・加茂川)を訪れた人々が感じる『かもがわってなんかいいよね』という、共通の感覚を、京都内外の人々と共有したいという想いを持ったメンバーが対話を重ね「かもがわミュージック」プロジェクトが誕生しました。

2024年春には、アイデアを具体化し、協力者を募るためにクラウドファンディングも実施され、いよいよプロジェクトは本格化しています。

今回のイベントでは、当プロジェクトの企画に関わった田貝さん、音楽家の武田さん、そして京都市役所の小野寺さんをゲストに招き、プロジェクト誕生の背景や成功の要因、メンバー同士のコラボレーションについて深掘りし、今後の展望についても話し合われました。

【ダイジェスト】「かもがわミュージック」プロジェクトから学べるポイント



まず、「かもがわの魅力を音楽で表現する」事自体の意義について議論が交わされ、このプロジェクトは、以下のように「癒し」「時間の流れ」そして「精神文化の継承」という3つの要素を通じて、かもがわの魅力を音楽に変換し、広く伝えるプロジェクトである事が改めて浮かび上がってきました。

  1. かもがわは癒しの場としての価値を持つ

    • かもがわは、ただ美しい風景を提供するだけでなく、訪れる人々に心のリフレッシュをもたらす特別な場所です。このプロジェクトでは、その癒しの感覚をどのように音楽として表現するかが中心的なテーマとなっています。音楽を通じて、かもがわが持つ静寂やリラクゼーションを感じ取ってもらうことが目指されています。

  2. かもがわ独自の自然と風景が音楽に新たな意味を与える

    • かもがわは風や川のせせらぎなど、独自の自然音を持っていますが、それだけではなく、そこに流れる時間のリズムや人々の歩みが音楽に新たな意味を与えます。音楽でこの時間の流れやリズムを表現することで、聴く人にその場の空気感を深く伝え、かもがわの一瞬一瞬を感じてもらうことができるのです。

  3. 京都の歴史や精神文化を継承する役割を果たす

    • かもがわは単なる自然の景観ではなく、京都の歴史や精神文化と深く結びついた存在です。このプロジェクトを通じて、音楽はかもがわに息づく京都の長い歴史と精神性を表現し、未来へと継承していく役割を担います。音楽は一瞬の体験を超え、京都の文化的背景を感じ取らせる手段となり、かもがわの本質的な価値を伝えるのです。

また、参加者と共にプロジェクトの形成過程を振り返る中、改めて「つなげる30人」のようなフラットなコミュニティだからこそ偶発的共創が促進された、という重要な気づきが共有され、以下のような議論がなされました。

  1. 偶然の出会いが新たな価値を生む

    • 「つなげる30人」のように多様なメンバーが集まる場では、計画されたプロジェクトではなく、予期せぬ出会いから新たなアイデアや価値が自然に生まれます。この偶然の力が、かもがわミュージックの誕生に大きく貢献しました。メンバー同士が交流を重ね、自由な対話の中で、アイデアが形作られ、プロジェクトが進化していくのが特徴です。

  2. 関係性ドリブンのアプローチが思いもよらない共創を促す

    • このプロジェクトのもう一つの特徴は、メンバー同士の関係性がプロジェクトの進化を促す「関係性ドリブン」のアプローチです。目的や計画に縛られることなく、関係性が自然に形成されることで、新しいアイデアや方向性が次々に生まれます。こうした柔軟なプロセスが、かもがわミュージックの独自性とクリエイティビティを支える重要な要素となっています。

  3. 従来のプロジェクト活動との違い

    • 従来のプロジェクトは、目的を明確に設定し、計画的に進めることが重視されがちです。しかし、「つなげる30人」では、最初に明確な目的を掲げず、偶然の出会いや無目的な交流から新たな価値を生み出すことを大切にしています。この柔軟性が、他の共創アプローチとは異なり、プロジェクトの進化と成功に大きな役割を果たしています。

【詳細レポート】「かもがわミュージック」プロジェクトの物語

かもがわの癒しと音楽の出会い

イベントが始まると、最初に語られたのは「かもがわ」という場所が持つ特別な意味でした。かもがわの風景に込められた癒しの力について、参加者たちは次々に思いを述べます。音楽家の武田氏がプロジェクトの核心を語りました。

「かもがわに立つと、不思議と心が軽くなるんです。風の音、川のせせらぎ、そしてその場所にいる人々の静かなリズムが混ざり合って、まるで時間が止まったかのような感覚になる。私たちは、この感覚を音楽に乗せて伝えたいと思っています。」

このように、かもがわが、ただの景色以上のものを持っていること、そこに訪れることで心が癒される体験が音楽を通じて表現されるべきだ、という想いが共有されました。

かもがわの風景と音楽の融合

続いて、かもがわの自然が音楽にどのような意味を与えるかに移り、武田氏は、自然音をそのまま音楽に取り込むのではなく、かもがわに流れる「時間」や「リズム」をどう表現するかに注力していると語ります。

「風や水の音はもちろん大切ですが、それ以上に重要なのは、その場で感じる人々の動きや時間の流れ。かもがわを歩くと、みんなが自分のペースで動いている。そのリズムを音楽に反映することで、その場所の空気感を本当に伝えられるんじゃないかと思うんです。」

実際に、かもがわは単なる自然音以上の何かを感じさせる場所であり、その感覚を音楽で表現することがこのプロジェクトの真髄であることが明らかになります。

京都の精神文化と音楽の役割

かもがわは自然の美しさだけでなく、京都の歴史や文化とも深く結びついています。この点について、参加者から、

「かもがわは、京都の精神が流れている場所だと思うんです。そこに立つと、京都の長い歴史や人々の営みを感じることができる。それを音楽で表現することで、ただの観光地ではない京都の本質を伝えることができるのではないでしょうか。」

これは、京都そのものの精神を象徴しており、それを音楽で表現することで未来へと継承していく役割を果たすという議論が深まります。

偶然の力と共創のプロセス

プロジェクトの形成過程でを振り返る中で、「偶然の力」が如何に大きかったかについて語られました。

「このプロジェクトが形になったのは、本当に偶然の連続でした。初めはただ散策するだけだったのに、気づけばみんなで『かもがわの音楽を作ろう』という話になっていたんです。計画せずに進んだことで、かえって自然な流れで物事が動いていった。『つなげる30人』のようなフラットなコミュニティだからこそ、この偶発的な共創が可能だったと思います。」

このように「つなげる30人」は、計画的に進めるよりも、偶然の出会いやお互いの関係性によってプロジェクトの成長を促進することが、このコミュニティの強みであることが改めて明らかになりました。

また、田貝さんも「つなげる30人」の共創の仕組みがいかにユニークであるかを振り返り、偶然から生まれたこのプロジェクトが、今後も新しい形で進化していく可能性に期待が集まりました。

「企業では、どうしても目的に向かって計画を立てることが多いですが、『つなげる30人』では自然に生まれる関係性が新しい価値を生む。この偶然の力を活かせる場が、真の共創を生み出していると思います。」

まとめ

このイベントを通じて、「かもがわミュージック」プロジェクトは、音楽プロジェクトにとどまらず、共創における新しい価値観を体現していることが明らかになりました。特に、最初に「目的やビジョン」を掲げず、無目的に集まった関係性の中にこそ、アイデアの種が潜んでいるという重要な考え方が強調されました。

「つなげる30人」のようなフラットなコミュニティでは、計画的なアプローチではなく、偶然の出会いが新たな価値を生み出す大きな原動力となっていることが、プロジェクトの成功を裏付けています。このような共創プロセスの中で、特定の目的に縛られず、自然に生まれる関係性が育まれ、それがプロジェクトの独自性やクリエイティブな展開を可能にしているのです。

かもがわミュージックは、かもがわの魅力を音楽で表現するだけではなく、こうした世界観や価値観も合わせて伝えることができる可能性を持っているという視点が、イベントの中で浮かび上がりました。


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