積極財政学者の不確かな根拠

この経済学者はリフレ派から積極財政派に乗り換えた一人だが、金融に加えて財政の理解も怪しい。

2001年以降の政府純債務伸び率を概観すると、米英で5倍を超える純債務残高の増大が見られるのに対し、日本のそれは2倍に満たない。
つまり、日本の財政は米英と比べても健全な状態だと見ることもできるのである。

IMF "World Economic Outlook database"
米日伊の2020年は推計値

純債務残高の単純比較は、「名目GDPが増えていないために、財政赤字は対GDP比では高水準が続いているが金額は一定」の国よりも、「高インフレのために名目GDPが急拡大しているので、財政赤字は対GDP比では小さいままだが金額はどんどん増えている」国を赤字依存体質と評価してしまうので適当ではない。

名目経済規模の変化を調整すると、「むしろ米英のほうが政府債務は増えている」わけではないことは明白である。

IMF "World Economic Outlook database"
米日伊の2020年は推計値
IMF "World Economic Outlook database"
米日伊の2020年は推計値
IMF "World Economic Outlook database"
米日伊の2020年は推計値

国債の60年償還ルールに関する説明も怪しい。このルールは「国債は60年間で現金償還する/毎年度1/60を費用計上(資産の60年定額償却に対応)/未償還分は満期の度に借り換え(前倒しあり)」というもので、一般会計に債務償還費として計上されるのは「国債残高のうちの数%」ではなく約1/60の1.6%である。

日本政府は、いわゆる「60年ルール」に基づいて、国債残高のうちの数%を毎年償還(返済)している。
ただ、これはあくまで形式上の措置で、実際にはその大半は代わりに国債を発行して、借り換えを行っている。
また、その返済費用を、一般会計の「歳出」に計上している。
しかし、「借り換え」のために国債発行した分は、「歳入」に計上されていない。

これは、いわば住宅ローンを繰り上げ返済するために、毎年借金をしているようなものだ。

60年償還ルールについては👇を参照。

「経団連報告書」は財務官僚を論破するには不十分と言わざるを得ない。


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