2023年度　東京医科歯科（東京科学）大学　医学部編入試験（問題１）　解答例・再現答案・開示点数

2022年に実施された、2023年度入学の筆記試験（問題１）の解答例です。有料パートには、再現答案と開示した点数が載せてあります。

• 筆者は、２０２３年度、２０２４年度入学の、２回受験しました。

• 私が個人的に作ったものです。

• 一次不合格者による記事です。ただし、筆者は別の大学での通過経験があるほか、医学系大学院を修了しているため、分野における専門知識を有しています。

• 別解や誤りのご指摘等はぜひコメントまでお願いします。

• 問題は過去２年分、大学から入手できます。

• 出典：Stomach cancer gets a triple punch of therapy(December 2021)

はじめに

• このnoteで扱う「問題１」の解答欄の行数はすべて６行でした。解答例の長さは行数内に収まるように調整してあります。

• 当日、教室のホワイトボードに「解答言語の指定がない場合、日本語、英語どちらも可」とありました。

• 英文（論文）のことを「本文」、(1)など、かっこがついたものは「設問」と呼称します。

• 問題冊子p7から問題１が始まっています。このnoteでは、Gastric cancer is … から始まる段落を段落１として段落をふっていきます。設問はp10で終わっており、全部で１２段落あることになります。

設問と解答例

(1) タイトルの「トリプルパンチ」とは何かを示し、本文中に記載されているトリプルパンチの問題点について説明せよ。

解答例：
トリプルパンチとは、転移が見られるHER2陽性の胃がん患者に対して、化学療法、 trastuzumab、pembrolizumab の３つで治療すること。問題点は、費用がかかるため、この治療法に対して反応性がよい患者を同定するためのバイオマーカーが必要であること。


「トリプルパンチの対象者」について：
単に「HER2陽性腫瘍の胃がん患者」だとわずかに点が引かれたかもしれません。「転移がみられる」も含めたほうがいい理由は以下に述べてあります。

「トリプルパンチ」の化学療法以外の２つに関しては、以下のようなワードも可：
・trastuzumab＝HER2の機能を阻害（ブロック）する抗体
（「抗体治療」は本文にないワードのため減点対象になりえます）
・pembrolizumab＝免疫療法＝免疫チェックポイント阻害＝PD-1 blockade

「問題点」の別解（問題点２個 ver）：
問題点は、長期的な効果を完全に理解するためのデータがまだ必要であることと、費用がかかること。

「トリプルパンチ」について思ったこと：
解答例では、「化学療法、（薬品の一般名）、（薬品の一般名）」となっていることがやや気になりますが、これで合格点だと考えます。ワードの並びを気にするなら「化学療法、免疫療法、抗体治療」になると思います。しかし、「抗体治療」は用語としては正しいものの、本文にないワードであるため減点対象になると考えます（本文にないワードを入れないほうがいい理由は「再現答案・点数」の部分に述べています）。

設問の内容：
設問は、「トリプルパンチとは何か（トリプルパンチの対象者、トリプルパンチのトリプルの意味）」「トリプルパンチの問題点」の２点を記述することが求められています。（ちらばった）複数段落の理解を要し、時間がかかる設問です。

(1) 思考過程

思考過程（主に段落２）：
以下のような思考過程で「トリプルパンチとは何か」が分かると思います。
・trastuzumabはHER2-positiveの胃がん患者に用いられる
・免疫療法（immunotherapy）はHER2を発現しない患者に用いられる
・chemotherapy とは何か・・・？（上記２つとは別のものなのか・・？。以下本文を読み進め、上記２つとは異なるものだと理解する）

なお、段落９，１０，１１を読んでやっと「問題点」が記述できます。

(1)「トリプルパンチとは何か」がどこで分かるか

「トリプルパンチとは何か」最速解答？：
２段落まで読んで、「トリプルパンチとは何か」の解答をつくることは一応可能です。しかし、時間がない中、自信をもって書くのは相当難しいと思います。具体的には、以下の記述が根拠です：

• HER2-positive の腫瘍（HER2は胃がんの約20%に発現） に対して、trastuzumab + chemotherpy は予後を改善させる。

• 免疫療法 (immune-checkpoint blockade) + 化学療法 はHER2を発現しない胃がん腫瘍に対して有効である。

• 免疫療法がtrastuzumabと化学療法と組み合わせられると、どうなるのか？転移したHER2陽性患者の予後は改善させられるか？
  （・・・この文章により「転移したHER2陽性患者に対して用いられる療法である」ことが一応考えられます。）