池上の「日本経済低迷の背景」に足りない点
バブル期に日本銀行の利上げが遅れた説明として足りないのは、ドイツと日本では実効為替レートの過大評価の度合が大きく異なっていたことである(利上げは円高要因)。
資産価格は高騰したが、財・サービスのインフレ率は低位安定しており、景気は非常に良かったので、当時の空気と経済の常識では利上げする理由を見つけにくかったこともある。
バブル崩壊後、不良債権問題を抱えながらも一旦は回復していた日本経済が完全に壊れたのは、1997年4月の消費税率引き上げ(3%→5%)ではなく、11月から始まった金融危機であることも重要である。そこに至る前は、ビル・クリントンの円高誘導が日本経済の基礎体力を奪っていたも見逃せない。
バブルの後遺症は2002~2003年には癒えている。2002年1月~2008年2月は戦後最長、2012年11月~2018年10月は二番目に長い景気拡大期だったにもかかわらず、「失われた」ように感じられるのは、企業部門が構造変化を起こして「成長」が賃金に反映されなくなってしまったためである。
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