銀行の国債買いと銀行預金

この辺り👇の議論(市中銀行の新発国債買いと銀行預金の関係)を整理する前編。

政府が発行した国債を銀行が購入する場合、銀行は中央銀行に設けられた準備預金を通じて購入している。その準備預金は、中央銀行から供給されたものであって、民間部門の預金を集めたものではない。すなわち、政府の財政赤字は、民間貯蓄でファイナンスされてなどいないのである。
国債は、民間貯蓄によってファイナンスされてはいない。国債をファイナンスしているのは、中央銀行が創造した準備預金である。
財政赤字をファイナンスしているのは、中央銀行が創造した通貨(準備預金)である。

財務省の説明👇にあるように、中央銀行の預金口座にある政府と市中銀行の預金は現金が預けられたものと見做せるので、下の図では「現金」と表示する。

国庫金とは国庫に属する現金のことです。
国庫金は、会計法第34条、予算決算及び会計令第106条の規定により、日本銀行に政府預金として預けられています。

図の✚の左右は資産と負債、上下は増加と減少を表す。

Ⅰ. 自行に預金口座がある企業から社債を買う

A銀行が自行に預金口座があるZ社が発行する社債を買う場合、信用貨幣が創造されて、資産に社債、負債に預金が両建てで増える。銀行以外の「買う」とは資産の現預金との入れ替わりでバランスシートは拡大しないが、銀行の「買う」では負債に預金が増えてバランスシートが拡大するという違いがあることがポイント。

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①に続いて、Z社が預金を引き出す(現金化)。

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①+②→③は、銀行以外が現金払いで買う場合と同じバランスシートの変化になっている。結果の③だけを見ればA銀行は信用貨幣を創造していないようだが、それは表層的な見方ということになる。

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銀行の現金払いでの「買い」は信用貨幣(預金)の創造を含意する。

Ⅱ. 自行に預金口座がない企業から社債を買う

A銀行がB銀行に預金口座があるZ社が発行する社債を買う場合は、A銀行からB銀行に現金(中銀当座預金)が送金され、B銀行のZ社の口座の預金が増える。

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④に続いて、Z社が預金を引き出す(現金化)。

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④+⑤→⑥で、③と同じになる。

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④は一見するとB銀行が信用貨幣(預金)を創造したようだが、銀行部門全体の資産(社債)と負債(預金)の対応関係から、A銀行が「創造主」であることがわかる。

Ⅲ. 政府から国債を買う

政府の預金口座は中央銀行にあるので、中央銀行のA銀行の口座から政府の口座へ現金(当座預金)が振り替えられる。

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バランスシートの変化⑧は③⑥と同じ。⑦では具現化していないが、A銀行の「見えない信用貨幣の創造」が含まれていることになる。

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A銀行が創造した「見えない預金」は、政府が支出することで具現化する。

⑨では政府がZ社から物品を購入し、代金をB銀行に振り込む(中央銀行の政府の預金口座からB銀行の預金口座に振替)。B銀行のZ社の預金はA銀行が国債買いによって創造したものである。「政府の支出によって預金が創造された」のではない。

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以上より、この👇パクリ屋とその仲間たちがバランスシート変化の上っ面だけを見て、それが含意する銀行特有の機能の本質を全く理解していないことがわかる。

一を聞いただけで十を知った気になるのは素人にありがち。

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