男女平等政策によって平等を失ったスウェーデン

男女平等を進めた北欧諸国では職業の男女分離も進んでいることを、

Scandinavian countries hold the record for gender segregation because they have gone the furthest in outsourcing traditional female activities and turning unpaid home-based ‘caring’ into formal employment.

"The first feminist government in the world"を誇るスウェーデンについてグラフで確認する。

スウェーデンの148の職業(SSYK2012)を男の割合を基準に5つにグループ分けして各グループに含まれる就業者数を比較する。

Ⅰ:0%~20%未満
Ⅱ:20%以上~40%未満
Ⅲ:40%以上~60%未満
Ⅳ:60%以上~80%未満
Ⅴ:80%以上~100%

男女平等先進国なら、男女ともⅢの就業者が最多でⅠやⅤは少ないと予想するかもしれないが、事実はその正反対で、男女は別々の職業を選択する傾向が明確である。

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女が多い職業は人間・生き物が対象である。

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Dental nurses
Dental hygienists
Preschool managers
Veterinary assistants
Personal care workers in health services
Nursing professionals
Hairdressers, beauty and body therapists
Elderly care managers
Social work and counselling professionals
Specialists in health care not elsewhere classified
Office assistants and other secretaries
Primary- and pre-school teachers
Child care workers and teachers aides
Complementary medicine therapists and associate professionals
Naprapaths, physiotherapists, occupational therapists
Health care assistants
Health care managers
Veterinarians
Cleaners and helpers
Administrative and specialized secretaries

男が多い職業は無生物が対象である。

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Roofers, floor layers, plumbers and pipefitters
Carpenters, bricklayers and construction workers
Electrical equipment installers and repairers
Sheet and structural metal workers, moulders and welders, and related workers
Machinery mechanics and fitters
Construction labourers
Electronics and telecommunications installers and repairers
Aquaculture and fishery workers
Mobile plant operators
Non-commissioned armed forces officers
Mining and mineral processing plant operators
Commissioned armed forces officers
Heavy truck and bus drivers
Production managers in construction and mining
Painters, Lacquerers, Chimney-sweepers and related trades workers
Car, van and motorcycle drivers
Dockers and ground personnel
Armed forces occupations, other ranks
Wood treaters, cabinet-makers and related trades workers
Recycling collectors

この極端な偏りの主因が男女の生得的な選好の違いにあることはほぼ明らかで、アメリカのフェミニスト学者の分析はデタラメである。Pink-collarが低賃金なのは、家庭で人力でDIYできるものが多く、稀少性と労働生産性が低いためである。

「看護」は女性向きの仕事だという常識があり、その言葉を聞くと私たちの脳裏にはとっさに、病人の手を握る看護「婦」の姿が思い浮かぶからだ。そしてまた、女性の仕事と思われてきたことが、まさに看護という仕事が過小評価され、長らく給料が低いまま据え置かれている理由でもある。実際、看護が不人気なのは、人材が集まらないなら給料を上げるという当たり前の行動を、雇い主である病院がやってこなかったからだ。逆に言えば、給料の低さゆえに、こうした職種に就くのは女性が中心となり、いわゆる“ピンクカラー”と呼ばれるようになったのである。

ピンクカラーの職業≒対人サービス業に男が少ない理由としてもう一つ重要なのは、消費者が男を嫌うことである。例えば子守(特に女児の)を頼む際に、ほとんどの人は男よりも女を選ぶ。アメリカでも少年少女のアルバイトの定番は男が芝刈り、女が子守である。男は女に接触されることを好むが、女は男に接触されることを嫌がるようにhard-wiredされているので、ピンクカラーの職業は女が中心になるのである。逆に、人間との接触が少ない建設や機械操作は男が中心になる。情報通信(ICT)も男が約8割を占めるのも、性差別によるものではなく、hard-wiredされた選好のためである。

スウェーデンでは1980年代末に「女の社会進出」がほぼ完了したが、ブルジョワジーやノーメンクラトゥーラになった少数の女と、低賃金プロレタリアートになった多数の女に二極化していた。

Scandinavian labour markets are like those of the whole developed West. They have professional occupations where women are succeeding alongside men. And then they have lower-paid occupations which are overwhelmingly female or overwhelmingly male. That is exactly what happens everywhere in the developed world; but in Scandinavia the divide between the two is even larger and sharper than for the rest of us.

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格差を示すジニ係数も急上昇している。

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世界的に最も平等な社会を擁するスウェーデンだが、経済協力開発機構(OECD)によれば、他の先進諸国よりも速いペースで貧富の格差が拡大している。
世界の富裕層に関するクレディ・スイスの調査によると、スウェーデンの最富裕層1%が自国に占める富の割合は、米国のそれよりも大きい。
「経済的な貴族社会が復興しているようなものだ」と、スウェーデン労働組合連合のチーフエコノミスト、オラ・ペターソン氏は言う。
「スウェーデンは世界最高の国だ。富裕層にとってはね」と、社会民主労働党の元議員で現在は医療分野のビジネスマンに転向したヤン・エマヌエル・ヨハンソン氏はユーチューブ動画で皮肉に語っている。

(追記:下のAmazonレビューは非常に鋭いので是非読んでもらいたい。)

女性解放とはこのような考え方に基づいていたが、

私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。

このイラストのように、家事労働から解放されたエリート女と、エリート女の家事労働を低賃金で請け負う一般女の格差を拡大させることになったわけである。『動物農場』の豚=エリート女、その他の動物=一般女に相当する。一般女はエリート女の強欲を満たすために利用されただけである。

One response to housework inequality could be to monetise domestic work and pay someone to complete it. This approach is currently being applied in Sweden where the government subsidises families for their outsourced domestic work. Through tax breaks, Swedish families are encouraged to hire maid services to help with the domestic load.

歴史が繰り返しただけである。

「過去の婦人運動は36人の婦人国会議員と数十万のドイツ女性を大都市の路上に狩り出した」と、ある女性の党支持者は書いた。「それは1人の女性を高級官僚にし、数十万の女性を資本主義的経済秩序の賃金奴隷たらしめた。
かつての「社交」に「仕事」が代わった現在、一度は消えた「乳母」が復活して、高学歴高収入の母親たちを支えている。今日の「乳母」は、乳をやったりはしないが、出産後間もなく職場復帰していく女性の子どもたちの世話をしているのである。

平等社会は男女分業、男女平等は格差社会とセットになるというのが北欧諸国の政策から得られるインプリケーションである。

この根底には、男は女を養うが女は男を養わない(下方婚しない)非対称性があるが、それについては今後の記事で分析する予定である。

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