見出し画像

【「地域をつなげる力研究会」Vol.4 イベントレポート】プロデューサースペシャル!〜渋谷・京都・広島の 「つなげる30人」の現在地、そしてビジョンとは?〜

「地域をつなげる力 研究会」とは?

一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)

この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。

今回は、2024年2月7日(水)に開催された第4回目の内容をレポートします。


ゲストプロフィール(五十音順/敬称略)

●内 英理香(「京都をつなげる30人」 事務局長)
Slow Innovation株式会社 マネージャー / EAPメンタルヘルス・カウンセラー / 国際EAPコンサルタント

大学卒業後、大手日系経営コンサルティング会社に入社し、各種業界の人財・組織開発コンサルティングに従事。3.11と出産育児が重なったタイミングをきっかけに退職。
故郷で子育て系NPO法人を立ち上げコミュニティ活動に勤しんでいたところ、DE&Iコンサルティング会社にご縁をいただき転身。
当時はまだ黎明期だった『アンコンシャスバイアス』というテーマや『オンライン講座』という形に、時代に先駆けて着手し企画営業に携わる。
その傍ら、より個人の内面の変容にフォーカスをおく”プロセス指向心理学”をベースとした、『反転学習型リーダーシップ開発プログラム』を自主企画し運営。
これらを通して、”組織”と”個人”、両面の変容を探究し続ける。
”社会”の変容にチャレンジすべく、2019年より同社に参画。企業への社会課題解決型新規事業開発コンサルティングや、行政や地域市民団体への市民協働支援を通して、"想いを持った誰もが心の旗を立て、ともにより良い未来の創発のために一歩を踏み出す社会"の実現のために活動している。
得意領域は、傾聴をベースとした内省と関係性の修復。

◯畑間 直英(「渋谷をつなげる30人」 事務局長)
SHIBUYA CITY FC 取締役 / 地域事業責任者

大学在学中にJリーグ 川崎フロンターレで学生スタッフとしてスポーツビジネス、地域事業に関わる。
イギリスに1年間の留学した後、大学を卒業。
ITシステムのコンサルティングをメインとするアビームコンサルティングに2016年新卒で入社。
国内外のプロジェクトに従事。
2020年5月にクラブの立ち上げから関わっていたSHIBUYA CITY FCに転職。
主に地域事業担当として、渋谷区でのサッカークラブを活用した取り組みを多く実施。
その一環として、渋谷をつなげる30人の4期に参加。
7期(2022年)からは運営を引き継ぎ、事務局として活動している。
サッカー以外は、音楽とゴルフ、旅行が趣味。

■山邊昌太郎(「ひろしまをつなげる30人」 プロデューサー)
一般社団法人広島県観光連盟(HIT)事業本部長 兼 チーフプロデューサー

1970年、広島県生まれ。京都大学工学部卒業後、1992年、株式会社リクルート入社。
新規事業開発、リクナビ責任者、求人各誌編集長を歴任。
2011年、株式会社ベルシステム24にて事業部長に就任。
新規事業開発や新規顧客開拓の責任者を務める。
2016年、カルビー株式会社にてクリエイティブディレクターに就任。
広島に新設された新規事業開発拠点「Calbee Future Labo(カルビーフューチャーラボ)」の責任者として立ち上げにコミット。
2020年4月より現職。

ゲストトーク

「渋谷をつなげる30人」の誕生ヒストリー

◯畑間:
「渋谷をつなげる30人」の4期(2019年度開催)にSHIBUYA CITY FCのメンバーが参加をしていたことがきっかけで、僕も5期(2020年度開催)に参加をしました。

渋谷にまつわる色んなチームが生まれて面白いことをやっており、コロナ禍だったのにも関わらずメンバー同士とても仲が良くて良い思い出がたくさんできたのが「渋谷をつなげる30人」でした。

一方、僕は当時もSHIBUYA CITY FCで地域事業を担っていました。

サッカークラブはただ試合に勝てばいいのではなく、地域に密着するべきだということをJリーグが明確に理念として掲げており、そこから外れることなく渋谷に密着しようとしていました。

何か新しいことや面白いことをやっていきたいと常に思いながらも、駅前のゴミ拾いをしたり商店街の方々に挨拶行ってポスターの配布をしたりということにリソースを割かれていた時、ちょうど当時主催者の加生さんからSHIBUYA CITY FCに「渋谷をつなげる30人」を引き継いでもらいたい、というお話をいただきました。

サッカーやスポーツ関係なく色んな渋谷のステークホルダーに繋がれることが魅力だと思っていましたし、それをサッカークラブがやるのは新しいチャレンジだと思い、2つ返事で引き継ぎました。

「京都をつなげる30人」の誕生ヒストリー

●内:
私は、大学卒業後コンサル会社に就職しました。

その後、東日本大震災と出産が重なったことで退職して大阪の地元に戻り、子育てを通じてNPO活動を行ってNPOセンターに出入りするようになりました。

そこで自分が、地域を良くするという視点を持ってなかったことに気がつきました。

コンサルを通して企業だけではなく、地域も地球も良くすることができないかと悶々としていた時にSlow Innovationが設立され、「京都をつなげる30人
」立ち上げのプレスリリースを見ました。

「これだ!」と思い、すぐ連絡を取って運営サポートとして参画し、第2期が始まる時から内部社員として取り組むようになりました。

そして、ダイバーシティーコンサル時代に関わりがあった女性がこの活動に興味を持ってくださり、第2期に参加してくれました。彼女は、これを故郷の広島にも持って帰りたいと言って様々なツテをたどった結果、たまたま彼女の予備校時代の同級生が京都府副知事だったことがきっかけで行政ともつながっていきました。

京都市は、行政職員が市民のニーズを把握して実現を支援する「市民協働ファシリテーター」になるという課題設定をしています。そのため、市民協働で街を良くしていくという素地は「京都をつなげる30人」が始まる前からあり、市役所側の動きともタイミングが重なったように思います。

をつなげる30人」の誕生ヒストリー

■山邊:
広島県観光連盟に着任後、広島出身者である京都副知事に会いに行くことになり、広島の観光のビジョンを話して意気投合しました。

その後「つなげる30人」をご紹介いただき、内さんや、Slow Innovationの野村さんにお話を聞いたのが、「つなげる30人」との出会いです。

僕は当時から、観光が観光事業者だけのものになっている事に問題意識を持っており、当事者を増やすことが観光も街も良くすると考えていました。

そんな時に「つなげる30人」のお話を聞いて、毎年30〜40人ぐらいのつながりを10年続けて、300〜400人ぐらいの次世代の当事者たちが広島で生まれたとしたら、街を変えることができるかもしれないと思いました。

観光に直結しないように思えますが、どこかで観光に繋がってくると思っています。

当事者を増やすことで街に貢献し、その町が成長発展していく大きなエンジンの1つに観光があるのです。

着任してすぐコロナ禍になってしまいましたが、むしろコロナがあったおかげで、これまでの観光の風習や慣習を絶って新しいことをやる理由になり、新しいプレイヤーを増やすタイミングにもなりました。

観光というとプロモーション合戦になりがちですが、僕はそれを全否定するところから始めています。

プロモーションしてたくさんの人が来てくれても、期待を下回ってがっかりされたらもう2度行きたくない街になってしまいます。

1番大事なのは、この街が本当に魅力溢れる場所になって、来てくれた人がまた来たいと思えるよう整えることです。

観光のド素人だった僕が従来と同じことやっても僕の存在価値は全くないので、僕が外から来た存在であったことも大事な要素だったと思います。

広島で30人を集めるトップダウン営業

■山邊:
僕は、トップダウンで社長に会いに行き、社長を落とすよう営業してきました。

なぜかと言うと、担当者に話をすると担当者の裁量でしか判断しないからです。僕は営業先で「あなたの会社の中にいたら、その人はその会社の中の視界しか見えない。その中で全ての物事を判断する。それはそれで会社にとってはやりやすいことかもしれないけど、新しい取り組みをする時に自分たちの限界をその会社の器で決めてしまう。そうではなく隣の存在を広げていくことによって、自分たちの視界が広がり視座が高まる。それによって今までは無理だと思っていたことが可能になることを体験して欲しい。若者は社長と違って横のつながりができる機会がないので、それを無理やりでも作ってやることが会社の未来作りなのではないか。」と社長に話していました。

京都で30人を集める市民協働意識

●内:
京都は、市民が街を自治して学校なども作ってきた歴史があります。

だから、市民がまちづくりをしてきたというプライドがある街です。そのため企業も、それぞれ街づくりに興味がある担当者に持ち帰っていただくケースが多いです。

その担当者が1期生として入られて、その方がだんだん出世されて部下の方も送り込んでくださいます。

中小企業に関しては、京都信用金庫さんが「つなげる30人」の理念に共感してくれていて、バイネームでおつなぎいただき1本釣りのような形でお誘いをする形が多いです。

NPO団体や市民活動の皆さんに関しては、京都市の協賛を得ていますので、京都市の市民協働課の皆さんにご推薦いただく形でお誘いをしてます。

渋谷で30人を集める3つの入口

◯畑間:
今のところ3パターンで活動しています。

1つ目は、SHIBUYA CITY FCのスポンサーをしていただいてる企業さんにオプションのような形で参加していただくパターンです。冬から春にかけてサッカークラブの営業シーズンなので、そこでクラブのスポンサーと渋谷をつなげる30人への参加を同時にご案内しています。

2つ目は、180人いるOB・OGから企業や人脈をご紹介いただくパターンです。開催中のセッションに参加していただいてイメージを持っていただき、次期に参加してもらう形が多いです。

3つ目は、地域のイベントなどに出た時に新規の方に興味を持っていただくパターンです。これが1番難しく、なかなかイメージを持ってもらうのが難しいです。また、平日の午後に活動しているので時間的に参加が難しいと言われる場合もあります。これには、山邊さんのトップダウン営業が参考になると思いました。

京都と広島と渋谷がつながった和傘プロジェクト

●内:
京都と広島と渋谷がつながった和傘プロジェクトという事例があります。広島では、世界中から届いたたくさんの千羽鶴を年間何万トン規模で廃棄されています。

また、全国で日本の伝統工芸職人の後継者がいなくなっている問題もあります。

その2つの問題に着目し、和傘職人を育てて和傘文化を残すため、廃棄される千羽鶴を使って和傘を作りました。

株式会社ロジコムのサイトより転載

製造会社はロジスティクスである株式会社ロジコムです。

元々は伝統工芸や繊細なもの作りをしたことがない会社でしたが、このプロジェクトを通してアップサイクル商品を作りました。

そして「京都をつなげる30人」の第4期募集の際、このプロジェクトリーダーの方々に成果発表をお誘いして来ていただきました。

その結果、その場で京都の和傘職人さんとご縁が繋がり、さらに渋谷をつなげる30人の東急さんとも繋がり、この和傘をどうプロモーションして販路拡大していくか一緒に相談し合う関係になりました。

これは素晴らしいつながりだと思います。BtoC販売をしていなかったものが、「つなげる30人」から次の展開に動いたという、すごく嬉しい事例です。

つながりから実現した広島の野外音楽フェス

■山邊:
「ひろしまをつなげる30人」の第1期生に、1番やる気がなく人前に立つのも発表も苦手な人がいました。

彼は「広島に野外音楽フェスがなくなって数年経つから、またやりたい」ということを嫌々ながら発表しました。

その後、彼が外で飲んでいる時に何気なくその話をしたところ、ライブハウスのオーナーが「同じことを言ってるバンドがいる」と言ってつないでくれて意気投合し、プロジェクトがゆるく始動しました。

それがどんどん大きくなって、昨年11月にFULL POWER FRSTという野外音楽フェスを開催しました。

なんと、今をときめくYOASOBIが来てくれたんです。

実は、先ほどのバンドは「RED in BLUE」という広島のバンドで、メンバーの1人がYOASOBIのサポートメンバーでした。

彼が広島でフェスができそうだとYOASOBIのAyase君に話をしたら2つ返事で参加を決めてくれて、所属事務所の説得も全部彼らがしてくれて実現しました。結果、1万人ぐらい集まる大きなフェスが、小さな種火からできていきました。

今年もまた開催が決まってプロジェクトが継続しています。やる気のなかった彼も、「やりたい」と言葉を発すれば実現できるんだということを体感する結果になりました。

「ひろしまをつなげる30人」の場で彼がずっと持続できたのは、彼の無謀だと思える発言を決して誰も否定せずに応援していたからだと思います。

いい意味での無責任な応援によって「やれるかも」 に変わって、ステップアップできたのではないかと思います。

渋谷駅周辺をジャックして開催したサッカーフェス

◯畑間:
渋谷では、公園でボール蹴ったらいけないとか、そもそも大きいスペースがないという部分に課題を感じていました。

スポーツをする場所が欲しいなと思っていたところ、賛同していただける方々がいてチームができていきました。

そして昨年、渋谷駅周辺のイベントスペースをジャックして思いっきりボールを蹴れるスペースにしようと「FOOT BALL JAM」というサッカーフェスを開催しました。

「渋谷をつなげる30人」とSHIBUYA CITY FCがコラボをして行い、そのほか様々な方々に協力をいただきながら実現しました。子供から大人まで、サッカーを知ってる人もボールを蹴るのが苦手な人も楽しんでもらえるよう工夫してフェスを作りました。

僕はアイデアだけで終わらせることはしたくないし、言ったからには絶対やりきるという信念を持って活動しています。

最初のプロトタイプは会議室でサッカー教室をするというものでしたが、もっと多会場で同時多発的にやりたいという構想を持っていて、絶対実現したいという思いが原動力になったと思います。

京都の将来のビジョンと、つながることで感じた可能性

●内:
「京都をつなげる30人」で取り組んだことが自分の会社の未来にとってどんな変化をもたらすかというところまで見て、企業が社会課題解決を自社のアイデンティティにしていくところまでサポートしたいです。

同じ成功パターンを全ての地域で展開すればいいわけではありません。その土地の課題や目指したい姿を見据え、特性や特色などを生かして、オリジナルのまちづくりや人材作り、企業のあり方や存在意義を皆で見つけていくことが大切です。

他の地域との比較や混じり合いの中で、より自分の良さが分かったり、オリジナリティが冴わたったりすると思うので、このつながりの中から高め合いが生まれると良いなと思います。

広島の将来のビジョンと、つながることで感じた可能性

■山邊:
「ひろしまをつなげる30人」の最終発表の際、社員の意識が変革して成長している姿に驚いてる経営者が多くいました。

経営者に対して確実に存在が植えつけられてるという手応えを感じています。

そのため、経営者の意識も変革していくことに繋がると思っています。

この変革の時代に様々な取り組みをしていく中で、経営者が言うことが全て正しいわけではないということを会社自体が大らかに捉えられると、 組織としてのパワーがよりパワフルになると思います。

そうすると個々の会社のパワーがもっと強くなり、その集合体である広島という街のパワーがもっと強くなります。「ひろしまをつなげる30人」がその震源地になりたいです。

渋谷の将来のビジョンと、つながることで感じた可能性

◯畑間:
現在は外からの見られ方を渋谷チームとして考えています。

京都、広島、渋谷は外国人観光客が絶対来たくなる日本の都市だという可能性を感じています。

外国人が来て何かを購入したり体験したりした時、それが「つなげる30人」から生まれたものだったら良いなと思います。

それぞれの地域だからこそできるプロジェクトが沢山あると思うので、それらを海外輸出して、世界的に有名なプロジェクトになっていくと良いですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?